AMDは、米国時間の5月15日、開発コード名“Trinity”で知られる第2世代のAPU(Accelerated Processing Unit)として、「AMD A10-4600M」などノートPC向け5製品を発表した。Trinityは、CPUアーキテクチャをBulldozerベースの“Piledriver”(パイルドライバー)へ変更し、グラフィックスコアについても“Northern Islands”(ノーザン・アイランド)世代の上位製品が採用していた「VLIW4」(Very Long Instruction Words 4)へ切り替えることで、パフォーマンスアップと、すぐれた省電力性の実現を目指している。13億300万トランジスタをGLOBAL FOUNDRIESの32ナノメートルSOIプロセスルールで集積し、ダイサイズは246平方ミリと、同じプロセスルールを採用するLlano(ラノ)ベースの従来AMD Aシリーズと同等(11億7800万トランジスタ、228平方ミリ)に抑えている。
なお、AMDが今回発表したラインアップは下記の通りだ。Trinityでは、新たにTDP 17ワットとTDP 25ワット版が追加されたが、これらの“低電力版”でも従来のAMD AシリーズでノートPC向けAPUと同等のパフォーマンスを発揮し、消費電力あたりのパフォーマンスは2倍に高めたとAMDは説明している。
ノートPC向けTrinityの製品ラインアップ | AMD A10-4600M | AMD A8-4500M | AMD A6-4400M | AMD A10-4665M | AMD A6-4455M |
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Radeonブランド | Radeon HD 7660G | Radeon HD 7640G | Radeon HD 7520G | Radeon HD 7620G | Radeon HD 7500G |
TDP | 35W | 35W | 35W | 25W | 17W |
x86 CPUコア | 4コア | 4コア | 2コア | 4コア | 2コア |
L2キャッシュ | 4MB | 4MB | 1MB | 4MB | 2MB |
CPUベースクロック | 2.3GHz | 1.9GHz | 2.7GHz | 2GHz | 2.1GHz |
CPU TurboCOREクロック(最大) | 3.2GHz | 2.8GHz | 3.2GHz | 2.8GHz | 2.6GHz |
Radeonコア | 384コア | 256コア | 192コア | 384コア | 256コア |
グラフィックスコアベースクロック | 497MHz | 497MHz | 497MHz | 360MHz | 327MHz |
グラフィックスTurboCOREクロック(最大) | 686MHz | 655MHz | 686MHz | 497MHz | 424MHz |
DDR3(1.5V) | DDR3-1600 | DDR3-1600 | DDR3-1600 | DDR3-1333 | DDR3-1333 |
DDR3L(1.35V) | DDR3L-1600 | DDR3L-1600 | DDR3L-1600 | DDR3L-1333 | DDR3L-1333 |
DDR3U(1.25V) | DDR3U-1333 | DDR3U-1333 | DDR3U-1333 | DDR3U-1066 | DDR3U-1066 |
AMDは、Trinityの開発で消費電力あたりのパフォーマンスと、優れたエンターティメント体験やゲーム体験の実現を掲げ、そのために、CPUコアアーキテクチャとグラフィックスアーキテクチャを刷新した。このAPUに採用した“Piledriver”モジュールは、AMD FXシリーズで採用された“Bulldozer”世代アーキテクチャの改良版にあたり、分岐予測の精度やスケジューリングの効率を向上させ、IPC(Instruction Per Cycle:1クロックサイクルで実行できる命令数)を高めるとともに、より高速な動作クロックを実現しやすくしている。
また、2基のx86整数演算ユニットと1基の浮動小数点演算ユニットを統合しているPiledriverモジュールでは、各演算ユニットで効率的なデータリソースの共有ができるように、1次 TLB(Translation Lookaside Buffer)の大容量化やハードウェアプリフェッチ機能の強化を図っているほか、拡張命令セットに3オペランドで単精度浮動小数点積和演算をこなすFMA3(Fused Multiply Add 3)と、単精度(32ビット)浮動小数点を半精度(16ビット)の浮動小数点に変換するF16Cを追加した。
AMDは、Trinityの投入によって消費電力あたりのパフォーマンスでは、インテルのノートPC向けCPUを超えたと語っている。AMD 副社長でクライアント向けAPU/CPUビジネスを統括するクリス・クローラン氏は、Trinityに搭載したPiledriverコアは、リーク電流を低減するとともに、よりきめ細やかな電力と温度の管理を可能にすることで、アプリケーション性能とグラフィックス性能の両面で、ほぼ同等の性能を発揮すると説明する。
その実例として、TDP 17ワット版のデュアルコアAPU「AMD A6-4455M」と、LlanoコアベースのTDP 35ワット版クアッドコアAPUの「AMD A6-3400M」を比較し、以下のようなデータを示している。
モデルナンバー | コア数 | 動作クロック | PCMark Vantage | 3DMark Vantage |
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AMD A6-4455M | 2コア | 2.1GHz、最大2.6GHz | 4300 | P2355 |
AMD A6-3400M | 4コア | 1.4GHz、最大2.3GHz | 4545 | P2292 |
これにより、AMDはインテルが提唱する“Ultrabook”に対抗する「Ultrathinプラットフォーム」を立ち上げ、薄型で軽量のノートPC市場においてもAPUを普及する構えだ。
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