私的ランキングで振り返る2011年のノートPCAir、VAIO、Ultrabook……(1/2 ページ)

» 2011年12月31日 16時00分 公開
[鈴木雅暢(撮影:矢野渉),ITmedia]

 第2世代Core iシリーズ(開発コード名:Sandy Bridge)の登場で幕を開け、魅力的なノートPCが多数登場した2011年。この1年の業界動向を振り返りつつ、個人的にベスト10をピックアップした。そのランキングは以下の通りだ。

あまりにも大きかったMacBook Airの存在感

アップル「MacBook Air」

 2位に挙げたアップルの「MacBook Air」は、筆者も個人的に13.3型モデルを購入した。前モデルからデザインを引き継いでいるため、新鮮味はあまりないが、ノートPCにおけるアップルの影響力の大きさ、MacBook Airの人気の高さを改めて実感させられた。

 ソーシャルメディアによって業界内外の動向が見えるようになったから余計にそう感じるのかもしれないが、発表直後から数日のTwitterのタイムラインを眺めていて「こんなにもたくさんの方が買うのか……」とその存在の大きさに感心したものだ。

 人気の理由を探すのに苦労はしない。先代から引き継ぐエレガントなデザインのボディに加えて、コストパフォーマンスの高さが圧倒的だ。超低電圧版のCore i5(1.7GHz)に、4Gバイトメモリ、128GバイトのSSD、1440×900ドット表示に対応した液晶ディスプレイという標準構成で11万800円。256GバイトSSDモデルで13万8800円という価格は、約半年が経過したあとでも魅力たっぷりだ。

 価格だけで評価するわけではないが、実際に購入に踏み切れるかどうかを大きく分けるポイントであるのは事実だろう。こうした価格を実現できる理由はいくつかあろうが、そのうちの1つに、ユーザーにこびない決め打ちのスペック、割り切りの潔さというものがある。

 例えば、今でこそバッテリーの着脱ができない薄型軽量ノートPCは多くあるが、果たしてこのMacBook Airがなければ、どうだっただろうか。SSDの導入にしてもしかりだ。MacBook Air(2代目)の成功なくして、今のような状況があっただろうか。

 コストを考えれば、「直販モデルのみの高価なオプション」としてSSDを用意してきた多くのメーカーの行動はごく常識的といえるが、常識的なことばかりしていては真のイノベーションは起きないし、このような大ヒット作は生み出せない。

 一方、ディスプレイインタフェースはThunderboltのみ、USB 3.0は搭載していない。この辺りはユーザーに決してこびない姿勢の表れといえる。個人的にはできればメモリは8Gバイトにして、USB 3.0も欲しいところなのだが、「ないのだから仕方がない」とあきらめることができてしまうのだ。

 この“あきらめさせる力”がどこから来るのかについて、ここで言及するのは避けるが、決してアップルだけの特権はなく、製品展開の工夫次第でどのメーカーも持ちうるものだと思っている。

抜きん出たパフォーマンスが魅力のVAIO Z

ソニー「VAIO Z」

 ソニーの「VAIO」も意欲的な製品展開を行い、Sandy Bridgeの導入を機に、Z、S、F、C、EのノートPC各シリーズがフルモデルチェンジを果たしている。

 中でも光ファイバー接続のドッキングステーションを備える薄型軽量ノートPCとしてまったく新しく生まれ変わった13.1型モバイルノートの「VAIO Z」は、技術的な部分の興味を除いても、実に魅力のある製品だ。

 通常電圧版のCore i7を搭載しながら、重量約1.15キロ、厚さ約16.65ミリの超薄型軽量ボディにまとめているのは驚異的といえる。直販モデルではAdobe RGBカバー率92%の広色域フルHD液晶ディスプレイやデュアルSSD(512Gバイト/RAID 0)を選ぶことができ、1〜1.2キロクラスの薄型軽量モバイルノートPCとしては抜きん出たパフォーマンスを誇る。

 VAIO Zというと高価なイメージがあるが、ドッキングステーションを同時購入しなければ、かなり買いやすくなっている。現在ソニーストアでの最小構成は、Core i3-2330M、4Gバイトメモリ、128GバイトSSD(RAID 0)、1600×900ドット液晶といった内容で11万9800円。これは13.3型のMacBook Airにもヒケをとらない。

 もっとも、これは最近の値下げと各種キャンペーンが反映されての価格であり、「最初からこの価格だったら……」という思いもなくはない。「VAIO S」などほかのモデルも含めて、店頭モデルの構成や初期の価格設定に少し保守的な傾向が見られるのが、気になったところだ。

最もUltrabookらしいZENBOOK

ASUS「ZENBOOK UX31E」

 ASUSTeK ComputerのUltrabook「ZENBOOK」も見逃せない存在だ。デザイン、スペック、価格も含めて、IntelがCOMPUTEX TAIPEI 2011でアナウンスした「Ultrabookプロジェクト」のイメージを忠実に再現した、最も“UltrabookらしいUltrabook”といえるだろう。

 MacBook Airに似ているが決して同じではない、アダルトな雰囲気がある絶妙なデザインのアルミユニボディが印象的で、1600×900ドットの高解像度に対応している(13.3型モデルのUX31E)ことや、Serial ATA 6Gbs対応の高速SSDを搭載しているなど、ほかのUltrabookに対してスペック面でアドバンテージがある。

 そのうえで、UX31Eは256GバイトSSD搭載モデルで12万9800円、128GバイトSSD搭載モデルで10万9800円と、同等スペックのMacBook Air以下に抑えた価格も実に魅力的だ。

 半面、ZENBOOK以外のUltrabookは、ZENBOOKほど価格で明確な魅力を打ち出せていない製品が多く、印象も少々薄かった。

 東芝が国内メーカーで唯一投入してきたUltrabookの「dynabook R631」は、価格は上がるものの、13型クラスで最薄・最軽量をうたうボディやキーボードの打ちやすさ、充実したインタフェースなど、その完成度に大きな魅力を感じる。

 しかし、液晶ディスプレイの表示解像度が1366×768ドットに固定されているのは残念で、筆者としてはこの順位にとどめた。もし、高解像度液晶ディスプレイのオプションがあれば、より上位に食い込んだだろう。

 2011年はむしろUltrabookの枠に収まらない、国内メーカーの薄型軽量ノートPCに魅力的な製品が目立った。前述したVAIO Zもそうだし、富士通の13.3型モバイルノート「FMV LIFEBOOK SH76/E」も見逃せない。

 通常電圧版のCore i5と光学ドライブを搭載しながら、厚さは16.6〜23.2ミリ、重量は約1.34キロ(ベイカバー装着時:約1.22キロ)に抑えており、Ultrabook並の軽量ボディを実現している。富士通としては珍しく、店頭モデルでもデータストレージに標準で128GバイトのSSDを採用してきた点にも注目したい。

 光学ドライブ搭載で薄型軽量の13.3型モバイルノートPCとしては、東芝の「dynabook R731」も定評があり、すでに主流ではなくなってしまったが、Ultrabookと差異化できる構成としてまだ一定の需要があるだろう。

東芝「dynabook R631」(写真=左)。富士通「FMV LIFEBOOK SH76/E」(写真=右)

 Ultrabookプロジェクトは、今後数世代に渡って展開することを想定しており、本格的に盛り上がってくるのは、次のIvy Bridge世代からになりそうだ。

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