連載 2002年12月13日 08:03 PM 更新

Streaming Now!〜流れをつかめ!
FOMAのiモーションメールは発信して遊ぼう!(2/2)


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 まず、PCと携帯とで動画メールのやりとりができるということ。さらには、携帯から発信されたコンテンツのポータルサイトのようなものができる可能性もある。もう一つは、コンテンツ制作者から見れば、QuickTimeベースのアプリケーションが自動的にFOMA用コンテンツ制作ツールになり得るということ。「Final Cut Pro」や「Adobe Premiere」などが、そのままFOMA用の編集環境になり、誰かが送ったムービーを素早く加工してMPEG-4に書き出して返送するといったことも可能になりそうだ。そういう面では、QuickTimeがベースになると便利になるといえる。

 よく「Real、Windows Media、QuickTimeのストリーミング3大技術」という言い方をされるが(そして私も言うが)、その本質は実は随分と違う。私に言わせれば、RealとWindows Mediaは「ストリーミング配信を目的としたシステム」で、QuickTimeは「コンテンツ制作を中心に考えたエンジン」なのである。本質的な部分ではQuickTimeは競合技術ではないのだ。

 いずれにしてもポイントは「受信」ではないと思う。携帯の機動力を活かした「発信」なのである。

 これがビジネスにどう結びつくか? うーむ。そう考えると面白くないのである。例えば、キャバクラのおねえちゃんが、「今日、来てくんなきゃイヤーン」とスネた顔で一言言うビデオを発信すれば、それはそれで立派なビジネスになる(笑)。とりあえずは、そうやって面白がって発信していればよいのではないだろうか?

「面白がって発信する」のがストリーミングの極意?

─macwebcastere.comの場合─

 「面白がって発信してみれば?」

 これは最近、私がストリーミング業界の人達に対して(特にPCを対象としている人達に対して)強く思うことでもある。

 ストリーミングが登場した時、私がまず思ったのは、「オオ、世の中で何かを発信したくてうずうずしてる人達が立ち上がれるようになったな」ということであった。私はこの技術を「インターネット的なもの」──個人がホームページを作成するという発信系の延長線上にあるもの──だととらえていたのだ。

 が、今やコンシューマー向けストリーミングのほとんどが「テレビ的なもの」──受身で流れてくるものを楽しむためのもの(しかもマスが対象)──である。あとは株主総会中継など、「ビジネスでございます」という感じのものばかりで、その上、集まる人達は「そこでビジネスができないか」ということばかり話していて、ウンザリしかけている。

 だが、そんな中でも「面白いことがあったら自分達でストリーミングしちゃえ」という人達がいるのである。macwebcaster.comの人達だ。ここの人達は、QuickTimeを駆使して、面白いことがあればストリーミングしてしまう。例えば……。

 メンバーの一人、久城氏が、「友人がマカオのバイクレースに出るので中継する」と声をかけた。すると、メンバーが「よし、協力する!」といって4人がサーバ提供を申し出る。そして久城氏は回線の状況も確かめずにマカオに出かけ、偶然、チームが会場に導入した回線をいただき、そこにAirMacで無線LANを構築、PowerBookとDVカメラでサーバ提供者の一人めがけてストリーミング中継した。そのストリームは4人の有志の間でバケツリレーされ、とりあえずかなりの数のストリームを捌けたという仕組みである。

 彼等はまた、Macworld Expoにおいて同じ手法で同時通訳を手掛けてしまう。通訳を行う村田氏がストリーミング中継を見ながらすかさず同時通訳し、それをバケツリレー……。その手法でなんと4000人もの同時接続を捌いてしまったのだ。

「発信者の集まりから受信者へ」という流れ

 驚いただろうか? 確かに、敷居の高いストリーミングという技術を非営利で楽しんでしまうということはスゴいことである。こうやって楽しんで配信している人にはかなわない、というのがインターネットの世界である。よく考えてみると、数年前、みんなが自分のWebページを持ちたがっていた時期というのもこんな感じだったのではないだろうか? そして、情報を発信したい人、面白いことをしたい人が様々な情報を載せるようになり、それを見たい人が徐々に集まるようになり、さらにコンテンツが充実し、しまいにはeコマースなんていうものができるようになった。

 ところが、最近は対象がストリーミングとなると、いきなりeコマースで金儲けをしようという話しか出て来ない。文化が浸透していないのにいきなりお金をとるというのには、ちょいと無理がないだろうか? それに、まだ「PC向けのコンテンツはこうあるべき」という形が十分に示されてもいない。ただテレビのものを引っ張ってきても、良さは出てこないって。

 テレビであろうが映画であろうが本であろうが、伝える側に「伝えたい」という気持ちがなければ根本的にウケないなのだ。そこを抜きにしては良いコンテンツなんて出てこない。私はみうらじゅんさんの「仮性フォーク」(収録スタジオ潜入記参照)は良いコンテンツだと思っているが、あれは本人が自作した楽曲を「伝えたくてしょうがなかった」というものである。本人も、「インターネットなんて面白いもの、昔からあったら絶対やってた」と語っていた(それまでは、家に来る人に曲をムリヤリ聞かせていたらしい……)。

もう「ストリーミング」って騒がないほうがいいかも……

 「じゃあ、それでどうやってビジネスするの?ビジネスは成り立たないの?」って? うむ。私も実は、インターネットでコンテンツ販売がそう簡単にうまくいくとは思っていない。だが、いいコンテンツを提供する人がいて、それを見たい人、それを支援したい人がいれば、そこで何かが成立するハズだ。

 例えば、発信者や視聴者を支援するためにCMなどのテレビ的な仕組みを導入するというのは、いい試みだと思う。ストリーミング広告配信サービス「Pasata」(記事参照)などはおそらく、こうした発想でCMを挿入しているのではないかと思う。

 もう少し、最近思っていることを言わせていただこう。先日、Streaming Media AsiaにおいてDV JAPANの石川編集長との対談でも話したのだが、「ストリーミング」というキーワードの設定が間違っているような気がして仕方がない。そもそも、伝達のための一つの方式の話でしかないのに、それをキーワードに儲かるんじゃないかと人が集まってきてしまうということ自体、普通に考えるとヘンな話だ。

 せめて、「eラーニング」「eコマース」「コンテンツマネージメント」「オンラインコミュニケーション」「インターネット放送」といったように、もう少し目的別のキーワードを設定した上で、「その中で動画をどう活用しましょうか?」と、それぞれの分野であるべきストリーミングの姿を考えるべきではないだろうか? そう考えれば、もう少し発信側、受信側の姿が浮き彫りになってくるハズなのだ。

 ……ということで、そろそろ、一旦、この「ストリーミング」という流行り言葉を封印してしまったほうが、ストリーミングのためになるかもしれないなどと考えている、一ストリーミング系ライターの私であった。



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[姉歯康, ITmedia]

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