> レビュー 2003年6月11日 05:22 PM 更新

“直販メーカーのリビングPC”、EDiCube MV1300H

エプソンダイレクトのEDiCube MXは、内蔵DVD+RW/RドライブへのTV番組ダイレクト録画に対応していた。今回受注が開始されたEDiCube MVでは、新たにネットワーク内のほかのPCへのTV映像配信機能を搭載。

今回試用した構成(EDiCube MV1300H+EDW17MV)
Pentium 4/2.66GHz
ハードウェアMPEG2エンコーダ搭載
DVD+RW/Rドライブ
17型ワイド液晶ディスプレイ
通常価格:194,600円
Photo

直販メーカーながら、充実したオリジナルTV機能を提供

 エプソンダイレクトはEDiCubeやEndeavorシリーズといった、デスクトップPC、ノートPCを販売している。国内では草分け的存在ともいわれる直販メーカーだ。自社サイトでのオンライン販売を主にしているだけに、B.T.O.によるユーザーが自由に構成を選択できるのが特徴。こういった販売スタイルの場合、基本的な部分では選べるパーツは多彩なものの、テレビ録画といった機能に関しては、ほかの周辺機器メーカーのパーツ(および、その付属ソフトウェア)をそのままバンドルするため、どうも統一感に欠けるケースが多い。しかし、エプソンダイレクトのEDiCube MXシリーズ(直近の構成)では、B.T.O.色よりもハードウェア構成をある程度絞り込むことで、Symphovisionというオリジナルソフトウェアによる内蔵DVD+RW/RドライブへのTV番組ダイレクト録画に対応し、なかなか面白い存在となっていた。

 6月5日から受注開始となった新シリーズ、EDiCube MVではこのMXをベースに、TVパソコンとしての方向性をさらにもう一歩進めている。今回、新たに搭載したのは、ネットワーク内のほかのPCへのTV映像配信機能だ。これはバイオのGigaPocketや、NECのSmartVisionではすでに実現されているが、比較的コストパフォーマンスが高い直販PCでの採用とあれば、新たに興味がわいてくるに違いない。

 EDiCube MVは、MXとは外観は少し異なるものの、いわゆる省スペース型の筐体を採用しているのは同じだ。フロントにはDVD+RW/Rドライブ、PCカードスロット(CardBus対応)、USB、IEEE1394、サウンド入出力に加え、4 in 1カードスロット(メモリースティック、スマートメディア、SD、MMC)も装備した。やや気になるのは、本体ケースがスチール製で、デザイン・質感ともにいまいちなことだが、価格が抑えられている分、これはしかたないともいえる。

 MVシリーズの構成は、MV1100H、MV1100P、MV1300H、MV1300P、MV1500H、MV1500Pの6モデル(型番の最後のHはWindowsXP Home Edition、PはWindowsXP Professional)が基本で、価格は最も安いEDiCube MV1100H(Celeron/2GHz、HDD80Gバイト)で109,800円(7月22日までのオンライン特別値引き5,000円を適用した場合)、Pentium4/3.06GHz、HDD180GバイトのEDiCube MV1500Hでも169,800円(同じく特別値引き適用時)となっている。もちろん、どの構成もハードウェアMPEG2エンコーダ付TVチューナボード+Symphovisionを標準装備したものだ。


 今回は17型ワイドTFTカラー液晶ディスプレイ「EDW17MV」(本体と合わせて購入する場合、+54,800円)を組み合わせて試用したが、このディスプレイもどちらかというと質実剛健という印象である。しかし、充実したTV機能を売りとするMV本体と、17インチワイド液晶の相性は抜群なので、EDiCube MVの購入を決めた人なら、コストパフォーマンスの高さもあり、EDW17MVと組み合わせるのが最良の選択だろう。おそらく、Pentium4/2.66GHz、HDD120GバイトのEDiCube MV1300Hが最多販売モデルになると思われる。これにEDW17MVを組み合わせた今回試用した構成でも、189,600円(特別値引き適用時)だ。

SymphovisionとSymphomovieで、TV録画からDV編集、DVD作成までをサポート

 前述のとおり、EDiCube MVの基本的なTV機能はSymphovisionに集約されている。このほかにSymphomovieというソフトウェアもあり、こちらはDV機器からの取り込みやビデオ編集をカバーする。Symphovisionのインタフェースは非常にシンプルだが、TV視聴、タイムシフト、HDD/DVD録画、iEPGによる録画予約といった全機能を操作できる。ハードウェアMPEG2エンコーダ付TVチューナボード(AverMedia製のエプソンダイレクト向けカスタムボード。システムプロパティのデバイス名は「PVR-PCI, AverMedia MPEG Capture PLUS!」)には、ゴーストリデューサー、3次元Y/C分離、デジタルノイズリダクションを搭載。実際、本体の価格を考えれば、受信映像は十分以上に満足のいくもので、さらに、MPEG2エンコーディングの設定も最高画質(9.2Mbps)・高画質(8Mbps)・標準(6Mbps)のほかに、カスタム設定も1〜12Mbps(固定ビットレート。可変ビットレートはパーセンテージで指定するが、最大は15Mbps)から選択可能と、非常に自由度が高い。


