リビング+:連載 2003/02/03 19:40:00 更新

連載:enjoy@broadband.home.net
MTVシリーズ用ホームAVネットワークソフト「HomeEdge」の実力は?

TVチューナーカードの人気ブランド、カノープス「MTVシリーズ」向けのホームAVネットワークソフト「HomeEdge」が3月上旬に発売される。MTV/MTUシリーズを搭載したPCをAVサーバにして、テレビチューナーカードを持たないPCでTV放送を見たり、MPEG2やMP3などのメディアファイルを共有できるというものだ。さっそく、RC版を試用してみた

 今やPC用TVチューナーカードの一大ブランドとして人気のカノープス「MTVシリーズ」。そのMTVシリーズを、ホームネットワークの中で活用しようというコンセプトで生まれたのが、同社が発売したソフトウェア「HomeEdge」である。

 HomeEdgeを使えば、MTV/MTUシリーズを搭載したPCをAVサーバに仕立て、テレビチューナーカードを持たないPCでTV放送を見たり、MPEG2ビデオ、MP3ファイルといったメディアファイルを共有することができる。昨年末からα版を公開していたが、3月7日からパッケージ製品として発売される予定だ。価格は1万6800円。

 今回は、HomeEdge RC版を用いて、その機能や使い勝手、可能性や問題点などについて掘り下げてみることにしたい。

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 HomeEdgeの利用イメージ。MTV/MTUシリーズを登載したPCを中心にホームネットワークを構築できる

メディアディレクトリとメディア配信のためのサーバ

 HomeEdgeは、大きく分けると3つの機能から構成されている。1つはネットワーク経由でメディアデータを再生するプレーヤーとしての機能。残りはサーバとしての機能だ。そしてサーバ機能は、メディアデータにアクセスするための“ディレクトリサービス”を提供する部分と、メディアデータをクライアント側に送出する“ストリームサービス”の部分に分けられる。

 ディレクトリサービスは、メディアファイルの所在を通知するサービス(HomeEdge内ではMenu Serviceと呼ばれている)で、プレーヤーの要求に従い、メディアデータの情報を階層化されたリストとして引き渡す。ディレクトリの構成はHomeEdge Explorerと呼ばれるツールを使い、ディスク上のフォルダと同じようにメディアファイルを配置するだけだ。

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 メディアデータのディレクトリサービスを提供する「Menu Service」の設定画面

 この際、HomeEdge Explorerで配置されるのは、論理的なディレクトリ構成のみで実際にファイルが収められている場所は変更されない。ユーザーは自分が分かりやすいように、あるいは都合の良いようにフォルダにメディアデータを並べていけばいい。同じメディアデータを異なる2つのフォルダに配置しておくことも可能だ。

 また、メディアデータの増減を監視するフォルダを指定しておくことができる。録画したビデオファイルが置かれるデフォルト位置を指定しておけば、録画するごとに自動的にディレクトリへと登録されることになる。

 ただし、残念なことに既存のビデオ録画情報ファイルやID3タグなどから、ビデオや音楽を自動的に分類するといった、現在の環境を移行させるためのツールは用意されていない。大量のメディアを持っているユーザーは、初期導入時に、ある程度の手間がかかることを覚悟した方がいいだろう(ビデオだけならば手間はほとんどないが、音楽データとなると量が膨大になる可能性がある)。なおHomeEdge Explorerで登録可能な音楽データはMP3のみで、WMAなどには対応していない。

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 Streaming Serverの設定画面では配信ビットレートなどを選択(クリックで拡大)

 一方、ストリームサーバ部分は、ビットレートの管理機能と生のTV放送をリアルタイムに配信する機能で構成されている。ビットレートはライブ配信(生のTV放送中継)とファイル配信で異なり、設定が「基本スペック」の時はライブ配信が3MbpsのMPEG2、ファイル配信が4Mbpsまでは無変換で録画ファイルをそのまま送出、それ以上の場合は3Mbpsに再エンコードされる仕様だ。

 これが「フルスペック」の設定では、ライブ配信時4Mbps、ファイル配信時は無変換で送出。「最小スペック」に設定する、とライブ配信はMPEG1の1Mbpsまで落とされる。ファイル配信時の最大ビットレートも2Mbpsとなり、それ以上はMPEG1に変換される。

 ライブ配信は一種のメディアディレクトリのように見え、プレーヤー側はメディアデータを選択するのと同じようにチャンネルを指定。すると、そのチャンネルの映像が配信される。

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 MTV/MTUシリーズのTVチューナーから取り込んだ映像をリアルタイムに配信できる

 これらサーバ類の設定は非常に簡単だ。HomeEdge管理ツールを用いて、監視フォルダやビットレートの設定などを行うだけ。チャンネル名はMTV/MTUシリーズのソフトウェアから取得できるため「このチャンネルはどの局」といった具合に局名編集を行う必要もない。

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 フォルダ形式でメディアデータを分類、登録する。サムネイル画面を登録することも可能

プレーヤーを起動してみると

 同じように、プレーヤー側も設定は基本的に不要。同一のLANに接続されたHomeEdgeサーバは自動的に発見され、それぞれのサーバに登録されているメディアデータやTVチャンネルを設定なしに見通すことができる。

 再生ボタンを押してから再生されるまでの遅延時間はネットワークの速度次第だが、有線LANならばほとんど気にならず、IEEE802.11a無線LANでもあまり意識しない程度に収まる。さすがにIEEE802.11b無線LANではバッファ時間が長くなるが、そもそも802.11bではMPEG1モードでも再生が不安定になる場合があり“とりあえず使える”程度に考えておくのがいいかもしれない。

