> ニュース 2003年6月6日 07:48 PM 更新

「バイオノートTR」メイン基板の「表」と「裏」(1/2)


 光ディスクドライブを内蔵した軽量ノートPCとして注目されている「バイオノートTR」が、6月6日から出荷を開始する(一部量販店やSonyStyle経由ですでに入手したユーザーもいるようだが)。いまひとつ分かりにくい、バイオノートTRの差別化ポイントと、ZDNetではお馴染みとなった「基板設計苦労話」について、企画担当の松本淳子氏(インフォメーションテクノロジーカンパニー企画部 企画3課 係長)と、機構設計担当の松尾隆信氏(インフォメーションテクノロジーカンパニー 6部3課 係長)に紹介していただいた。


バイオノートTR

 ということで、いきなりTRの中身である。「バイオノートSRと同程度の重量とサイズを維持する」必須条件を満たしながら、光ディスクドライブを内蔵しなければならないため、レイアウトデザインの苦労は並大抵ではなかったらしい。


バイオノートTRの筐体内部レイアウト。右半分にディスクドライブ、左手前にHDDが配置されたため、CPUや電源系の背の高いチップは左側のごく限られたスペースに集中させなければならなかった

 「すでにバイオU101があるじゃないか」という声もあるだろう。たしかに、U101よりメイン基板も筐体容積も大きく取られているが、大きければ大きいなりに苦労することが出てくるのだ。その典型的な例がインタフェースコネクタの実装だ。

 簡単にやりたければ、筐体内部全面に一枚のボードを敷いてしまえばいい。基板にそのまま実装できるなら、それほど難しいことではない。しかし、それは重量増に結びついてしまう。ほかのメーカーでは8層、6層が主流のメイン基板だが、TRでは、容量が増えた電力系の配線パターンに余裕を持たせるため、10層基板を使っている。厚い基板の重量は、「筐体一杯に広がった基板」を許さない状況にあった。

 結局TRでは、メイン基板を筐体左半分に配置。ディスクドライブとサブ基板で供給される「サウンド」「無線LAN」「モデムモジュール」を右半分に重ねて配置するレイアウトを採用した。基板を分割するとコネクタの数が多くなるが、それでも、基板面積を広くするほうが重くなってしまうのだ。


筐体右に配置されたサブ基板群。画面右下に無線LANモジュール、その上にサウンドモジュール。その左にあるのはモデムモジュール。LAN全盛の現状でも「需要は依然として高い」(松尾氏)ため、モデムモジュールを必ず搭載しなければならないそうだ

 軽量化というアプローチでは、Let'snoteが筐体パネルを0.55ミリと薄くする方法を採用している。TRは0.7ミリ。通常使われている0.8〜1ミリよりは十分薄いが、Let'snote並みに薄く出来なかったのか。

 ソニーは0.55ミリという薄さについて「十分な歩留まりを確保できるか疑問」(松尾氏)と評価、軽量化と歩留まりのトレードオフを考えると0.7ミリがちょうどよい」(松尾氏)としている。

 TRのメイン基板の形状は、理想といわれる正方形に近い形。しかし中央にあるのが望ましいノースブリッジ(MCH)とCPUが左隅に追いやられている。これは冷却効果を考慮したためのレイアウト。CPUとノースブリッジを、ファンを設置できる基板の隅に設置する必要があったのだ。


TRのメイン基板表側。ノートPCのCPUはファンの位置の関係で基板の角に配置されるケースが多い。しかし、これほどぎりぎりまで追いやられているケースは珍しい。CPUとノースブリッジの下に1.8インチHDDがくる。基板右側には、サブ基板と接続するフレキケーブルコネクタが集中している

 通常のノートPCでは、発熱チップとして問題になるCPUとノースブリッジを重点的に冷却している。とくにTRのノースブリッジは、グラフィックスコアを内蔵したIntel 855GMなので、かなり発熱しそうだ。

 ところが、TRの冷却機構には、ヒートシンクもヒートパイプもない。

[長浜和也, ITmedia ]

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