Big Pipe:再びブロードバンドアクセス回線市場を予測してみました

【国内記事】 2001年10月30日更新

 連載第6回で,2001年3月時点のブロードバンドアクセス回線予測を公開したが,その後「今,予測したらどう変わるのか?」という問合せを多くいただいたため,再度世帯数予測を行ってみた。その結果が下に示したグラフである。

 旧版とは数値が大きく異なる。これは,2001年3月以降に多くの要因変化があり,条件設定が変わってきたからだ。では,その要因の変化(言い訳)を事業別に見てみよう。

旧版と新版の予測値を見る

スピードに対する“飢え”

 全体として,ブロードバンドアクセス回線加入者世帯数の予測値は上乗せされた。旧版では,2005年時点で1370万世帯としていたが,改訂版では1750万世帯と,380万世帯も増える予測になる。普及率も,旧予測の28.3%から36.4%に変わっている。

 これはISDNユーザーが減少し,その代わりにブロードバンドユーザーが増加するためだ。ユーザーのスピードに対する“飢え”を甘く見ていたことも大きい。旧版の段階では1000万を超えるISDNユーザーは,「加入したばかりで,ADSLにシフトする人は少ないのではないか」とみていた。だが実際は,会社や学校で専用線を利用しているユーザーたちは,家庭におけるISDNや56Kbpsモデムのスピードに不満を持っていたのである。結果として,その不満(スピードに対する飢え)が移行コストの負担を上回った。

 もう1つは,定額料金制度である。メールやチャットにしても,従量課金に比べて定額料金制で,しかも早く送受信できるほうが望ましい。また,同じ定額料金制度でも「フレッツ・ISDN」と「フレッツ・ADSL」の価格差が小さくなり,エリアもあまり差がなくなったことが大きいだろう。依然として地方ではADSLサービスを受けられない地域も多いが,都市部ではADSLの加入可能エリアが急速に拡大しており,ユ―ザーは「フレッツ・ISDN」ではなく,ADSLを選択するようになる。これはNTTの判断でもあるが,そのように導いたのは競合のYahoo! BBであった。

ADSL加入者予測値が増えた訳

 なによりも,ヤフーのADSL事業参入と価格の影響が大きい。その結果,ほかのADSL事業者も価格競争を進め,ISDNからADSLへのシフトが進んだ。当初,NTT地域会社としてはISDNの投資分回収を優先していたが,市場競争環境の急速な変化に伴い,フレッツ・ADSLの値下げに踏み切るしか術がなかった。その結果,フレッツ・ISDNとフレッツ・ADSLの価格差が縮まり,ISDNからADSLへのシフトが早まった。

 だが,将来のブロードバンドコンテンツを考えればADSLは速度は中途半端であり,自宅がNTT収容局から離れていると速度が遅くなるといったことが不満点として出ている。こうした不満が増えてくると,加入世帯数の成長スピードは鈍化するだろう。

CATVは不利とみる理由

 CATVは,ADSLに比較して標準的な回線速度が下り512Kbpsという遅さ,また株式公開を狙うADSL事業者に比べて脆弱なCATV事業者の資金力,全国展開を進めるADSLに比べてエリア展開の遅れなど,競争劣位がさらに際立っている。このため,2001年中は加入者数でADSLに先行するものの,それ以降は市場を奪われるだろう。それでもしばらくはCATV視聴者が複合サービスとしてインターネット接続サービスに加入するだろうが,中長期的には無線LANFTTHでの放送サービスが比重を増し,市場の伸びは縮小していくものと思われる。

無線LANとFTTHの拡大

 ADSLが注目されるに伴い,無線LANやFTTHの事業者も価格戦略とエリア戦略を進める。特に,き線点までの光ファイバーが敷かれていく中で,今後ダークファイバーを利用し,NTT東西地域会社や電力系,有線ブロードネットワークス以外のFTTH事業者も現れてくるだろう。NTTも最後の砦であるFTTH事業は死守しなければならず,リーダーとしての品質維持と低価格化,さらにブランド力を持ってシェア確保に乗り出すことになる。

 FTTC+無線LANというサービス形態も考えられる。マンションに関しては,FTTHや無線LANを構築するケースが増加するだろう。無線LANに関しては,将来的に周波数帯のオークションが行われ,無線LANが利用できる周波数帯が増えると予測される。このような規制緩和政策も無線LAN事業を推進するだろう。さらにMMACといわれている高速無線LANサービスも実現し,無線LANアクセス市場は大きく伸びてくるものと思われる。

[根本昌彦,ITmedia]

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