> コラム 2003年9月22日 09:26 PM 更新

デジタル写真時代の表現者 #003
デジキシン氏の現場(1/2)

ネット上で「動く写真集」を発信する有料会員サイト「digi+KISHIN」を展開するクリエーター、デジキシン氏。デジキシンとは、写真家・篠山紀信と同一人物でありながら、別の人格で作品を創造するデジタルクリエーターである。同氏の活動内容を探るべく、赤坂のスタジオへ押しかけた。

篠山紀信+デジタルカメラ=デジキシン

 スタジオへ快く迎え入れてくれた新進クリエーターは、まさしくあの超高名な写真家・篠山紀信と同一人物だった。しかし、その応対ぶりはじつに積極的かつ情熱的で、巨匠然とした態度など微塵も見受けられない。


 「当初デジタルカメラのことは何もわからなかったんですが、世間で流行っているし、やっぱり気になる。モノは試し、ということで手に取ってみたんですよ。そしたらこれが面白いのなんのって。写真が動いているんだからねえ」

 “動く写真”とはもちろんデジタルカメラに搭載されたムービー機能のことで、デジキシン氏独特の表現方法のようだ。氏のデジタルカメラとの出合いは3年前。ソニーのサイバーショットを手にして、予想外の好意を抱いてしまったということだ。

 「それまでは、動きのある映像を撮影することにはまったく興味がなかった。あれはやたらと現場のスタッフが多いでしょう? 時間もかかるし金もかかる。何だか無駄が多いじゃないですか」

 「そこへいくと写真は瞬発力。その一瞬に集中できるのが僕のスタイルに合っているんです。映像は集中力の置きどころが分からない。ところがデジタルカメラのムービーなら、写真機と同様に使えることに気づいたんです。写真を撮るのと同じ生理感覚で動く絵が撮れるのは、楽しいとしか言いようがない」

 デジタルを礼賛するデジキシン氏。35ミリの仕事では、もはや8割以上がデジタル撮影になっているという。クライアントから特に「フィルムで撮ってくれ」といった要望がない限り、自主的にフィルムを使うことはなくなってしまったそうだ。

 「とにかくデジタルカメラは光の拾い方がうまいですよ。昼間は強いコントラストをバランスよく写し込む。夜は暗闇の中で街灯の明かりをきれいにくっきりと浮かび上がらせる。水中撮影をしたって、光の反射を上手にとらえますからね。もう感動的なまでによくできている……」

 デジキシン氏の感動が、動く写真集サイト「digi+KISHIN」のプロジェクトに結実していくまでに時間はかからなかった。プロジェクトパートナーとして小学館と手を組み、ブロードバンド時代を見据えた高画質のデジタルコンテンツとしてスタートした同サイトは、瞬く間に各方面で話題となった。



静止画と動画が織りなす新感覚の写真集サイト「digi+KISHIN」のカットから。静と動がシームレスに、違和感を感じさせずに断続し、見る者を引き込んでゆく不思議な世界観を持っている

 オール撮りおろしがウリのdigi+KISHINは2年目を迎え、出演女優とモデルは53名を数えるまでになった(2003年9月現在)。さらに毎週金曜日、新作が更新されて増え続けるのである。採算を取るところまでにはまだ到達していないが、会員の増加は順調な推移を見せているという。

 「2001年の12月から始めたサイトですが、とにかく勢いで撮りまくってます(笑)。勢いで撮れるのもデジタルのいいところですね。ライカでフィルム交換している間に200枚くらい撮れちゃいますから(笑)。僕の場合、撮影はいつもスポーツ写真を撮る感覚なんですよ」

 現在digi+KISHINで愛用しているのは、キヤノンのEOS 1DとソニーのHandyCam。1Dは瞬発力を求めるのにこれ以上のものはないし、HandyCamは手持ちで取り扱うのに最適なサイズだという。

[島津篤志(電塾会友), ITmedia ]

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