ファイルメーカーPro ユーザーの現場を探る
第7回 個人用として始めたデータベースが、輸入卸売り業務の基幹システムに成長した「ワッツ インターナショナル」(1/3)
しばらくお休みをいただいていた、「ファイルメーカーProユーザーの現場を探る」を再開します。第7回目となるこの連載の次なる訪問先は輸入卸売りを行う会社、ワッツ インターナショナルで、ファイルメーカーProで構築された同社の基幹システムを紹介します。
前回で第1クール(全6回)が終了した、「ファイルメーカーProユーザーの現場を探る」ですが、わずか6回でファイルメーカーの猛者たちが尽きるはずもなく、その続編をここに開始いたします。その再開第1回目、通算7回目となる今回では、株式会社ワッツ インターナショナルで利用されている、ファイルメーカーProを使った基幹システムを紹介します。
ワッツ インターナショナルは、1960年に設立された、生活雑貨、インテリア用品、キッチン用品などの輸入卸売りを行う会社で、海外から商品を輸入して、国内の小売店、卸売り業者に販売しています。横浜中華街など4カ所には直営店舗も営業しています。同社では、商品の受注、在庫管理、顧客の応対、伝票処理など、ほとんどの業務でファイルメーカーProを活用しており、全員が常時、ファイルメーカーProを立ち上げて業務を行っているのです。
個人用として始めたファイルメーカーPro
今回の取材でお話を伺ったのは、ワッツ インターナショナルの業務管理部 部長の村田清隆氏。実は、ワッツ インターナショナルのシステムは、すべて村田部長が構築したものなのです。村田部長がワッツに入社したのは、5年前。ファイルメーカーProを導入したのも同時期だそうで、村田部長とともに、同社でのファイルメーカーProの利用は始まったわけです。
では、なぜファイルメーカーProを使うようになったのか、聞いてみました。
「まず、自分の仕事を便利にしたかったんです。それまでは、輸入にまつわる書類の流れ、コスト計算を手作業でやっていました。でも、紙の書類だとあっちこっちにいったりして、電卓で合計を間違えたり、いやだと思っていました」
入社まではMacユーザーで(その後、Windowsユーザーに)、クラリスワークス(ファイルメーカー社の前身であるクラリスが開発・販売していた統合ソフト)を使っており、ファイルメーカーProが使いやすいデータベースだという認識はもっていたそうです。
村田氏がデータベースソフトを使いたいと思った理由は、それまで使っていたExcelの限界(というよりは、表計算ソフトの限界)にあります。「Excelは使っており、表計算の便利さは実感していました。しかし、ピボット計算をすると、難しくなってしまうこと、データを追加していくと、縦に、横にと広がっていってしまうのが、仕事には適していませんでした。そこで、手軽にできるデータベースで、懐が深いものがないかと探していたんです。結局、ファイルメーカーProか、Accessかということになりました」と村田氏は説明します。いきなりファイルメーカーProを選んだわけではなかったのです。
では、そこで選択するために村田さんはどうしたのでしょうか? 両方とも購入? いや、購入したことはしたのですが、買ったのはソフトではなく、解説書、いわゆる「マニュアル本」です。ファイルメーカーProとAccessの両方の代表的な解説書を購入し、一通り読んでみた結果、「Accessは概念が分かりにくかったのです。その点、ファイルメーカーProは大きなフォルダにExcelファイルを取り込んだものという理解が可能で、概念が分かりやすかった」という理由でファイルメーカーProに決めたそうです。
「最初は半分、趣味でした。コンピュータが世の中で騒がれていて、恐怖感みたいのがありました。得意なソフトが一個ほしいと思っていたんです」と村田氏。「ファイルメーカーProは、使ってるうちに、いろんなことが結構見えてくるんですよね。こうできる、ああできる、と。サーバ機能を使って、ネットワークで簡単にデータベースを共有できるというのが、広がりをもたせる要因になりました。ファイルメーカーProは機能が豊富で、あるものを組み合わせていれば、やっているうちにどんどん見えてきます」と村田氏。モノにしたいという意欲と、見通しがきくソフトの組み合わせが、個人用に使っていたソフトが全社的に使われるきっかけになったとも言えます。
ワッツの取り扱い商品に囲まれる村田清隆氏
では、村田氏が開発したシステムがどのように育ってきたかをみてみましょう。
個人用に使っていたソフトが全社利用のソフトに
入社当時、村田氏が担当していたのは、「輸入担当兼営業担当兼その他もろもろ」(村田氏)でした。当時のワッツ インターナショナルには、コンピュータといっても、伝票を印刷するためのものしかなく、そのほかの業務はすべて、紙でやっていたといいます。
「在庫管理も紙ベースでした。これでは効率が悪いなと思って、自分でやりはじめたんです」と村田氏。このころは、コンピュータは一般の社員には使われていなかったので、まず、できそうなものを作って、だんだんみんなに見せて広めていったのです。
[松尾公也, ITmedia
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