TTC標準、焦点の「PSDマスク」NTTが接続約款の変更を打ち出したことで、TTC標準に関連した一連の議論がますます熱を帯びることになる。争点となるのは「PSDマスク」だ
NTT東西地域会社は、TTCが制定した「スペクトル管理標準(TTC標準JJ-100.01)」に沿って、DSL回線の収容ルールを整備すると発表した(別記事参照)。約款変更が実施されれば、TTCから「第2グループ」に分類された伝送方式は収容条件で制約を受けるほか、接続料金が値上げとなる。TTC標準に関連した議論のゆくえが、ますます注目されるところ(これまでの経緯)。 TTC標準に対しては、ビー・ビー・テクノロジー(BBT)が「大幅な変更、もしくは廃止」を求めるほどの不満感を表明しており、第2版の策定も一時棚上げになっている状態。争点の1つになっているのが、「PSDマスク」だ。
議論を理解する上で、まず把握しておくべきなのが、昨年11月27日に策定されたTTC標準、第一版の内容。分類の中で“NTTが保有するケーブル内の収容に、特段の条件を設けない”とされる「第1グループ」に分類されたのは、以下のとおりだった(TTC標準 7.2.より抜粋)。
G.992.1 Annex C[FBM] G.992.2 Annex A G.992.2 Annex C[DBM] G.992.2 Annex C[FBM] これを見ると、第1グループとして「G.992.1 Annex A」が含まれていることに気付く。BBTが提供する12Mbps ADSLサービス(通称「Annex A.ex」)は、Annex Aに準拠するとされているもの。このため、Annex A.exもまた、標準グループに分類されるようにも思える。 しかし2002年7月31日、イー・アクセスが「システムの分類および再定義について」と題する提案を行った際、BBTのAnnex A.exは第2グループとして分類されていた。 背景には、TTC標準で「Annex A」として扱われている規格が、実はITU-Tが勧告して国際標準となっているG.992.1 Annex Aとは別物だったという事情がある。
両者の違いは、漏話干渉を防ぐため、特定周波数帯域における送信信号の電力制限を規定する「PSD(電力スペクトル密度)マスク」を見れば明らか(グラフ参照)。上のグラフがITU-TのAnnex Aで規定されるPSDマスク、下がTTC標準で規定されているPSDマスクだ。
(注:グラフはTTC標準 6.2.2.より抜粋したもの) 2つのPSDマスクを見比べると、4KHz〜138KHzにかけての帯域で、TTC標準の方がより送信電力の制限が厳しいことが分かる。この付近は、ADSLサービスにおいて主に上り信号を搬送するために使われている周波数帯だ。 BBTの提供するAnnex A.exは、“上りの帯域に下りを使うデータを多重する”技術であると説明されている。このため、なんらかのかたちでAnnex A.exが、ITU-T Annex Aの規定するPSDマスクの制限内に収まりながら、TTC標準の制限内には収まらなかったと推察できる。 もちろん、“Annex A”と名づけられた規格が、国際的に“Annex A”と呼ばれる規格と異なる――という事態が、正しいといえるかどうかは議論の残るところ。東京工業大学の情報理工学研究科講師、太田昌孝理学博士は、BBTが動議に添付した資料の中で、この問題を指摘している。 「標準化文書において、他の規格を参照した場合、参照された規格の内容に変更を加えることはできず、間違って行った場合も、参照された規格の規定が優先する」(太田氏)。 同氏はこれを、G.992.1 Annex Aの意味をわい曲していると表現する。「このようなわい曲は、標準化文書として致命的な欠陥」(同)。なお、9月30日に公開されたTTC議事録によると、この問題に関する直接の議論はまだ行われていないもよう(記事参照)。 関連記事 自己申告? DSL回線の収容ルール BBT、“TTCへの動議は理解された” 「TTC標準には致命的な欠陥がある」──BBTが動議を提出 ソフトバンク、「イー・アクセスへの訴訟を準備中」 イー・アクセス、「BBTの主張には正当な根拠がない」 関連リンク 情報通信技術委員会(TTC) ビー・ビー・テクノロジー [杉浦正武, ITmedia] Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. モバイルショップ
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