「最初の1、2日は取っつきにくい。ただ、慣れるとじわじわ気持ちよくなってくる」。KDDIは、Windows Phone 7.5をOSに採用するスマートフォン「Windows Phone IS12T」を発表、2011年9月以降に発売する。
Windows Phone 7.5は、国内でのデバイス投入が見送られたWindows Phone 7の次期バージョンとしてリリースされるモバイル機器向けのOS。Windows Phone 7より500以上の機能追加、対応言語の強化(5→21言語)、Windows Marketplaceを35カ国/地域まで拡充したほか、タイル状に情報を表示するホーム画面「ライブ・タイル」や左右方向への操作も自然に行える「パノラマUI」、独自の日本語入力環境など、iPhoneやAndroidスマートフォンとは異なる操作スタイルで、ユーザーの「心地よさ・軽快・つながり」に結び付く工夫を取り入れた。
“PC/Windowsの機能を携帯機器でも”とうたった過去のWindows Mobile搭載デバイスと大きく異なるのが「スマートフォンでの使い勝手を最重視」したコンセプトにある。Windows Phone 7.5搭載スマートフォンはPCの代替とするものではなく、PCやXbox、テレビ機器なども含めてネットワークにつながるデバイスそれぞれの機能を補完し合い、インターネット環境とソフトウェアをWindows Liveサービスでシームレスにつなぐ機器の1つとして展開するという考え方だ。
国内第1弾として投入する「Windows Phone IS12T」(富士通東芝モバイルコミュニケーションズ製)は、幅59ミリ×厚さ10.6ミリ(最薄部)、重量約113グラムの薄型軽量ボディに800×480ドット表示に対応する3.7型ワイドの静電タッチパネル付き液晶ディスプレイを採用する。プロセッサはQualcommのSnapdragon MSM8655/1GHz、メインメモリは512Mバイト、32Gバイトのフラッシュストレージ(利用可能容量は約28Gバイト)。通信機能に、下り最大9.8Mbps/上り最大5.5MbpsのWIN HIGH SPEED(EV-DO Rev.A)とIEEE802.11b/g/n準拠の2.4GHz帯無線LAN、Bluetooth 2.1+EDRを搭載する。
月額料金は、auのスマートフォン向け(ISシリーズ向け)料金プラン・パケット定額プランに準じ、Windows Phone専用のプランは特に用意されない。パケット定額プランとして、390円〜5985円/月のダブル定額スーパーライト、5460円/月定額のISフラットなどに加入できる。
ブラウザはInternet Explorer 9ベースの技術を盛りこみ、グラフィックスアクセラレータとともにHTML5もサポートする。IS12TはInternet ExplorerのTest Driveサイト「FishIE Tank(Mobile向け)」で47fps前後とかなり優秀なレンダリング速度を示しつつ、スクロールや拡大/縮小、タブ切り替えといった一般的なWebサイト表示操作も非常にスルスル快適に動作する。
IS12TでInternet ExplorerのTest Driveサイト「FishIE Tank(Mobile向け)」を表示
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また、OSの機能の1つという考えでWord/Excel/PowerPoint/OneNoteの基本機能を包括したOfficeをプリインストールする。Office 2010を含むこれらオフィススイートアプリケーションで作成したファイルの表示はもちろん、編集も可能。容量25Gバイト分が無料を使えるオンラインストレージ「SkyDrive」やSharePoint/Office 365サービスなどと、ユーザーはあまり意識せず自然に連携・同期しながら活用できる。SkyDriveへ保存(あるいは手動アップロード)したファイルは、インターネットに接続されたPCあるいはスマートフォンで、あたかもいずれのローカルにあるファイルを開くように扱える。表示の互換性は「かなり大丈夫」(説明員 プリインストールフォントにはやや限りがある。未インストールの使用フォントは置き換わる)、ちょっとしたマクロやVBスクリプトなども動作可能だという。
これらOfficeデータ以外に、People、Pictures、Games、Music+Videos、Marketplace、6つの「ハブ」という概念を設け、それぞれ数多く存在していたアプリケーションの機能やサービスをこのハブでシームレスに連携させる仕組みを取り入れた。例えば「Peopleハブ」は、FacebookとTwitterのソーシャル機能をOSに融合し、アドレス帳、着信確認、投稿・コメント内容といった“人”単位の情報をまとめて確認できる。「アプリを立ち上げるというより、どんな目的で使うかを想定した自然な操作感で使えるUIとしている。自分の優先順位に沿って適宜カスタマイズもできる。これはWindows 8など今後のOSでも統一的な考え方として採用していく」(日本マイクロソフトの樋口社長)
Windows Phone 7.5のメトロデザイン、Peopleハブ、独自の日本語入力「カーブフリック入力」などの操作感、動作レスポンスのデモンストレーション
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KDDIの田中社長はWindows Phone 7.5搭載のIS12Tについて「最初の1、2日はかなり取っつきにくい。ただ、それを過ぎるとじわじわ気持ちよく使えるようになってくる」と使い勝手に関する感想を述べたが、これまでのPCあるいはスマートフォンで慣れていた「サービスを使うためにアプリケーションをまず起動する」という概念をスパッと取っ払ったUIのため陥った感覚だったと思われる。
Officeデータの編集なども担う日本語入力環境は、カーブフリックと呼ぶ独自の日本語入力スタイルを用意する。iOSなどのフリックスタイルと似てはいるが、濁点のある文字も1フリック操作入力できる工夫を取り入れている。
ただ、IS12TはBluetoothは搭載するものの、HIDプロファイルには対応しないため、外付けのBluetoothキーボードやマウスは基本的には活用できない。こちらは少し残念だ。ついでに画面キャプチャーも著作権保護の観点で機能しない(開発環境でない一般利用時はキャプチャーできない)。カスタマイズして遊べる要素が多かったWindows Mobileとは少し異なり、OS側で制限をかけている部分はやや多めのようだ。
Windows Phone 7.5搭載スマートフォンは「これにしかできないのは何か」と問われると疑問符は浮かぶ。「そんなことはiPhoneやAndroidスマートフォンでもできる」確かにそうだ。
ただ、Windows Liveサービス群をかなり自然に、シームレスに連携できる点、スルスルと快適に扱えるユーザーインタフェースや操作感の心地よさは、少しデモ機に触れただけでもWindows PC利用者として「確かにじわじわ来る」と感じられた。
「これだ!」と決め手になるポイントはまだぼんやりしているが、ユーザーニーズに応じて細分化されつつある国内のAndroidスマートフォンより「どう連携して活用するか」「で、何に使うのか」の点で、PCやネットワークを軸にした活用例を思い描きやすい。出遅れたと言ってもスマートフォン市場はこれから本格成長期に入るところ。新世代の通信規格を内蔵、980円/月からのb-mobileSIMが使える通信事業者からも登場してほしい、もっとぶっ飛んだ仕様のモデルは出ないかなどと妄想しつつ、まずは国内初号機の、ある意味無難な仕様のIS12TでWindows Phone 7.5がどうユーザーに受け入れられるか、今後の様子を見守りたい。
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