エヌビディア ジャパンは、7月22日にCUDA環境を利用する開発者に向けた「NVIDIA GTC Workshop Japan 2011」を行った。基調講演では、NVIDIA共同創立者 兼 上級副社長のクリス・A・マラコウスキー氏がこれからのGPUコンピューティングに求められる課題について説明した。また、エヌビディアジャパン代表 兼 米国本社上級副社長のスティーブ・ファーニー・ハウ氏が、日本のおけるGPUコンピューティングの現状を紹介した。
マラコウスキー氏は、薬品、地球物理、天体、工業設計などの各種シミュレーションで演算とその結果の視覚化などのコンピューティング利用は、科学技術の作業において、“第3の柱”として重要なものであると述べた。そのうえで、薬品開発では、従来数時間から数日を要していた分子レベルの分析演算をTeslaで数秒に短縮でき、また、従来、2%の外科医にしかできなかった動いている心臓の手術で、GPUコンピューティングによる心臓の動き予想と、それに対応して補正するロボットアームの登場で難易度を引き下げることに成功したというケーススタディを紹介した。
CPUが苦手とする並列演算処理能力が重要になるGPUコンピューティングでは、システムで同時に動かすCUDAコアをいかに多くするかが鍵になるが、それと同時に、消費電力の削減も強く求められるようになってきた。すでに、東京工業大学のTSUBASA 2.0は、消費電力当たりの性能は、同じCUDA環境に対応したGPUコンピューティングを採用する中国の「天河」を上回り世界のトップにあるが、今後、さらに多くのCUDAコアを並列に動かすシステムでは、よりいっそうの省電力が必要になる。
マラコウスキー氏は、NVIDIAが公開している2013年に向けたロードマップで、2011年登場(=生産開始)予定の“Kepler”、2013年登場(=生産開始)予定の“Maxwell”では、ワット当たりの性能が大幅に向上することをアピールしている。(8月5日追記:ロードマップに関する記述で、登場(=生産開始)と追記しました)
ハウ氏は、日本においても製造業、バイオインフォマティクス、マシンビジョン、金融、医療画像処理、気候シミュレーションでGPUコンピューティングの利用が進んでいると述べる。また、日本のユーザーによるGPUコンピューティングの取り組み例として、東京工業大学の学術国際情報センターに設けられた「GPUコンピューティング研究会」が取り上げられ、同センター所属の青木尊之氏から、同研究会の活動とNVIDIA GTC Workshop Japanのテクニカルセッションに参加した内容が紹介された。
エヌビディア ジャパン マーケティングマネージャーの林憲一氏は、基調講演で実施したライブストリーミングのシステムが、Tesla C2070、Microsoft Expression Encoder4、(Windows Serverに実装された)Internet Information ServeresとSmooth Streamingで構成され、そのうち、Microsoft Exoression Encoder4とSooth StreamingがCUDAに対応していうことを紹介した。
さらに、5月に発表したCUDA 4.0ではGPUプログラミングが容易になったことを訴求、マルチGPUプログラミングのGPU Direct 2.0、並列処理のポーティングではUnified Virtual Addressing、C++での並列プログラミングはThrust、Visual Studio 201でのCUDAによるプログラミングでParallel Nsight 2.0をそれぞれ用いることで、プログラミング作業が容易になると説明した。
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