リビング+:特集 2003/09/11 10:12:00 更新

特集:何が違う? 1クラス上のブロードバンドルータ
ISDN TAを内蔵した高機能機、NetVolante「RT 57i」

ヤマハ製のルータは、安定性の高さや機能の豊富さ、ファームウェアのアップデートなどには定評がある。今回試用した「RT57i」も、これまでのヤマハ製ルータ同様に“堅い”出来だ。ただ、一方でネットワーク機器の扱いに慣れていないユーザーにはすべてを使いこなすのが難しい側面がある。

 ヤマハの「RT57i」は、今となっては珍しいISDNターミナルアダプタを統合したルータである。ISDNターミナルアダプタ用いたダイヤルアップルータ、高速デジタル回線用ルータとしても利用可能なうえ、イーサネット間のルーティングにも対応。VoIP機能も備えており、内蔵のISDNターミナルアダプタと連携させ、NTTの加入者電話とインターネット電話をシームレスに統合することができる。

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ISDNターミナルアダプタを統合した「RT57i」

 きょう体のデザインは非常にユニークで、イーサネットポートを下向きに配置し、専用スタンドで上げ底にし、その中にケーブルをまとめて通す形。ネットワークケーブルがすっきりと収まり、ケーブルの重みでバランスが悪くなることもない。なかなか合理的なデザインだ。なお、本機で利用されているプロセッサは、MIPSコアをベースにVoIP、IPSecアクセラレータを統合したもののようだが、動作クロック周波数などは公開されていない。

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イーサネットポートは下向き。ネットワークケーブルがすっきりと収まるデザインだ

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背面にイーサネットポートはない

 もちろんVPNにも対応しており、VPNサーバへの接続、VPNを用いたLAN間接続、VPNサーバと3種類の接続形態をサポートしている。なお、別途実施したVPNサーバのベンチマークでは、IPSecのテストにおいて「WebCaster 7000」よりも大幅に劣ったものの、実用性が低いというほどではない(テスト結果は特集の最後に掲載する予定)。

 また、VPNを利用しない場合のパフォーマンスは、動的パケットフィルタリングを含むセキュリティ機能をオンにした状態でも十分に高速(FTPによる実測値で60Mbpsを超える)であり、一般的なブロードバンド回線なら不足することはまずないと考えられる。

 ただし、ヤマハ製のルータは、安定性の高さや機能の豊富さ、ファームウェアのアップデートなどには定評があるものの、一方でネットワーク機器の扱いに慣れていないユーザーにはすべてを使いこなすのが難しい側面もある。

一部機能はコンソールからの設定が必要

 最近のブロードバンドルータらしく、RT57iは、Webベースのユーザーインタフェースを備え、会話形式での簡単な設定が行える。この点において、他の機種と大きく変わる部分はない。デフォルト設定でインターネットに接続するだけであれば、難しいことは何もない。

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詳細設定と情報の画面

 また、オンラインヘルプの充実も見逃せない。Webからの設定画面には、必ずヘルプボタンが用意されており、設定項目やボタンの意味の解説に簡単にアクセス可能だ。他のルータを一度でも使ったことがあるユーザーならば、マニュアルなしでオンラインヘルプを参照するだけでも、ある程度は使いこなすことができるだろう。

 しかし、部分的には説明不足の部分もある。たとえば今回の特集でひとつのテーマとして取り上げているVPN機能は、前述したように3つの接続形態をサポートし、最大で4つまでのVPNセッションを登録することが可能だ。設定そのものも複雑というわけではないが、ちょっと見ただけではどのモードを選べばいいのかわかりにくい。

 たとえば、本機をVPNサーバとして設定し、WindowsやMac OSからVPNクライアントで接続するといった場合、つまりVPNサーバを動かそうとする場合は「PPTPを利用したパスワード認証のリモートアクセスVPNサーバ(Anonymous)」を選ぶ必要がある。が、これとは別に「PPTPを利用したパスワード認証のリモートアクセスVPNサーバ(PP)」というモードも存在する。

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VPNサーバの設定画面

 パッと見には、Anonymousモードは(FTPのAnonymousから連想して)誰でもパスワードなしで繋げることが可能なモードに見えるが、任意のホットスポットなどからVPNクライアントで接続する場合、ユーザー名とパスワードを使う場合でもAnonymousモードに設定しなければならない。PPモードは、相手のIPアドレスやDNS名があらかじめ決まっている場合に使う機能である。

