> コラム 2003年5月26日 03:26 PM 更新

EIZO「FlexScan L985EX」「CG18」試用記――そして、わが家からCRTがなくなる日(1/3)

大型ディスプレイを仕事で使っている人間にとって、大型液晶ディスプレイへの買い替えはとても勇気の要ることだ。価格の高さはもちろん、その性能の良し悪しが死活問題になりかねないからだ。だが、ようやく僕も決心できそうだ

 前回、大型のUXGAディスプレイに関する記事を書いてから、非常に多くのフィードバックを読者からいただいた。なかなか液晶ディスプレイに買い換えることができずにいるのは、どうやら僕だけではなかったようだ。

 記事を掲載してからまだそれほど多くの時間は経過していないが、その後、状況は刻々と変化している。たとえばシャープのLL-T2020は、価格が20万円台前半にまで落ちてきている。日本サムスンも新型のSyncMaster 213Tを20万円を切る価格帯に投入した。


日本サムスン「SyncMaster 213T」(左)とシャープ「LL-T2020」

 また、都内大型店舗の中には、20インチクラスのUXGA液晶ディスプレイを店頭デモする場所、機種ともに増加傾向だ。残念ながら、あまり品質の高くないアナログRGB分配機からの信号でデモされていることが多く、製品の比較評価に適しているとは言い難いが、より購入しやすい環境が整ってきたことは喜ぶべきだろう。

 今回は前回の懸案であったナナオのFlexScan L985EXを10日ほど試用する機会を得た。そのレポートに絡めて、前回の続編を記してみたい。

長年使い続けてきたナナオCRTと同様の見え味

 L985EXは日立製の21.3インチスーパーIPS液晶パネルを採用した製品で、視野角が非常に広い。見る場所による色変位も(カタログで書かれている通り)非常に少ない。このクラスの製品ともなれば視野角の狭いパネルの方が珍しいが、数字の上では視野角が広くとも、実際に見ると多少残念な気持ちになる製品もある。しかし、L985EXにはそれがない。


ナナオ「FlexScan L985EX」

 もっとも、大型UXGA液晶パネルの中ではもっとも実売価格が高い製品のひとつだけに、注目点は色味や操作性といった、エモーショナルな部分に求めたいところ。ところが、こちらもなかなかすばらしい。

 L985EXの発色は、動画や写真のビビッドな美しさを求めたタイプではない。しかし、非常に落ち着いており、ふだん仕事で使っているFlexScan F980と似た傾向の見え味で、高彩度の領域では、F980を上回る純度の高い(濁りのない)発色でL985EXの方が好ましく感じるといった違いがある程度。

 前回の記事で色々と理屈をこねてしまったが、この製品ならばCRTから置き換えても違和感を感じないどころか、明らかなグレードアップだと感じられるはずだ。

 ちなみにナナオによると、2年ほど前から液晶ディスプレイのカラーフィルタには、同社製CRTとほぼ同じ色度のものを指定して液晶パネルベンダーから調達しているそうで、CRTと液晶パネルの見え方の違いはあるものの、色再現域はほぼ同じになるのだという。

 個人的に、安価な液晶ディスプレイで最も気に入らなかった、青の発色がイメージに近いものになったのが印象的。青の発色に関しては、IBMのThinkVision L200pでも大きな不満は感じなかったが、実利用事の視野角はL985EXの方が広く感じ、またL985EXは色に関する調整が細かく行える。

 sRGBをエミュレートするプリセットモードの具合もよく、sRGBモードで30%程度にまで輝度を落とせば、sRGBモードの自然画を違和感なく表示させることができた。本機には他に、色温度を動画に最適化したMovieモードや、ガンマを自然画表示に適した(見栄えのする)特殊なカーブに設定するPictureモードなどもある。もちろん、自分でガンマやRGB各色のゲインなどを細かく調整できる。

 さらに添付ソフトウェアの「ScreenManager Pro for LCD」を用いれば、RGBだけでなくCMYを合わせた6色の色相や彩度をカスタマイズし、表示色空間の微調整を行うことが可能だ。ただし、この機能を上手に使いこなすのは非常に難しい。できればひな形としていくつかのプリセットが設定されていればいいのだが、そのような機能は実装されていなかった。

 その代わりに上記の別色空間を作り出す機能(内蔵されているLSIで色変換を行っているようだ)を利用して、異なる色空間をL985EX上でエミュレートする機能を備えている。ユーティリティでRGBの各色座標を入力するだけで、他色空間を仮想的に再現する。

 もちろん、L985EX自身の色空間(ほぼsRGB程度)よりも広い色空間をエミュレートすると、再現できない領域の色は飽和する。しかし、この機能を利用して今使っているCRTのRGB座標値を入力すれば(ガンマ特性の細かな差はともかくとして)、使用中のCRTに似た色味とすることも可能だろう。

[本田雅一, ITmedia ]

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