LaVie Zが「800グラム台」を実現できた本当の理由本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/3 ページ)

» 2012年07月10日 10時00分 公開
[本田雅一(撮影:矢野渉),ITmedia]

あっと驚かせる、革新的な製品を出せ──から生まれた世界最軽量Ultrabook「LaVie Z」

photo 13.3型ワイドのディスプレイ(1600×900ドット)を搭載し、厚さ9.4ミリ/重量875グラムのスペシャルボディを実現した「LaVie Z」

 インテルがUltrabook普及イベントを開いた際、NECパーソナルコンピュータがスペック未定のまま急にお披露目したLaVie Z。NECには大変失礼かもしれないが「えっ? NEC?」と驚いた方もいると思う。NECと言えば、ボリュームの出る保守的な製品ラインアップを意識して作ってきたからだ。トップエッジから自ら距離を置き、マニアから見た面白さよりも、大多数の一般ユーザーが重視するであろうポイントに絞って保守的に作った製品を並べたのは、ひとえにリスクを避けるためであろう。

 そんな保守的なイメージがすっかり定着しているNECだが、以前はユニークな製品を多数生み出してきた。その中には世に出てないものも多数あるが、意外に小型・軽量のモバイル用途を狙った製品が多かった、という印象だ。

 さて、以前よりそのユニークな変わりダネ製品を企画、あるいは部下に提案するよう促していた商品開発本部本部長の小野寺忠司氏も2012年7月現在はNECパーソナルコンピュータの執行役員となり、社長には新しい企画、新しい技術への挑戦に積極的な高塚栄氏が2012年1月に就任した。こうしてこれまで「確実に売れる中核製品にフォーカス」だった方針は、「中核製品に加え、ブランド力強化を図れるようなイノベイティブ(革新的)な製品もラインアップに加えていく」に変化したようだ。

 その第1弾として持ち上がったのが「ほかのメーカーは作らない・作れないであろうユニークなUltrabook」だった。NECは独自性を引き出すため、第1世代のUltrabook投入をパスし、第2世代となったIvy Bridge(開発コード名)世代のUltrabookで勝負をかけたのだ。

13型サイズで11型クラス並の軽量を

photo LaVie Z企画担当の中井裕介氏

 今回の製品を企画したコンシューマPC商品企画本部プラットフォーム企画部の中井裕介氏(以下、中井氏)は、LaVie Zに関して忘れらない一言がある。

 商品企画・開発のキックオフミーティングでのことだ。中井氏は「他メーカーは絶対に作らないだろうUltrabook」という企画を任され、ユーザーアンケートの結果とともに、自分自身がほしいUltrabookとは何だ? と自問自答。それは「すべてにおいてあきらめない」ことだった。あきらめない製品とした上で、モバイルPCでもっともニーズの高い軽量化を徹底することに行きついた。

 「現在、13型クラスのモデルで1キロを切る製品は我々だけですが、発売しても次のモデルが出るころに追いつかれてしまう程度ではインパクトが薄いと思いました。イノベイティブな製品を作ろうというのですから、それまでの常識を覆すようでなければなりません。しかもスペック面でもあきらめてはならない。そこで1キロ以下ではなく、“900グラム以下で”と考えたのです」(中井氏)

 とはいえ、900グラムを切るためには11型クラスの液晶を採用するほかない──とも覚悟をしていた。”あきらめない”といっても、物理的な大きさには制約を受ける。画面サイズが大きければボディの表面積は増える。表面積が増えれば外装の重量が増えてしまうのは必然である。薄くディスプレイも大きいとなれば、なおさら剛性を出しにくいため重くなる傾向が強まってしまう。

 入社5年目、初めて任された商品企画のリードで、他メーカーにはないユニークなモバイルPCを──Ultrabookを作るというプロジェクトに挑む中井氏は、どうしても軽さへのインパクト、13型クラスであきらめない性能と使い勝手を引き出したいと考えていた。ただ、それでも画面サイズは11型クラスになると想定していたという。

 ところが初期の商品開発会議で11型クラス/900グラム以下という話をすると、開発側から異論が出た。11型クラスで底面積(フットプリント)が小さくなると、部品を重ねることになり、薄さがスポイルされることになる。また、レイアウトが限られるため、操作性、何らかの端子、あるいはメモリカードスロットなど、あきらめなければならない項目が増えるというのだ。もちろん、高解像度ディスプレイの採用やキーボードサイズの確保などをかんがみても、13型クラスの方がバランスのよい製品になることは明らかだ。

 でも、NEC米沢事業場のエンジニアがそれに続いて「それなら13.3型で11.6型並の軽量化をすればいいんだろう? 目標、絶対に達成できるよ。必ず作ってやる」と言ってくれた。そもそもが無茶な提案とも思っていた中井氏は、がぜんモチベーションが上がったと話す。

 「僕にとって初めて商品企画のリードを取った作品ですから、開発側の支援に感動しました。一生、忘れません」(中井氏)

NEC Direct(NECダイレクト)

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