インテルは3月27日、同社の社内インフラを支えるIT部門の説明会を開催した。インテル情報システム部長の富澤直之氏は、2011年の成果を振り返り、国内外におけるIT部門の取り組みを紹介した。
「近年コンシューマー向けのデジタルデバイスが進化し、普及したことによって、企業向けのデバイスよりも高性能となり、プライベートで使うデバイスを仕事でも使う社員が増えている」と富澤氏は述べる。インテルでは、使用するハンドヘルド機器(スマートフォン、タブレットデバイスなど)2万9000台のうち、半分以上の1万7000台が個人所有となっている。
これに伴い、インテルは携帯端末向けに社内専用のアプリケーションを社員に提供している。インスタントメッセージや会議室予約、音声会議のスピードダイアルなど7種類のアプリケーションを実用化したほか、現在28種類のアプリケーションを開発している。
通勤時間など社外で仕事が行える環境が整ったことにより、社員の生産性は1日あたり47分向上し、インテル全体では年間約200万時間向上したという。スマートフォン以外でも、「仮想化環境を構築することにより、Macや社員個人所有のPCを業務で使えるようにシステムを整えている」と富澤氏は述べた。
インテルは、ソーシャルメディアを積極的に活用している。ソーシャルメディアについては、社員のコミュニケーションを促進する重要なビジネスツールという位置づけで、企業内のビデオポータルを試験的に導入するなど、さまざまな実験を行っている。
ビデオ会議の利用も普及し始めた。2011年は1週間あたり平均600件以上のビデオ会議を行い、ビデオ会議機能を備えた会議室を2倍に増やした。これにより、社員の出張に必要な経費や時間を削減できたと富野氏は主張した。その時間はインテル社員全体で約43万5000時間、経費は7300万ドル削減したという。
インテルは2010年より、社員のクライアントPCにおいて「Windows 7」と「SSD」の導入に注力してきた。Windows 7については2011年内にほぼすべてのPCに導入、SSDについては、2009年には8%だった搭載率が2011年には89%となった。インテルは今後も社員の生産性向上に注力していく構えで、2012年中にはクライアントPCにUltrabookを導入する予定だ。
続いて富澤氏は企業のセキュリティについて言及した。「今まで企業のセキュリティというのは、いかに外へデータが流出しないようにするかという観点で、ガチガチに“守りを固める”という考え方が主流だったように思う。だが、企業への攻撃が激しくなり、社員がSNSなどで自由に書き込みをするような現状で、守りを固めるだけで対処はできない」と述べた。
インテルでは、“Protect to Enable”というスローガンのもと、物事を可能にするためのセキュリティ保護という観点で、ビジネスのスピード、社員の生産性を第一に考えてリスクを軽減させる方針に転換した。例えば、2011年はマルウェアの検出件数が50%増加したものの、感染件数は30%減少している。「情報を守るだけではなく、攻撃に受けたときの対処にも重点を置いている」(富澤氏)という。
個人所有のデバイスで仕事をする社員が増えたことも、セキュリティ面では難しい問題だ。インテルでは、会社支給のノートPCよりも個人所有のスマートフォンではアクセス権限を減らす、機器を使用する場所によって権限を変えるなど、デバイスの種類や場所により情報流出のリスクを算出するシステムを開発し、運用のテストを行っている。
このほか、データセンターを削減する施策や、製品開発サイクルの短縮、製品需要予測の高速化などを富澤氏は紹介、「インテルはビジネスの速度も重視している」と強調した。
富澤氏は最後に日本におけるIT部門の取り組みを紹介した。
東日本大震災で、同社はつくば本社(茨城県つくば市)の施設が損壊し、オフィスが使えなくなったが、ITサービスの提供に影響はなかった。重要な機能はクラウド上に移行しており、全社員がモバイルPCを利用していることもあり、震災後は在宅業務を社員に命じた。ソフトフォンやソーシャルメディアなどのコミュニケーション手段も構築され、「事業が中断せず、売り上げに影響はなかった」と富澤氏は述べた。
損壊したオフィスは、フリーアドレスを基本とする内装に生まれ変わった。「業務にあったワークスタイルを推奨するとともに、高付加価値を生み出せるワークスタイルへのシフトするため」(富澤氏)だという。
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