マルチコアから高性能コアで進化を目指すインテルのCPUSandy Bridgeは“12畳半”のはずだった(1/4 ページ)

» 2011年11月29日 16時30分 公開
[本間文,ITmedia]

ここまで来るのに40年はかかっている

 インテルが民生用としては世界初となるマイクロプロセッサ「i4004」を発表してから、2011年の11月15日で40年が経った。インテル製CPUの元祖ともいうべき、このマイクロプロセッサは、電卓用演算装置として開発がスタートし、嶋政利氏が設計に携わったことでも知られる。i4004以前は、複数の半導体チップを組み合わせ、演算処理回路を構成するのが当たり前だったが、i4004では主要な演算処理機能を1つの半導体チップに統合した。

 i4004は、10マイクロメートルプロセスルール(0.001ミリ、ナノメートルに換算すると1万ナノメートル)を採用し、2300トランジスタを集積、4ビットの演算能力で、500kHzまたは740kHzで駆動するというものだった。このi4004の投入を機に、それまでメモリチップベンダーとして事業を進めていたインテルは、CPUの開発に軸足を移していく。この後、同社創始者の1人、ゴードン・ムーア氏が唱えた「トランジスタ数は24カ月ごとに倍になる一方で、製造コストは反比例して減少する」というムーアの法則にのっとり、同社がCPUの高機能化・高性能化を推進してきたのはご存じのとおりだ。

世界初の民生用マイクロプロセッサとして1971年11月15日に発表されたIntel 4004(写真=左)。Intel 4004のダイプロット。10マイクロメートルプロセスルールを採用、2300トランジスタを集積していた(写真=中央)。米国ではインテル製マイクロプロセッサ生誕40周年を記念するイベントが開催された。なお、左にあるのがIntel 4004を初めて採用したビジコンのプログラミング電卓「1410PF」のOEMバージョンとなるUnicom 141Pだ(写真=右)

 この40年間に、マイクロプロセッサはめざましい進化を果たし、コンピュータのみならず、電話や車、カメラ、テレビや冷蔵庫といった家電製品まで幅広い機器の「頭脳」として搭載されるようになった。インテルによれば、i4004と現行の第2世代Core i7(LGA 1155版Sandy Bridgeコア、9億9500万トランジスタ)を比べるならば、トランジスタ数は約43万倍に増え、性能は35万倍以上の向上を果たしている。また、トランジスタ1個あたりの消費電力は5000分の1に下がり、トランジスタ当たりの価格は5万分の1に低下しているのだという。

 インテルは、この40年間のプロセッサにわたる性能向上を、より身近な例で表現している。

1. Core i7をi4004と同じ1971年当時のプロセスルールで作った場合、約21平方メートル(7×3メートル)の部屋(約12畳半)と同じサイズになる

2. i4004の演算性能は1秒あたり9万2000命令であったが、現行のCore i7は1秒あたり9200億の演算処理が可能。これをキータイプのスピードに例えると、トルストイの「戦争と平和」1冊分を1秒間で入力できるほどに高速化していることになる

3. i4004の動作クロックを時速60マイルで走行する車だとすると、現在のCore i7のTurbo Boost Technology有効時の最大クロック(3.9GHz)のスピードであればサンフランシスコーニューヨーク間(約3000キロ)を1秒間で走破できる計算になる

4. 1971年のトランジスタ性能で標準的なノートPCを作ったとすると、1カ月あたり25,000ドルの電気使用量が必要になる

5. トランジスタのコストは1971年は1ドルあたり37トランジスタだったが、現在は1ドルあたり2百万トランジスタへと大幅な低価格化を果たしている。もし、この低価格化が自動車市場でも実現していたならば、新品のポルシェが1ドルで購入できるようになっていたはずだ。

インテルは、マイクロプロセッサ40年の進化を、具体的な“目に見える”たとえで説明している



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