MSIが全世界規模で行っているオーバークロック大会「Master of OvercClocker Arena 2011」(MOA 2011)のアジア太平洋州決勝が、インドネシアのジャカルタで7月7日に行われた。日本からは、6月25日の日本予選を勝ち抜いたCAL930氏とGyrock氏が、「Team “KATANA” Japan」として参加した。
彼らがジャカルタに到着したのは、前日の6日14時過ぎ。それから、渋滞でまったく動きの取れない高速道路を抜けて宿舎に着いたのが17時過ぎ。普通ならば翌日の決勝に向けて休養をとりたいところだが、彼らの戦いは前日から始まっていた。日本決勝でも紹介しように、現代オーバークロックの戦いでは、冷やす液体窒素とともに、温めるガスバーナーが必須だ。
「冷やすだけ冷やしておいて、バーナーで温めるって何なんだよー」という声も聞こえてくるが、CAL930氏とGyrock氏によると、オーバークロックでは冷やせば冷やすほどいいというわけでなく、「CPUやGPUが最も性能を発揮する温度のポイントがある」(Gyrock氏)という。その幅は「5度以下」(CAL930氏)とわずかで、クーラーユニットのジャケット部分が液体窒素の注水で冷えすぎたら温めて温度を適切な範囲にとどめなければならない。しかも、肉厚のクーラーユニットですぐに温度低下を止めるには、強力な火力を発揮できるガスバーナーが必須となる。
ただ、ガスバーナーは危険物扱いとなって飛行機に持ち込むのは困難だ。そのため、CAL930氏とGyrock氏はジャカルタで調達しようと、到着直後の疲れた体を引きずって街に飛び出したのだが……、「ガスバーナー、買えなかった……」(CAL930氏)おっと、いきなりピンチ。どうなる日本。しかし、世界で戦うトップレベルのオーバークロッカーたちの連携は幅広く、そして強い。世界大会で知り合ったジャカルタ在住のオーバークロッカーに支援を求めたら、快くガスバーナーを調達して宿舎まで届けてくれた。Team “KATANA” Japanは、「日本のアニメ、大好きなんです」と日本語で挨拶してくれた、ジャカルタの好青年に救われたのであった。
決勝当日、会場となったインドネシアのジャカルタにアジア太平洋州各国の予選を勝ち抜いたオーバークロッカーで編成された12チームがそろった。決勝のベンチマークテストは予選と同じで、CPUの速度を競うSuperPI 32Mと、GPUの3D描画性能(とCPUの演算能力)を競う3DMark11だ。決勝は、10時〜13時のシステム構築とチューニング作業に続いて、13時から15時30分の2時間30分でSuperPI 32M、15時30分から19時の3時間30分で3DMark11の記録にそれぞれ挑む。長時間にわたって休みなしに続く、かなりハードな戦いだ。
ベンチマークテストに使うハードウェアのうち、マザーボードとグラフィックスカード、そして、メモリ2枚とCPU2基がMSIから決戦当日配布される。また、電源ユニットにHDD、キーボード、マウスはそれぞれのチームが使うテーブルにすでに用意され、HDDには、すでにソフトウェアが導入された状態になっている。MSIが用意したハードウェアのリストは以下の通りだ。
MOA 2011 APAC決勝ハードウェアリスト | |
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マザーボード | Z68A-GD80 |
グラフィックスカード | N580GTX Lightning |
CPU | Core i7-2600K |
メモリ | Kingston HyperX Genesis Special Edition Grey DDR3-2133 |
HDD | Western Digital VelociRaptor WD3000HLLFS |
電源ユニット | Thermaltake Toughpower 1350W |
キーボード | Tt eSPORTS Challenger Pro |
マウス | Tt eSPORT Black Gaming Mouse |
OS | 64ビット版 Windows 7 Ultimate |
BIOS | E7672IMS.H26 |
公式記録では、出したスコアとシステムの状態を示す証拠として、ベンチマークテストのスコア画面とCPU-Z、GPU-Zそれぞれの画面を並べてスクリーンショットにしなければならない。そして、このルールがあとでTeam “KATANA” Japanを苦しめることになる。
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