2011年のタブレット端末を冷静に振り返る本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/2 ページ)

» 2011年12月28日 15時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]

2011年に登場したタブレット端末の中で興味深いのは?

 編集部より「年末だし、2011年のタブレット端末を振り返る(私的ベスト10とかもアリ)なんてどう?」とお題をいただいた。しかし、やや辛口の言い方になるかもしれないが、今年は年初に期待したほどには、タブレット型端末は広がらなかった。

 というよりも、よく声が挙がっているように、iPadの市場はあっても、まだタブレット端末の市場は存在していないのではないだろうか。

Androidタブレットでは高い完成度を誇る「Sony Tablet」

 もちろん、「Sony Tablet」という優れた実装はある。タッチパネルの精度や操作に対する追従性、プリインストールソフトウェアの豊富さなど、Androidタブレットの中ではダントツの完成度を誇っている。折りたたみ型もスレート型も、どちらも他のAndroidタブレットとは一味違う。

 しかし、タブレットとセットで展開するべきネットワークサービスの整備が、まだ十分に進んでいない。昨年秋以降、繰り返しソニーが唱えてきたネットワークサービス(当初はキュリオシティ、現在はソニーエンターテイメントネットワークと呼ばれている)は、現在もまだ発展途上という印象が強い。

 Sony Tabletの次の製品は来年の初夏とうわさされているが、せっかく他社とは一味違う操作感を実現したのだから、うまい着地点を捜してもらいたいと願うばかりだ。グローバルで販売するタブレット型端末として、最も興味深いと思うのはSony Tabletである。

 ただし、現行のAndroid 3.xベースでは、Androidタブレットの世界にはなかなか思い切って飛び込むことができない。アプリケーションの互換性問題があるからだ。もちろん、これはAndroid 4.xの世代になれば、徐々に解決していく。スマートフォン向けとタブレット向け、両方のアプリケーションを1つのバイナリでサポート可能になるからだ。

 その点、早いタイミングでAndroid 4.xへのアップデートをソニーがアナウンスしたのは、ユーザーを安心させる上で重要なことだった(海外での発表で、国内での発表はまだない)。操作のレスポンスはよいだけに、基礎となるOSが改善されれば、それに伴ってハードウェアのよさも生きてくるだろう。標準バンドルされる独自開発のアプリケーションの進化にも期待したい。

日本向けのカスタマイズで差異化を図るという道

東芝の「REGZA Tablet AT700」は薄型軽量と、日本向けのカスタマイズが光る

 Android 4.xへのアップデートという意味では、こちらも早々に対応をアナウンスしている東芝の「REGZA Tablet AT700」の路線も興味深い。グローバルで販売されるモデルではあるが、ネットワークに強い“REGZA”ブランドのテレビを中心に、リモコンからソーシャルネットワーク連携、録画機能との連携など、AV機器のコンパニオンデバイスとしてAndroidタブレットをフルに活用している点は評価したい。

 東芝の場合は“日本市場で特にテレビが強い”という事情を逆手にとって、日本の消費者に向けた機能をどんどん追加していることが魅力になっている。こうした手法は、ともすれば“ガラパゴス的”と揶揄(やゆ)する向きもあるだろう。しかし、言うまでもなくここは日本だ。各国で異なる放送の枠組みやテレビ視聴のスタイルに合わせ、カスタムメイドのアプリケーションで差異化を図るというのは、なかなか悪くない方法だと思う。

 ユーザー側の自由度が高いパソコンとは異なり、タブレット型端末は“ユーザーが使いこなす”要素よりも、“ユーザーの利用シナリオに合ったアプリケーションを使う”比重の方が大きい。どのように使ってほしいのか、ハッキリした目的があるのなら、添付するアプリケーションでさまざまな仕掛けを仕込んでおくことができる。

 これでSony Tablet並に、タッチ操作のしやすさ、ドラッグへの追従性など細かな使い勝手やパフォーマンスが上がってくれば、日本国内で面白い存在になっていくと思う。東芝はいわゆる“黒モノ”家電の品種を絞り込んでいることもあり、横のつながりが密でデジタル家電と情報機器の境目がない。ここがとてもいいところだ。

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