いま、Microsoftが配布しているWindows Developer Previewで、Metroスタイルと呼ばれる新しいUIに触れたユーザーは、操作性を斬新と感じる一方で、タッチ操作を重視したUIをマウスやキーボードを使って操作することに違和感を感じただろう。Microsoftによれば、Metroは「touch-first」というコンセプトでタッチ操作に適している一方で、従来のマウスやキーボードといった操作も同じUI上でサポートし、Windows 8の動作が想定されるあらゆるPCフォームファクタに適した操作環境を提供していくという。ここでは、米MicrosoftのWindows User Experience部門プログラムマネジメント担当ディレクターのジェンセン・ハリス氏が「8 traits of great Metro style apps」のタイトルで行った講演を中心にMetro時代におけるアプリの「作法」について紹介しよう。
MicrosoftではWindows 8(いまだ仮称)の紹介で、「Windows reimagined」というキャッチコピーをアピールしている。変化するのはOSだけではなく、そこで動作するアプリケーションも同様だ。そのため、Windows 8を想定してアプリケーションを開発する開発者は、Windows 8や、そこで採用される“Metroスタイル”と呼ばれる新UIにおける「作法」をきちんと理解していなければならない。
なお余談だが、BUILDでは、Windows 8で動作するアプリケーションについて「Apps」という表記が使われていた。「Apps」はAppleがiOSなどモバイルデバイス向けのアプリケーションを記述する場合に、「Applications」の代わりに「Apps」を多用していたことで広まったと筆者は考えている。日本語では「アプリケーション」に対し「アプリ」と記述されることが多い。実際、モバイル分野では「アプリ」と記述されるケースが多く、MicrosoftもWindows 8ではこの用語を積極的に用いているようだ。そのため、この記事では、従来型のアプリケーションとWindows 8向けのそれとを区別する場合、前者を「アプリケーション」、後者を「アプリ」と書き分けていく。
さて本題だが、Metroアプリの構造についてまず見ていこう。ハリス氏は、従来型のWin32スタイルで記述されたRSSリーダーのアプリケーションを、順番にMetroスタイルのアプリへと順番に変化させて、Metroアプリの構造とそのメリットを説明した。
Metroでは画像やタイトル要素が重要となる。ハリス氏の講演では、この要素の一覧をスライドで示したが、最初シンプルなアイキャッチ的な画像とテキストのリストで紹介したが、このレイアウトでは網羅性は低いためスクロールを繰り返しながら一覧するのは難しいことを示した上で、デザインとレイアウトをMetro風にアレンジしたスライドで表示した。このとき、「Headline」というタイトルと、各ジャンル(項目)をタイトル下に表示させ、Metroアプリ標準に近いスタイルとなっている。ハリス氏は、このダイジェストのみが表示された項目のグリッドをさらに細かくし、いわゆる写真タイルを並べた形も紹介した。このエッセンスのみを抽出しただけで、基本的には従来のアプリケーションの延長線上にあるのがMetroアプリだといえる。
この標準的なグリッド表示は、開発ツールのVisual Studioで標準テンプレートとして用意されており、データソースを指定すれば比較的簡単に表示専用のプログラムが構築できる。Metroで利用する標準的なビューや画面構成も複数のテンプレートで定義されているため、サンプルプログラムを参考に自分でアレンジして特徴をつかむことができる。ちなみに、タイトルの位置や上端、左端のマージンなどはすべてのアプリで統一しているので、テンプレートを変更してもMetroアプリである限り動かせない。こうしたデザイン要素の統一がWindows 8の特徴の1つといえるかもしれない。
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