ここからは、第3世代Core搭載のUltrabookとしてどれくらい性能を出せるのか、スペックの異なる店頭モデルと直販モデルでどの程度の差が生じるのか、各種パフォーマンステストの結果を見ていこう。
Windowsエクスペリエンスインデックスのスコアは、すべての項目においてハイスペックな構成の直販モデルが店頭モデルを上回ったが、店頭モデルでもプロセッサで6.9を獲得するなど、Windows 7を快適に扱える性能を備えているのが分かる。高い3Dグラフィックス性能が求められるゲームなどの用途でなければ、満足できる性能だ。11.6型と13.3型の店頭モデル、11.6型と13.3型の直販モデルはそれぞれ同じ基本スペックなので、スコアも変わらない。
各コンポーネントのスコアで一番大きな差が付いたのがプライマリハードディスクだ。SSD搭載の直販モデルは、スコア上限となる7.9を獲得している。その一方で、HDDとキャッシュ用SSDを搭載した店頭モデルは、HDDのみの構成と変わらない5.9にとどまった。Windowsエクスペリエンスインデックスのスコアでは、キャッシュ用SSDの効果が現れていない。
プロセッサの差は0.2ポイントと大きくないが、直販モデルはメモリ容量が店頭モデルの2倍となる8Gバイトで、デュアルチャンネルアクセスにも対応しているため、メモリのスコアとそれに伴うグラフィックスのスコアで差を広げた。4台ともグラフィックス機能はCPUに統合されたIntel HD Graphics 4000を採用し、グラフィックスメモリはメインメモリと共用なので、メモリ容量が大きいとグラフィックスのスコアも向上する傾向にある。
アプリケーションベースの定番ベンチマークテストであるPCMark 7とPCMark Vantage(x64)を実行し、システム全体のパフォーマンスを確認した。
テスト結果の傾向はWindowsエクスペリエンスインデックスに似ており、4台ともWindows 7搭載機として高い性能を示している。特に直販モデルのスコアは優秀だ。PCMark 7の総合スコアでは、直販モデルが店頭モデルの約1.3倍のスコアをたたき出した。PCMark Vantageでは、ストレージにSSDを採用しているとスコアが飛躍的に伸びることもあり、実際の体感差はここまで大きくないが、直販モデルの総合スコアは店頭モデルの約1.6〜1.8倍と圧倒的な差が生じている。
とはいえ、HDD+キャッシュ用SSD搭載の店頭モデルについても、ストレージ関連のスコアは決して低くない。PCMark 7のSystem storageスコアは、標準的な5400rpmのHDDを搭載したノートPCに比べて2倍以上で、PCMark VantageのHDDスコアは低速なSSDを上回るレベルに達している。Windowsエクスペリエンスインデックスでは振るわなかったHDD+キャッシュ用SSDの構成だが、実際のアプリケーション動作を模したテストではHDDに対する確かなアドバンテージがみられた。
参考までに、PCMark Vantageのテスト結果は、これまでPC USERで取り上げた主要なUltrabookのスコアと並べてみた。
SSDのみを内蔵した直販モデルは、第2世代Core(開発コード名:Sandy Bridge)ベースの第1世代Ultrabookを大きく上回っており、第3世代Coreを搭載した第2世代Ultrabookらしい進化を見せつけている。
ちなみに、グラフに併記した第2世代Ultrabookの「FMV LIFEBOOK UH75/HM」は、VAIO Tよりワンランク上のCPUであるCore i7-3667U(2.0GHz/最大3.2GHz、3次キャッシュ4Mバイト)を搭載しているが、VAIO Tの直販モデルはこれと同レベルのスコアを達成しており、現状のUltrabookでトップクラスのパフォーマンスだ。
なお、グラフには加えていないが、VAIOの最上位モバイルノートPCであるVAIO Zの前モデル「VPCZ22AJ」がほぼフルスペックの状態で「13149」(ドック非接続時)という総合スコアなので、VAIO Tの直販モデルはこれに比肩する性能をグッと安価に提供していることになる。旧VAIO Zのユーザーにとっては、時間の流れは残酷というべきか。
一方、店頭モデルはHDD+キャッシュ用SSDの構成なので、SSDのみを内蔵するUltrabookに比べてスコアが伸びにくいが、同じくHDD+キャッシュ用SSD(こちらはExpress Cacheをベースに最適化したSSDキャッシュ技術を採用)を積んだ「FMV LIFEBOOK UH75/H」のスコアは上回り、SSDのみを内蔵した第1世代Ultrabookの一部機種も超えるなど、なかなかの健闘ぶりだ。
各モデルが搭載するストレージの性能については、もう少し詳しく調べていこう。
ストレージのリード/ライト性能を調べるCrystalDiskMark 3.0.1c(ひよひよ氏作)でも、店頭モデルが搭載するHDD+キャッシュ用SSDの効果は確かに出ている。
SSDのキャッシュが有効なリード時はシーケンシャルもランダムも通常のHDDよりかなり高速だが、HDDへの書き込みが生じるライト時は標準的なHDD並のスコアだ。キャッシュが効く2回目のテストからは、リード速度のスコアが最大で2.5倍以上に伸びる(テスト結果のグラフは5回実行した平均値だが、初回のスコアは省いた)。
SSDのみを内蔵した直販モデルは、シーケンシャルリードが11.6型で488.17Mバイト/秒、13.3型で492Mバイト/秒、シーケンシャルライトが11.6型で357Mバイト/秒、13.3型で408.57Mバイト/秒を記録しており、いずれも非常に速い。ランダムリードとランダムライトも高速で、現状のUltrabookとしては最速クラスのストレージだ。こちらはHDD+キャッシュ用SSD搭載の店頭モデルと異なり、初回のテストから結果が安定した。
今回入手した直販モデルのSSDは11.6型がTOSHIBA THNSNS512GCSP、13.3型がSamsung MZ7PC512HAGH-000を内蔵していたが、前者はランダムリード、後者はランダムライトが速い傾向にあった。いずれにしても、ストレージの速度は満足できる。
ファイルコピーやアプリケーションの起動速度も実測し、店頭モデルと直販モデルで体感速度に違いがあるのか調べてみた。ファイルコピーは、1000枚のJPEG画像データ(合計3.42Gバイト)を同一ドライブ内でコピーした場合、Zipファイル1個(3.02Gバイト)を同一ドライブ内でコピーした場合のそれぞれにかかった時間を計測した。
アプリケーションの起動については、5MバイトのJPEG画像データ(3888×2592ドット)と27MバイトのJPEG画像データ(7360×4912ドット)を、デスクトップ上のPhotoshop Elements 10アイコンにドラッグして起動した場合にかかった時間を計測している。
結果はやはりデータの書き込みを行うファイルコピーで大きな差が生じた。例えば13.3型モデルの場合、1000枚のJPEG画像をコピーするのに店頭モデルで2分12秒かかったのに対して、直販モデルでは19.9秒で済んでおり、速度の差は歴然としている。当然、体感でもデータ書き込みが発生するシーンではSSDのみ内蔵する直販モデルのほうが明らかに快適だ。
一方、デジタルカメラで撮影した高画素のJPEG画像をPhotoshop Elements 10に送ってアプリケーションを起動するテストでは、店頭モデルと直販モデルでほとんど差が生じなかった。先にテストしたスリープからの復帰時間もそうだが、データのリードではキャッシュ用SSDが効くので、店頭モデルでもレスポンスはかなり良好だ。
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