iPadのような直感操作に高機能――「LoiLoScope 2」でHD動画をサクッと編集してみたQuick Sync Videoで高速変換も(1/3 ページ)

» 2011年09月21日 12時30分 公開
[都築航一,ITmedia]
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動画を誰かに見せるなら、やはり編集は大事

今回はユニークなビデオ編集ソフト「LoiLoScope 2」で、今の個人ユーザーにとって扱いやすい動画編集の道具とは何かを考えてみた。対応OSはWindows XP(SP3以降)/Vista/7だ

 個人のプライベートな動画撮影の世界では、撮影後に編集する動機がどんどん少なくなっている。

 例えば、カメラの付属ソフトやカメラ自体の持つ高度な検索機能によって、見たい場面だけ単に抽出できるようになったことは見逃せない。編集しなければ“カオス”にすぎない、単なる撮影データの蓄積だったものが、何も手間をかけずとも、いつでも瞬時に活用可能なアーカイブへと性格を大きく変えたのだ。ユーザーは撮影した映像を単にストックしておくだけでよいので、「特定の部分を探し出すのが面倒だから、抜き出して1本にまとめたい」という動機自体が起こらなくなる。

 それに、Ustreamやニコニコ生放送に代表される“だだ漏れ”メディアが浸透してきたことも無視できない。「自分が撮った動画を他人に見てもらいたい」というアクティブなユーザーから「他人に見せる動画は編集が大前提」という動機を奪いつつあるのだ。

 半面、ニコニコ動画やYouTubeといった、動画をベースにしたソーシャルメディアと、そこにアップロードされる、編集によって作りこまれた動画が、ますます力を増していることも確か。かつてはプロフェッショナルの集団と高度な設備、そして莫大な費用が不可欠だった「動画をより多くの人に見てもらう」という行為は、今やユニークなアイデアとほんのちょっとの道具さえあれば、誰でも実際に行なえるものへと変わってきている。

 だから、プロでなくても扱いやすいビデオ編集ソフトは、コンシューマーがアイデアを具現化する道具として、むしろ重要度が増しているのではないだろうか。今回はそんなコンシューマー向けのビデオ編集ソフトの中から、この夏バージョンアップを果たした「LoiLoScope 2」を取り上げ、今の個人ユーザーにとって扱いやすい動画編集の道具とは何かを考えてみた。

XGAの狭いデスクトップでも快適な操作を実現

 筆者の本業は主に動画の撮影・編集なので、いわゆるプロ向けの編集ソフトを道具としてほぼ毎日使っているのだが、LoiLoScope 2は、こうしたプロ向けの、あるいはプロ向け製品をベースにしたソフトとは根本的に異なるユーザーインタフェースに大きな特徴がある。

 まずはLoiLoScope 2で編集を行なっている画面の全体像を見てほしい。

LoiLoScope 2の全景。各ウィンドウや素材の配置は自由で、作業者のやりやすいように並べていけばよい。中央付近の「マグネット」は、素材を近づけるとバーの下に素材が整列し、バーをドラッグすれば整列した素材ごと移動できるので、ひとかたまりの素材を集めておくのに便利だ

 全体を占める濃いグレーの領域が、仮想的な作業机を表す「デスクトップ」で、そこに「メディアブラウザ」(画面左の大きなウィンドウ)と「タイムライン」(右側に2つ重なっている大きなウィンドウ)という2種類のウィンドウが、基本的な作業場所として配置されている。

 大まかな作業の流れとしては、

  • (1)PCのストレージに蓄積された動画や静止画、BGMなどの素材をメディアブラウザに読み込む
  • (2)使いたい素材をメディアブラウザから選び出し、不要な部分を削除する
  • (3)タイムライン上に並べ、順番を決めたり効果をかけたりして、作品として仕上げる
  • (4)ファイルやディスクメディアなどへ出力する


 という4つのステップを踏むのだが、この流れ自体は他社製品と変わらない。LoiLoScope 2は、この流れに沿って実際に作業を進めるための画面の構成が独特なのだ。

PCのストレージ上にある動画や静止画、音声といった素材を読み込み、使うかどうかを決めるメディアブラウザ。素材のサムネイルにマウスオーバーさせると再生ウィンドウ(この写真では中央付近)がポップアップし、中身を確認できる

