エンタープライズ:トピックス 2002年5月14日更新

IBM,オートノミックコンピューティングをすべての製品ラインに導入へ

 IBMは5月2日,自己管理システムの実現に向けた「Project eLiza」イニシアチブの発表から1年を経て,その実例となる新しいワークロード管理技術を発表した。顧客企業らの試算によると,これらの技術によって最大20パーセントものITコストの削減が見込めるという。この試算によると,インフラストラクチャが複雑なほどコストの削減額が大きくなるとされている。

 自律型(オートノミック)コンピューティングは,人体を管理している自律神経系と同じように自己を管理・調節するインテリジェントシステムの開発というビジョンを反映したもの。背景には,管理が難しく高いコストを伴う現在の複雑なコンピューティング環境がある。

 この新しい技術は,稼動しながら自己学習するシステムを実現するものであり,IBMが1年前に発表した自己管理という目標を超えて次のステップを踏み出すものだ。

 洗練されたソフトウェアアルゴリズムに基づくこの新しいワークロード管理技術は,インターネットトラフィックやアプリケーションの利用パターンなどを学習して複数のサーバ全体のパフォーマンスを常に改善し続けるように設計されているという。何千ものIBM eServerシステムやIBM以外のコンピュータ全体のパフォーマンスをまるで1つのシステムであるかのようにリアルタイムで改善するということが,この技術のユニークな点だ。

 IBMでは,この技術を2002年後半に一部の顧客やデベロッパーに向けて提供する予定という。

 IBMの顧客企業は,「Enterprise Workload Manager」をはじめとするエンドツーエンドの自己管理技術を利用することによって,高いコストやスキル不足が伴うより複雑な問題に取り組むことができるようになる。このためIBMは,ルフトハンザ・システム・グループやパナソニックといった顧客らに自律型コンピューティングのリーダー分野として認識されているという。

 オートノミックコンピューティングを担当するアラン・ガネック副社長は,「新しい機能によって,インフラストラクチャの自律的な保護や複数のサーバ,ストレージ,およびクライアントデバイスにまたがる負荷分散を実現することができる」と話している。

 Enterprise Workload Manager以外に発表されたProject eLiza技術は以下のとおり。

・ITS Electronic Service Agent:Project eLizaによって定義された強力な自己修復機能を強化してIBMグローバルサービスが提供する初のソフトウェアソリューション。あらゆるeServerの問題をほとんど人の手を煩わすことなくリモートで検出および修復できるという。Electronic Service Agentは,間もなくIBMのeServerファミリー全製品において利用できる。

・Enterprise Identity Mapping (EIM): エンドツーエンドのセキュアトランザクションを実現する初の技術。EIMは,ネットワーク上に存在するユーザーの複数のセキュリティアイデンティティーを互いに関連付けて追跡する。ネットワーク上の各サーバごとにユーザーがサインオンして認証を行うようにする必要がなくなるため,プログラマーは,より単純でセキュリティ性の高いアプリケーションを作成できるようになる。究極的には,企業のネットワークが,どこからネットワークに入ったかという要素に基づいて,ユーザーに与えるアクセス権のレベルを決定できるようになる。例えば,VPNを通じてネットワークに入ったユーザーには,セキュリティの劣るワイヤレス接続を通じて入ったユーザーより高いレベルのアクセス権を与えるというようなことも可能になるという。EIMは、eServer iSeriesで2002年の夏の後半に,そのほかのeServerシステムでは2002年後半に利用できるようになる。

・"Raquarium" : IBM Directorで実装される技術。数百にも及ぶブレードサーバに対し,導入作業,複製を利用した導入作業,更新作業やトラブルシューティングをリモートからグラフィカルな管理画面を利用して行うことができる。

 これらの自律型技術は,最近発表されたストレージ,Tivoliシステム管理ソフトウェア,およびPCに組み込まれている新しい自己修復ソフトウェアを補完するもので,例えばPCの自己修復ソフトウェアでは,PCがクラッシュした際に自動的にイメージを復元できる。

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