幅広いラインアップと豊富なBTOメニューで知られる直販PCメーカー、マウスコンピューターが「MousePro」を掲げて法人向けPC事業に本格参入したのが2011年。これまでにも同社は法人向けビジネスを展開してきたが、新たに立ち上げたMouseProではハイエンドなPCを求めるCADや3DCG製作の現場をターゲットに、より細やかな提案を行っている。オフィスでの需要が多いデスクトップPCに強みを持つ同社の新たな試みだ。
ほぼ1年前のインタビューで小松社長の口から出た“高い目標”(法人ビジネスを3年で2倍にする――「MousePro」にかける想い)に近づくことはできたのだろうか。Mouse Proにとっての2011年を振り返ってもらうとともに、今後の展望を改めて聞いた。
「2011年は年明けからびっくりさせられた年でしたね」――小松社長はそう振り返る。「年明けにIntel 6チップセットシリーズの問題でいきなり波を受け、やっとその影響が春くらいに戻りつつあるころ、震災が起きました。景気の先行きが不透明になったためにIT投資にストップをかけた企業もあり、その影響は計りしれません。ただ、逆に復興にむけて急にPCが必要になった部分もあり、ようやく秋口に『さあこれからだ』ということろで、タイの洪水の影響でHDDが供給不足になるという。2011年はまさに予想外の出来事が連続した年でした」と小松社長。
しかしその一方で、MouseProが踏み出した最初の1年としては“確かな手応え”があったと小松氏は自信を見せる。「特に品質に対しては一定の形で評価を頂けたと思います。実際に故障率などは非常に低く抑えられており、数字で実感できる部分ですね。この品質の部分に関しては、個人向けPCの生産にもフィードバックしています」。
続けて小松氏は「もう1つ、MouseProブランドで本当にウチらしくてよかったなと思うのは、省スペースなスリムタワーでありながら、ストレージやグラフィックスで拡張性の高いモデルを出せたことです。マイクロタワーでも高容量電源とハイエンドグラフィックスを搭載したモデルを提供でき、当初考えていたターゲット層はもちろん、非常に幅広い層へアプローチできました」と語る。
例えば「MousePro iS」シリーズは、本体サイズが96(幅)×394(奥行き)×330(高さ)ミリのスリムケースを採用しながら、3.5型HDDを2基搭載できる構造になっており、SSD+HDDの構成まで選択できる点が特徴だ。また、ミニタワータイプの「MousePro i」シリーズはリーズナブルな最小構成から、Sandy Bridge-EやNVIDIA Quadroを搭載するクリエイティブ業務向けモデルまで幅広い選択肢を用意する。
直販系PCメーカーの多くが即納を重視する一方、拡張性やグラフィックスの選択肢は狭いのに対して、MouseProは顧客ニーズに合わせやすい自由度の高い製品をラインアップしているわけだ。前回のインタビューで小松氏が語った「町のテーラー(仕立て屋)として、お客様ひとりひとりに寄り添ったビジネスを」という言葉の狙い通り、「高度なグラフィックス性能を求めるデザイン系オフィスや学校法人、ゲーム用途のネットカフェなど、非常に幅広いお客さまから支持を得ることができました」という。
「まさにMouseProで伸ばしたかったところが順調に伸びています。1年前に『法人ビジネスを3年で2倍にする』と宣言しましたが、おかげさまで、ちょうどそこが狙えるところにつけています」と小松氏。最初の1年としては順調なすべり出しのようだ。
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