既報の通り、7月16日から東京大学と東京工業大学、芝浦工業大学、名古屋工業大学の4大学共同チームによる秋葉原の回遊行動アンケートが行われた。アンケート用紙の配布には東京国際大学のチームも協力。各大学の学生がシフトを組んで最大6拠点で往来の人々に呼びかけていた。3日間で配布予定だった合計3000部の用紙は2日間で配り終え、返信されたアンケートを待って分析する段に入っている。
アンケート配布の好調ぶりに研究者もひとまずは安心した様子。行政学などを専門とする東京大学の中村仁特任講師は「思ったよりみなさんに用紙を受け取ってもらってよかったです。今後の継続は分かりませんが、過去にこういう調査はあまりなかったですし、再開発事業が一段落したこともあり、その効果が分かるということは意義があると思います。回収率を期待したいですね」と話していた。
都市シミュレーション工学などを専攻する名古屋工業大学の兼田敏之教授によると、用紙を郵送してもらうタイプの回遊行動アンケートは回収率が10%に達すれば上々という。そのうちの有効回答数が高いほど偏りの少ない分析結果が得られ、よりリアルな実情が紡ぎ出される。それではどんな実情が見えてくるのか。
進化経済学などを専門とする芝浦工業大学の小山友介准教授は「アキバは街で流行っているものを買いに来た人が、ついでに買っていくものが次のブームになるということを繰り返してきた感があるので、今街を形成しているパソコンやアニメ、ゲームなどの購買層がなんとなく被っているんじゃないかとは、誰もが思っているでしょう。でも、実際はどれくらいの割合で重複していて、特定のジャンルだけ興味を持っている人がどれだけいるのか。そういう数字では見えていなかったところを、みなさんの回遊行動を分析することで明らかにしてみたいと考えています。街の因数分解みたいな感じですね」と語る。
街の再開発といっても、経済やインフラ、安全保障などの視点がある。今回のアンケートによって各分野の専門家による分析が行われ、さまざまな角度のアキバ像が見えてくるというわけだ。兼田教授によると、その姿は「2011年秋から冬にかけて概要が見えてくるかなと思います。詳しい分析は2012年の春ごろですかね」とのことだ。
その分析結果によって、アキバ特有の傾向や再開発で建った施設の効果、人が多く集まる商業地の普遍的な法則などが見えてくる可能性がある。そして、分析精度のカギを握るのは、アンケートの有効回答数だ。PC好き、アニメ好き、ゲーム好きなどの属性を問わず、アンケート用紙を手にした人は、街の“いま”を知って、よりよい今後を期待すべく協力してみてはいかがだろうか。
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