Symphovisionの画面。下のインタフェースパネルに全機能が集約され、チャンネル切替や音量調整、TV/HDD/DVDの再生モード切替、HDD/DVD録画開始のほか、設定画面やiEPGの呼び出しもできる。HDD録画一覧から直接、DVD作成機能も利用可能

 また、書き込み可能なDVD+RWが挿入されていれば、「HDD録画」ボタンのほかに「DVD録画」ボタンが有効となり、ワンボタンでDVD+VRフォーマットによるダイレクトレコーディングができる。もちろん、予約録画の場合でも書き込み先にDVDを選択可能だ。DVD録画モードでは、画像が最高画質(最大1時間収録)、高画質(2時間)、標準(3時間)から、音声がリニアPCM、MPEG2から選べる(リニアPCMの場合、画像:標準は選択不可)。

 ただ、実際の運用では、いったんHDDに録画し、その中から必要に応じてDVDを作成するという用途が主になるだろう。もちろん、その手順もSymphovisionから最短ステップで実行できた。さらに、DVD+Rメディアへの4倍速書き込みに対応したドライブを採用しているので、再エンコーディングが必要ない未編集映像の場合なら高速ダビングが利用可能だ。もちろん、手軽さや安定性では若干かなわないかもしれないが、民生用HDD+DVDレコーダーの購入を考えている人の場合でも、PCの中では手軽にDVD録画を扱えるEDiCube MVも選択肢のうちにいれてもいいだろうと感じる。


予約はiEPGに対応。テレビ番組情報サイトの予約ボタンをクリックすれば、予約設定ウィンドウが表示される。当然ながら、EDiCube MVの場合は録画先にDVDを選択可能だ

新搭載のTV映像配信機能は非常にシンプルながら、満足のいく映像が観賞できる

 さて、かんじんのTV映像配信機能だが、セットアップは非常に簡単。EDiCube MV側は初めからサーバとして動作するようセットアップされているので、配信先にしたいPC(同時に1台のみ)にSymphovisionSTというクライアントソフトをインストールする。設定事項はほとんどなく、サーバとなるEDiCube MVのコンピュータ名だけ入れてやればいいだけ。

 もちろん、経由するネットワークは有線でも無線でもかまわないが、実効速度に合わせて、転送レートを手動で設定する必要がある。すでに述べたとおり、クライアント側ではサーバ名くらいしか設定がない。配信パラメータの設定はサーバ側で行えばいい。今回試用したのはベータ版のため、いろいろと制限や不都合もあったが、総じて動作は安定しており、画像の品質もよく、動きも滑らかだった。当然ながら、これはネットワークの実効速度に左右されるのだが、有線LANや54Mbpsタイプの無線LANであれば、十分に満足のいく映像が観賞できるし、11Mbpsタイプの無線LANでも配信ビットレートや画面サイズを工夫してやれば、特に問題なくTV放送や録画ファイルの再生を楽しめる。また、「HDD録画」を押せば、サーバ側での録画を開始できる。ただ、シンプルゆえに、クライアントからのiEPG録画などには対応していない。


SymphovisionSTのインタフェース。非常にシンプルだが、必要最低限の機能は備えており、受信・再生の映像品質も上々。録画ボタンを押すと、サーバ側で実行される


 「DVDに直接録画ができる」というのは、実はことさらめずらしくはない。しかし、内蔵ドライブにDVD+RW/Rを選択し、DVD+VRフォーマットに対応、「テレビ番組を、リモコンひとつでDVDに」と前面に打ち出したEDiCube MXは、ある意味で興味深かった。自分の手持ちの機器で再生可能かどうか確認しておく必要はあるが、DVD+RWに書き込んで、リビングのDVDプレーヤーで再生したり、DVDドライブ搭載のノートPCでモバイル観賞したりという用途は、ネットワークを利用したビデオ共有と比較しても、現時点ではそれなりに実用的だ。もちろん、DVD+Rを利用するなら再生互換性はほぼ問題にならない。

 そのうえで今回、EDiCube MVでLAN配信が新搭載されたことは、時流に即した着実な進化だといえる。TV機能搭載PCを手に入れたい場合、安価にすませたいなら、手持ちのPCや新たに自作したPCにTVチューナカードを追加するか、あるいは、大手メーカー製のTV機能搭載PC製品を導入する手もある。しかし、EDiCube MVはその中間ともいえる選択肢を提供してくれる。PCに対してデザイン至上というスタンスの購入層には向かないが、自作PCでありがちなハードウェア相性の問題や、ソフトウェア環境/統一インタフェースの構築といった手間を回避しつつ、コストパフォーマンスに優れたTV/ビデオサーバーPCがほしいなら、EDiCube MVの購入を検討する価値は十分にある。

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[浅井研二, ITmedia ]

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