> コラム 2003年7月22日 09:54 AM 更新

デジタル写真時代の表現者#002
佐藤希以寿氏の現場(1/2)

佐藤氏は世界的に有名なある企業のポピュラーな商品群をデジタルカメラで複写し、データ化する重要な任務を請けている。今回は都内某所、佐藤氏の個人スタジオに押し掛けた

 クリエイティブな現場でデジタルソリューションを導入しているプロの職人を取材しレポートする「デジタル写真時代の表現者」。第2回目はフォトグラファーの佐藤希以寿氏をご紹介する。

 佐藤氏は世界的に有名なある企業のポピュラーな商品群をデジタルカメラで複写し、データ化する重要な任務を請けている。世界に数人、同じ任務を与えられたフォトグラファーが存在するが、日本人は佐藤氏ただひとりである。セキュリティー等の側面から企業名を明かせないのが残念でならない。

 今回は都内某所、佐藤氏の個人スタジオに押し掛けた。


スタジオで撮影中の佐藤希以寿氏。使用機材はリーフ・ボラーレ。天地1センチ程度のマスコット人形を17インチディスプレイに投影し撮影しているところ。ディスプレイで拡大表示できるため、肉眼で気づかないようなホコリやキズを視認できる。ディスプレイがファインダー代わりであり、シャッターレリーズはマウスとなる。被写体に背を向けて撮影するというのが面白い

デジタルをはじめた理由

 カメラマンの佐藤希以寿氏は1994年にデジタルカメラ、ジナーリーフDCBを導入。現在は、博物館所蔵の古文書をデジタル複写して画像データ化するプロジェクトに取り組むなど、文化的事業の領域にも携わる画像のスペシャリストだ。デジタルカメラ学習塾の創設メンバーでもある。

 月並みだが、佐藤氏にデジタルカメラのメリットを聞いた。

 「たとえばモデルを使った広告写真の海外ロケがあったとします。そこには、最終的に採用されるポスター用の1カットのために、多くの人的コスト、そして経済的コストがかかっています。シャッターを切るカメラマンは、その一瞬にすべての責任を背負っているわけです」

 つまり“やり直し”が利かない一発勝負。「露出が合ってなかった」とか「フィルムが感光していた」といった失敗は許されない、と?

 「その通りです。撮影が終了し、ロケの現地でスタッフたちと『打ち上げしよう!』という流れになったとしても、心の底から盛り上がることなどできません。なぜならまだフィルムを現像していないのですから」

 「しかしデジタルなら、自分の狙い通りのものが撮れているかどうかがその場で確認できます。しかもポラではなく本番に使用するリアルデータで。これは精神衛生上、たいへん素晴らしいことです。安心という価値が買えるのです」

 失敗していないかどうかを確認できることは保険につながる、というわけだ。しかし佐藤氏は決して銀塩を捨てたわけではなく、現在も使う機会は多いという。佐藤氏は、機材に対する強いこだわりを持っている。

 「現像所などに置かれているライトビュアーは、3台置かれていれば3台ともそれぞれ色が違います。ですからポジフィルムの仕事の場合には、色のチェックは自分のライトビュアーを使用しています。私のものは蛍光灯を時間で管理していて、寿命が来る前に一定のタイミングで交換してしまいます。同様に品質管理のために、フィルムは乳剤番号のそろっているロットでまとめ買いして、“自分の標準色”というものを決めています」

 モニタディスプレイは当然のことながら、カラーマネジメント済みだ。現在、佐藤氏の所有する機材の中でもっとも稼働率が高いのは、リーフ・ボラーレというデジタルバック。外付けのRGBフィルタで、RGBの各1版ずつ時間間隔を置いて撮影するマルチショットタイプで、単版式で見られるような疑色の心配がない。3露光による豊富なカラーチャンネルで静止被写体を高解像度撮影する(価格450万円)。佐藤氏はこれを5年前に導入した。ジナーカム(価格85万円)と組み合わせて使用している。


ジナーカムに装着したリーフ・ボラーレ。セットで約600万円ナリ。頑丈なカメラテーブルに据え置かれている。スキャナタイプのカメラは三脚では撮影時にブレてしまうので、頑丈なカメラテーブルが不可欠だ

 「リーフ・ボラーレは、これでもう3代目。10年前に初代(ジナーリーフDCB)を導入してから今日まで代を重ねて使い続けています。これまで機械的に大きなトラブルはありません。CCDセンサーに付着する汚れは、柔らかな布にアルコールを湿らせてやさしく拭き取ってメンテナンスをしています」

 キヤノンのデジタル一眼レフも使用する佐藤氏。DSLRのセンサー部のゴミ取りも、サービスセンターに預けたりせずに自らメンテナンスしているという。

 「ブロワーで吹き飛ばすだけですが(笑)。私にとって写真機材は商売道具ですから、手元から数日間離れてしまうと仕事に支障を来します。ですのでやむを得ない修理でない限り、他者の手に預けることはせず、自分でメンテナンスをすることにしています」

 94年のジナーリーフDCB(価格1,000万円)購入に先駆けること4年前。佐藤氏はMacを導入してスキャナによるデジタルデータ化、および画像補正の作業を始めていた。

[島津篤志(電塾会友), ITmedia ]

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