 上記は一例だが、技術的な説明は全く間違っていないが、一般的なパソコンユーザーが誤解しやすい書き方が多いように見受けられた。ヘルプの内容は十分に理解しやすいだけに少々もったいない。

 また、以前からヤマハ製のルータはNATの設定で、静的なフォワーディングを設定する場合にコマンドラインを書く必要がある。Webブラウザ向けのユーザーインタフェースからコマンドを入力するため、別途telnetでログオンする必要はないものの、コマンドラインユーザーインタフェースに慣れていないユーザーには、取っつきにくいかもしれない。

 その反面、設定の自由度は非常に高い。たとえばパケットフィルタリングやポートフォワードでは、通常、パケット種別があらかじめプリセットされたものに対してしか設定できない。たとえばTCP、UDP、GREなどをプルダウンメニューで選んで設定するのが一般的だ。しかし本機では、プロトコル番号を直接指定した設定が行える。Webブラウザから直接は行えないが、telnetからログオンしてコマンドを入力することで、一般的なコンシューマー向けルータとは一線を画す柔軟な設定が可能だ。

 telnetから利用できる設定コマンドのリファレンスも公開されており、また典型的な問題に対処する方法や、よくある設定に対するコマンド例をヤマハのWebサイトから参照できる。コマンドライン操作に抵抗がない人、あるいは将来的に、コマンドラインを駆使した設定を憶えたいと思っている積極的なユーザーにはうれしい。将来、何か特殊な設定を行いたいと考えることもあるだろう。そのための保険として捉えてもいいかもしれない。

 すぐに買い換えるつもりならば話は別だが、長く使い続けるつもりならば、Webインタフェースのみで対策のしようがない製品より、深みのある製品の方が良いという考え方もあるだろう。

堅さと機能で選びたい機種

 さて、VPNサーバ機能は速度がライバルよりも遅いと述べたが、これはあくまでもベンチマークにおいての結果でしかない。実際には128ビット暗号キーによる接続でも、FTP実測値で1Mbpsを大きく超えるスループットが出ている。ホットスポットやホテルの部屋などからアクセスすることを想定すると、1Mbps以下の実効速度しか出ないケースも少なくないことを考えれば、(ベンチマーク値にこだわりさえなければ)特に問題はないと感じる。

 試用中、ステートフルパケットインスペクションなどのセキュリティ機能をオン(Webからのセキュリティポリシーでデフォルトのまま)で利用していたが、パケット監視の機能が弊害を起こしてセッションが中断するといったトラブルは皆無だった。

 こうした機能は、単に機能が存在するかどうかよりも、実際の動作が実際の利用形態に即しているかの方が重要なものだが、本機は、これまでのヤマハ製ルータ同様に“堅い”出来である。ルータのOSカーネルやルーティングのソフトウェアは、同社製の企業向けルータと基本的に同一というだけあり、アクセス状況や負荷に依存しない安定感を感じる(ただし長期運用時の安定性については検証できていない)。

 また、ヤマハが設置しているダイナミックDNSサイトに登録すれば、無料でダイナミックDNSによる自宅へのアクセスも可能だ。有料サービスのみサポートする製品、無料サービスもサポートする製品などあるが、ヤマハ自身が運営しているサービスなら、ルータとの互換性面でも安心できる。

 ISDN機能のアナログポートに接続した電話機からインターネット電話を利用可能など、本機ならではの機能もあるが、ISDN機能やVoIP機能を考慮せず、ルータ部分だけの比較でも十分に高い競争力を持つ。ベンチマーク上の絶対スループットでナンバーワンというわけではないが、それを補って余りある堅実さが本機の魅力だろう。

製品名NetVolante「RT 57i」
インタフェースWAN側:100BASE-TX×1、LAN側:100BASE-TX×4、アナログ電話ポート×2、U点インタフェース、S/T点インタフェース、シリアル
PPPoE関連機能PPPoEクライアント(同時2セッション)、
ルーティング関連機能RIP/RIP2、RIPng、NAT/IPマスカレード、静的NAT、静的IPマスカレード
セキュリティ関連機能動的フィルタリング、不正アクセス検知機能、VPN(PPTPサーバ/クライアント/パススルー、RC4暗号化、IPSecパススルー)、DMZホスト
そのほかVoIP機能(SIP)、IPv6対応
価格オープン
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関連リンク
▼ヤマハ
▼ニュースリリース

[本田雅一,ITmedia]



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