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2003/11/07 23:59:00 更新 |
レビュー:ワイヤレスブースター「GW-BST01」
980円で無線LANを強化できるか?
LAN機器ベンダーであるプラネックス・コミュニケーションズから“ワイヤレスブースター”「GW-BST01」が発売された。電波を反射するプレートを使い、無線LANのパフォーマンスを向上させるという極めて簡単な構造のこのツール、はたしてどの程度効果があるのだろうか?
プラネックス・コミュニケーションズが発売した「GW-BST01」は、“ワイヤレスブースター”と呼ばれる製品だ。構造は極めて単純で、電波を反射するプレートを90度に配置し、電波を集約したり、逆に電波の拡散を防ぐというもの。対応するのは2.4GHz帯、つまり802.11b/gの無線LAN機器となっている。折り畳むと手帳サイズに収まり、携帯することもできる。値段も980円(参考価格)と極めてリーズナブルだ。
これが「GW-BST01」。パッケージに収められているように、折り畳むと非常にコンパクト。組み立てると2枚のプレートが90度に位置するようになっており、このアングルでは見えないが、手前の部分の上側にはポール状のアンテナを通せるホルダー部分がある
ブースターの名を冠してはいるが、実際には電気的に電波を増幅するわけではない。しかし、LAN機器ベンダーが自社ブランドで販売する以上、一定の効果が確認できているはずだ。では効果はいかほどのものだろうか。
まずは編集部にあるIEEE 802.11bのアクセスポイントに取り付けてみた。指向性を持たせることで無線LANの届く距離を延長する使い方だ。PCは壁越しの廊下に設置したが、ここは電波状況としては中程度で、接続自体は安定している位置だ。
上から本製品の取り付け前〜取り付け後の受信強度の推移。2番目の図のちょうど中央あたりが本製品をアクセスポイントに取り付けたタイミングになる。はっきりと受信強度が向上し、その後も継続している
結果はグラフの通りで、取り付け前は受信強度が20db前後を推移していたのが、30db前後まで向上した。変動幅も特に大きく変化しておらず、確実に受信状態は改善しているといえるだろう。
次はさらに離れて、普段なら無線LANの接続/切断を繰り返してしまう状態の会議室で利用してみた。
上が取り付け前、下が取り付け後。受信強度がはっきり向上しているのが分かる
本製品を取付けた後は、無線LANの接続が切断されることがなくなり、通信環境はぐっと安定した。ここでは送受信レートも計測してみたが、取付け後のほうが送受信とも安定している。もともとある程度電波状態が安定している環境では効果を体験しずらいが、このように不安定な環境ではその恩恵がはっきりと分かる。
モバイルでは? 5GHz帯では?
実は筆者が興味を持ったのは、このサイズであればクライアント側でも使えるのでは? ということだ。ホットスポットなどは一般にそれほど広いスペースではないのだが、まれに複数のフロアを持つ場所では特定のフロアで異常に電波状態が悪い場合がある。
また本製品は2.4GHz帯専用となっているが、2.4GHz帯だけを特定して反射するような構造には見えない。そこで2.4/5GHz帯の両方(802.11b/a)に対応したNTTコミニュケーションズの「HOTSPOT」サービスを提供している店舗に出向き、実験をしてみた。
まずは内蔵無線LANにも有効かどうかを確認してみよう。筆者の利用しているエプソンダイレクトの「EDiCubeNote S」はCentrino仕様なので、802.11b無線LAN機能を内蔵している。アンテナはディスプレイ部に内蔵されているはずであり(ディスプレイをたたむと感度が低下する)、今回はちょうど店内の隅を陣取れたので、本製品を部屋の中央部に向けて調整しつつ、感度を監視した。
アクセスポイントの位置が正確にはわからないので、店内の中央に向けてみた。実際には多少方向を変更しながら計測を行ってみている
上が本製品利用前、下が利用後。内蔵のIEEE 802.11bと、PCカードの802.11aで同時に計測している。黄色が802.11b、紫色が802.11aだ
アクセスポイントの位置、PC内蔵のアンテナ位置がわからないということもあるが、少なくともはっきりとした効果は得られなかった。一般にノートPCの内蔵無線LANはディスプレイ部にアンテナを内蔵しているので、PCカードスロットに装着する無線LANカードに比べると良好な受信が可能ということも影響しているのだろう。
では5GHz帯、つまり802.11aではどうだろう。こちらはPCカードを使用したが、PCカードスロットは窓側を向いているため、内蔵の802.11bに比べると不利だ。アンテナ部分を囲うようにして部屋の中央側からの電波が集約するように本製品を設置してみた。
寝かせるようにして設置したところ、受信状態はもっとも良好になった。安定し、内蔵の802.11bと同程度の受信環境になっているのがわかる
グラフにも表れているように、こちらは効果がはっきりと出た。5.4GHz帯でも有効であると同時に、内蔵に比べるとアンテナの位置的に不利なPCカードタイプのほうが効果は大きいといえるだろう。
もしかしてAirH"も?
ここでふと頭をよぎったのが、「2.4GHzも5GHzもOKなら、1.9GHz帯のPHSならどうか?」ということ。幸い、手元にAirH"のインフラを利用する「b-Mobile」端末があったので、即席で受信状況のチェックを行ってみた。b-Mobileはユーティリティで電波強度をチェックできるので、この機能を利用することにしよう。
上は何もしない状態。下が通信カードを本製品で囲うようにし、窓側からの電波を遮蔽したところ。右では通信可能な基地局数が半減。電波を遮蔽する効果があることがはっきりわかった
まずは窓側からの電波を遮蔽して、どう変化するかを見てみたが、効果ははっきりと出た。もっともこれは実用という意味ではあまり意味のない実験なので、本製品の向きを色々と変えて設置し、通信可能な基地局数が増えるかどうかを試してみた。
結局、上のように本製品を置くと通信可能な基地局数が増加した。もちろん複数回計測すると多少の変動はあるのだが、本製品を利用しない状態で電波強度の欄がうまることがなかったのに対し、本製品を写真のようにおいた状態ではほぼ100%、電波強度の欄がうまった
多少の試行錯誤は必要だったが、結果的にはより多くの基地局を捉えることができた。今回のように、もともと多くの基地局と通信できる状態ではあまり意味はないが、建物の奥など電波状態の悪い場合には大きなメリットになりそうだ。
極めて簡単な構造でコンパクトな「GW-BST01」。劇的な効果とは言い難いが、うまく利用すればきちんと効果が得られるし、単純にプレートで電波を集約する構造なので、AirH"の例に見られるような応用もききそうだ。過大な期待は禁物だが、少しでも無線LAN環境を改善したい、例えば価格的に外付けアンテナまで購入する気はおきないが、今ひとつ無線LANの電波状態が良くないといった人は、試すだけの価値はあるだろう。高価な製品でもないし。
関連リンク
プラネックス・コミュニケーションズ
製品情報
[坪山博貴,ITmedia]