 操作はシンプルで、ディレクトリサーバからの情報をコンテンツウインドウに表示し再生を指示するだけ。オプションには再生時のプログレッシブ処理に関するものがあり、I-P変換をソフトウェアで行うことができるが、そのほかは再生に関わる特殊な機能がほとんどない。

 たとえば複数の音楽ファイルを続けて演奏したい場合、同じディレクトリ分類のファイルをすべて再生するといった機能はなく、あらかじめプレイリストをHomeEdge Explorerで作成しておく必要がある。またプレイリストはサーバ側で管理・共有することができないため、プレーヤーを動かすPCでプレイリストを作成・管理しなければならない。プレイリストはプレーヤー単体で作成できない(HomeEdge Explorerのみがプレイリストの作成を行える)という問題もある。

 またコンテンツライブラリのウインドウには、メディアデータのファイル名がタイトルとして表示されるだけ。MTV/MTUシリーズで録画したMPEG2ファイルの名前は、自動的に番組名が使われるため判別できるが、MP3ファイルの名前をシンプルなものにしてフォルダ名で分類・管理している場合は、HomeEdge Playerのコンテンツウインドウで曲名を判別できないこともあるだろう。なお、番組情報やID3タグなどに対応していないわけではなく、メディアデータのプロパティとしてそれらの情報を見ることはできる。

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 コンテンツウインドウにはHomeEdge Explorerで編集したディレクトリ情報が表示されるが、プレイリストは別途ローカルファイルとして作成、読み込んで使用する必要がある

まだまだ改良される? 3月の製品版に期待

 少々期待しすぎだったのかもしれないが、ライバルと目されるNECの「SmartVision」がソフトウェアのバージョンアップでAVサーバとしての機能を大幅に強化したのと比べると、HomeEdgeはまだまだ熟成不足を感じる。

 たとえば、メディアの再生品質設定はサーバ側で行うため、クライアント側からその時点でのネットワーク状況に合わせて選択できない。無線LANで再生したいからとビットレートを低くしてしまうと、高速なネットワークで接続できる別のPCでも低いビットレートを利用せざるを得なくなるのだ。しかもその設定はクライアント側から変更することができない。

 解決策としてはサーバは高ビットレートに設定しておき、プレーヤーのオプション設定で「最小スペックで配信させる」を選ぶ方法がある。が、ビットレートをもっと簡単にオンデマンドで変更できた方が使いやすいことは自明だ。最小スペックでの配信時は、画質が大きく落ちてしまうため中間の設定も必要だと思う。

 またロービットレート時のエンコードフォーマットにMPEG1が用いられるため、画質が悪いという問題もある。どうせビットレート変換をソフトウェアで行っているのなら、MPEG4を使って欲しかった。MPEG4ならば、IEEE802.11b環境でもHomeEdgeのビデオコンテンツを楽しめたはず。いずれも「SmartVision 2.0ソフトウェア」では問題なく使える機能だ(ただしSmartVision 2.0ソフトウェアは音楽ファイルの配信をサポートしていない)。

 再生制御にしても、早送り/巻き戻し時のサーチ機能や、VAIO Mediaにあるような、サムネイル形式でフィルムロールを見せて頭出しを行う機能はない。プレイリストのサーバ上での共有や、全共有メディアをタイトルやジャンル、ビットレート、アーティスト名(あるいは出演者名)、アルバム名などの属性で自動分類する機能も欲しいところ。ビデオだけでなくPC上で管理する音楽ファイルをすべて束ねようとするなら、どのサーバにメディアが存在するのかを意識しない操作性の方が望ましい。ビデオファイルよりも、あちこちに分散して置かれてしまっていることが多いからだ。

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 HomeEdge Playerの画面。機能は非常にシンプルでトリックプレイなど細かな再生制御は行えない

 動作環境も、少々プロセッサへの要求が厳しい。HomeEdgeサーバでビットレートを変換しながらビデオ配信するためには、サーバ側にPentium 4/2GHz以上のプロセッサパワーが必要になる。またプレーヤー側も意外にプロセッサパワーをくう。4MbpsのMPEG2映像の場合、866MHzのモバイルPentium III-M搭載機ではプロセッサ利用率が100%で張り付き、頻繁にコマ落ちが発生した。MPEG1ならばコマ落ちは発生しないが、できれば1GHzクラスのプロセッサで利用することを勧めたい。

 とはいえ、ベストセラーのMTV/MTUシリーズ使ってAVサーバを構築できる点は、既存ユーザーにとっては魅力だ。現時点でTV/ビデオサーバとしてはSmartVisionの方が機能的にも使い勝手の点でもこなれており、アドバンテージはMP3共有のみ。そのMP3共有もプレイリスト管理や曲の分類・検索が不得手なため、大量の曲データを管理するには不向き。まだ未完成の面が大きいともいえるが、すでにMTV/MTUシリーズを使っているならば、ソフトウェアのアドオンで機能強化が行えるHomeEdgeを導入してみるのもいいだろう。

 今後はこのコンセプトを発展させ、ネットワークAV機器との接続も視野に入れた開発を望みたい。使用のフィールドがネットワークを通じて他PCに、そして家電にまで広がっていけばMTV/MTUシリーズの魅力はさらに高まるはずだ。

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[本田雅一,ITmedia]



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