 例えば、メディアブラウザとタイムラインの間にバラバラと並ぶ細かな要素は、(2)の作業によってメディアブラウザから選び出した素材だ。

 多くの他社製品では、選択した素材はビンと呼ばれる一定の場所へ、規則正しく整列させていくのだが、LoiLoScope 2ではデスクトップ上ならどこにどう置いてもよい。使う順番をなんとなく想像して、順番に並べていってもよいし、内容やテーマによってグループ分けしてもよい。グループ分けのための「マグネット」というツールも用意されていて、簡単に束ねておける。

 もちろん、まだ作品全体の方向性は決まっていなくても構わないし、各素材ごとにあらかじめ不要な部分が決まっているのなら、この時点で部分的に切り落としておいてもよい。とにかく使いそうな素材を、メディアブラウザという箱から取り出して、机の上に広げていく。

 おおよその素材を机上に並べたら、タイムラインへドロップし、作品として仕上げる作業へ入っていくわけだが、ここで注目してほしいのは、初期状態のデスクトップ領域が1024×768ドットの解像度しかないことだ。

デスクトップに置いた素材をクリックすると、カット編集の画面がズームアップする。必要な場面をIN点とOUT点で指定する、昔ながらのやり方だ

 ここでデスクトップ上の任意の場所や各ウィンドウをクリックすると、その部分を中心として画面が即座にズームアップされ、再びデスクトップをクリックすると、先ほどの全体表示にすぐ戻る。

 つまり、ユーザーインタフェース自体を拡大/縮小して表示できるのだ。拡大率は2段階で固定(拡大率自体は自動調整)ではあるが、ドラッグすれば表示中の領域を簡単に移動することもできる。だから、デスクトップのサイズが小さくても快適に操作できるというわけだ。これはスマートフォンやタブレット端末のピンチイン/ピンチアウトに近い、とても現代的で直感的な操作感だ。何より、なめらかに拡大/縮小されていく様子は見ていて気持ちがいい。

 筆者などは先入観として「いちいち拡大/縮小するなんて面倒」と思ってしまうのだが、実際に使ってみると、実用性も高いことに驚かされる。作業中は余計な要素が見えなくなるから、目前の作業に集中できるし、いつでもすぐに全体表示へ戻れるから、試行錯誤の繰り返しになっても、操作自体によって思考の流れが中断されにくいのだ。

 多数のウィンドウが常に表示“されていなければならない”従来の編集ソフトから見れば、まったく異なる発想で成り立っているわけだが、実は従来の編集ソフトにおいて、画面構成に縛りをかけていたのは、素材の中身を確認するための「プレビュー画面」の存在だったことが、LoiLoScope 2のユーザーインタフェースに触れているとよく分かる。

 LoiLoScope 2では、メディアブラウザやデスクトップに並んだ素材の上にマウスオーバーさせれば、中身の再生がポップアップウィンドウで即座に始まる。マウスポインタを外せば再生が止まってポップアップが消え、サムネイルが再生を止めた瞬間の画像へと更新される。これによって、プレビュー画面を常に表示させておく必要がなくなり、操作画面の自由な配置を実現できた。また、静止画とは異なり、瞬時に内容を確認しづらい動画や音楽の素材をスマートに参照できる利点も得られている。

 効率的に作業を進めるうえでは、従来型の画面構成のほうが有利な点もある。ただし、数多くのウィンドウを常に一覧できるよう配置するには、どうしても広いデスクトップ領域が必要だ。LoiLoScope 2は、ユーザーにハードウェアの環境整備を強いるのではなく、発想を変えればソフトだけで克服できるという考えに基づいており、実際あまり液晶ディスプレイの解像度が高くないノートPCでも快適に作業できる。

 素材の入力については、AVCHDやデジタルカメラなどファイルとしてPCに取り込める素材のほか、HDVやDVといったテープ記録のカメラからの取り込みにももちろん対応する。また、DirectShow対応のキャプチャデバイスから映像を取り込むこともできた。扱えるファイル形式はかなり広範囲に渡る。

LoiLoScope 2が対応する入力形式
カメラ デジタルカメラ(mov、avi)、携帯電話(mp4)、HDV、DV、JVC Everio、JVC Picsio
動画 mp4、mpeg、wmv、m2ts、mts、m2t、ts、mod、tod、mov(H.264/M-JPEG)、avi
静止画 jpeg、png、gif、bmp、tiff、アニメーションgif、tga
音声 wav、mp3、m4a、wma

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動画編集 | ソフトウェア | CUDA | AVCHD | HD動画


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