ブラックフライデーで占うデジタルガジェット米国事情Androidタブレット、人気の“あれ”は定価でオッケー(1/2 ページ)

» 2011年12月20日 10時30分 公開
[登丸しのぶ/Shinobu T. Taylor,ITmedia]

どんどん前倒しの米国年末商戦

 米国全土が“地に足が着かなくなる”「感謝祭」「クリスマス」の季節がやっていた。年末のイベントといえば贈り物。その贈り物に絡んだ消費は米国の重要な商戦期だ。この時期の売り上げがその後の米国景気を示唆してくれる。2011年は、その第1弾となる感謝祭翌日の「ブラックフライデー」が11月25日だった。全米小売業協会(National Retail Federation)によると、2011年のブラックフライデーがからむ週末に、実店舗やオンラインのショッピングサイトを訪れた人は、2010年の2億1200万人から2億2600万人に増加し、過去最高を記録した。1人当たりの平均購入額も2010年の365ドル34セントから398ドル62セントに増えている。総支出額は、過去最高の524億ドルに達すると見込まれる。この指標から、米国の購買意欲がようやく高まってきたと評価する関係者も多い。

 米国の年末商戦でも、ショップは大幅値引きのセール品を用意するが、2011年のブラックフライデーでは、実店舗以外にオンライン限定のセール品を用意した小売店も多い。2011年には、オンライン販売は売上げ全体の37.8%を占めている。また、Macy'sやJC Penneyといった有名デパートをはじめ、TwitterやFacebookなどのSNSを活用したセール告知もこれまでになく多かった。

 感謝祭当日(11月の第4木曜日。2011年は11月24日)は、ほとんどの小売店が休業としているが、ブラックフライデーセールの開始は年々早まる傾向にあり、2011年以上に多くの店舗が、感謝祭当日の深夜、ブラックフライデー当日の午前0時に開店したほか、中にはそれより早く感謝祭の21時や22時から開店した店舗もあった。

感謝祭をBest Buyの行列で過ごす

 オンライン販売が伸びたという2011年のブラックフライデーセールだが、それはそれとして、セール品を目当てにした行列が開店前に長々とできる光景は変わらない。その盛り上がりを楽しむために、オレゴン州のミッドフォードにあるBest Buyを訪れた。ミッドフォードは人口7万5000人ほどだが、これでもオレゴン州第4位の都市だ。ただ、オレゴン州は消費税がないため、ブラックフライデーには隣接するカリフォルニア州からも買い物に来る客がいる。

 Best Buyミッドフォード店は2010年8月に開店したばかりの新しい店舗で、飲食店などが並ぶ小規模なショッピングセンターの一画に位置している。当店の告知によると、感謝祭当日の22時から整理券を配布するという。が、22時の少し前に到着したときには、すでに整理券配布を待つ行列が、店の前を過ぎて数軒並ぶほかの店舗までぐるっと取り囲むように伸びていた。列に並ぶ人たちの多くは、長期戦に備えて毛布や椅子、さらには暖房器具まで持ち込んでいる。なんと、行列の先頭には簡易テントを貼っている人までいた。彼に聞いてみると、感謝祭前日の19時から並んでいたという。感謝祭のパーティーや団らんより、セール品のためにBest Buyの前に並ぶことを選んだということだ。

 並んでいる人たちに注目するセール品を聞くと、ほとんどが「テレビ」と答えた。Best Buyではドアバスター(先着順の目玉商品)として、シャープの42型HD 液晶テレビ(199ドル99セント)、DYNEXの24型液晶テレビ(79ドル99セント)などを用意していた。Best Buyの整理券は、店内入場の順番を決めるのではなく、特定商品(特価対象のテレビなど)の購入権となるため、購入目的の製品を購入するための“整理券”をもらうために並ぶことになる。

Best Buyミッドフォード店で“整理券”入手のために列に並ぶ人々(写真=左)。並ぶ列は、ほかの店の前を横切り、ショッピングセンター全体を覆うように続いている(写真=右)

セール対象外のKindle Fireも“セールの注目品”に

 ミッドフォードの有力ショップとなると、ほかにWal-Martミッドフォード店がある。ここは、ブラックフライデーセールの開始を前倒しして、感謝祭当日の22時に開店している。なお、Wal-Martのセールは、感謝祭当日の22時、ブラックフライデーの0時、そして同日8時と製品カテゴリー別に3段階に分けて実施した。テレビ、PCなど0時からのセールとなった(PCユーザーの生活パターンを読んでいるのか?)。

 セール対象のPC製品は、主にヒューレット・パッカードのモデルが占めていた。ディスプレイサイズが15.6型ワイドで、AMDのFusion APUでデュアルコアのE350(1.6GHz)を搭載、システムメモリは3Gバイト、HDDの容量は320GバイトのノートPCが248ドルなど、スペック的に高くなく、とにかく実売価格の安さで勝負するモデルをそろえている。

 Wal-Martのブラックフライデー広告には、HPのノートPCや188ドルの32型液晶テレビとともに、Amazonの「Kindle Fire」を「販売価格199ドル」で記載していた。知らなければセール価格と誤解しそうな広告だが、よくよく考えれば、199ドルは“定価”だ。

Wal-Martミッドーフォード店。22時の開店から1時間以上経っているが、まだ、多くの買い物客が行列を作っている(写真=左)。Walmartの電子書籍リーダーコーナーでは、Kindle FireとNook Colorを並べて展示。Kindle Fireの199ドルが際立つ。セール対象外で定価の販売なのに「As Advertised」(広告の品)の文字が(写真=右)

 玩具販売のToysRusも、感謝祭当日の午後9時からブラックフライデーのセールを始めていた。玩具販売が主力のToysRusだが、2010年のブラックフライデーと同様に、2011年もAndroidデバイスをドアバスターとして用意した。興味深いのは、Androidタブレットに“SYLVANIA”という日本では知られていないブランドで、スレートタイプの7型タブレットデバイスのほかに、同じ7型ディスプレイを搭載したクラムシェルタイプのキーボード搭載デバイスも用意したことだ。セール価格はどちらも79ドル99セントで、23時ごろには、どちらのモデルも完売していた。

ToysRusミッドフォード店も開店から2時間以上経っているのに、まだ入店待ちの行列が残っている(写真=左)。玩具販売が主力のToysRusでも、タブレットデバイスのラインアップが充実している(写真=右)

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