12年待った――糸井重里さんへの手紙:「MOTHER3」レビュー(2/4 ページ)
決まると気持ちいい「サウンドバトル」
本作では見おろし型フィールド上でキャラを操作し、目的地に向かって移動する一般的なシステムを採用しているが、高速に移動する方法は少し独特。Bボタンをしばらく押して離すと、障害物に正面から当たるまでダッシュし続けるのだ。最初はとまどうものの、慣れると面白いように移動できるだろう。
村には数多くの人が住んでいるのだが、話しかけても平凡なセリフを言う人物がいないのも面白い。ほとんどのタイトルは、大概村の入り口には「ここは○○村です」などと言う専門キャラが配置されているものだが、本作ではそのような無意味なキャラは存在しない。全員がそれぞれの生活を持ち、それぞれに暮らしている。だからこそ、ゲームゲームしたセリフがなく、実生活に近い会話が楽しめるのだと思う。元々、物語の舞台になっているのがRPGでは珍しく、近現代のアメリカというのも、身近に感じる一因かもしれない。
テリの森では、謎のブタマスク男が放ったモンスター以外にも、どこからか出てきたらしい野生動物との戦いもある。ここにも本作ならではの特徴があり、一般的なRPGでよく見かけるモンスターがまったく登場しない。変わりに、当たり前のように森にいる動物が凶暴化したものや、キメラ化した敵ばかりが出てくるのだ。前者はともかく、後者に関してはもちろん意味があり、ストーリーの根底に関わってくる部分だったりもする。
なお、戦闘シーンはコマンド入力方式のターン制を採用しており、すばやさの値に応じて行動していく。中でも、本作のシステム面でもっとも重要なのが、ここで出てくるサウンドバトルだ。これは、戦闘中に流れるBGMのリズムに合わせてAボタンを押せば、最大で16回まで連続してダメージを与えられるというもの。敵によってBGMは変わり、同時にリズムも変化するので、それぞれの敵に合わせてボタンを押す必要があるのだ。とはいえ、序盤こそ簡単に攻撃回数を重ねられるものの、中盤からは同じ曲であってもリズムが微妙に変化していたりと、リズムの取りづらい敵が数多く登場するため、なかなか成功しない。
そこで有効なのが、敵を眠らせてしまう特技や後述するPSIだ。これを使えば敵の心音(リズム)が直接聞こえるので、そのリズムに合わせてAボタンを押せば必ず連続ヒットさせられる。ただ残念ながら、ボスは眠らせることができないので、聞こえてくるリズムにじっと耳を傾ける必要があるのだ。BGMのドラムに合わせてボタンを叩けばOKという単純なものではなく、その分何度も戦う楽しみもある。強い相手に攻撃が複数回決まったときの爽快感は、言葉に出せないほどうれしいものだ(もちろん拍手も起きる)。なお、ご存じない方に付け加えておくと、PSIとは一般的なRPGで言うところの魔法のようなもの。等身大の人物が冒険すると前述したが、PSIを使うところだけが唯一大きく異なると言える。PSIは超能力(psionics)のことで、ゲーム中では進行度合いにより、パーティーの何人かが使用できるようになる。
戦闘中にはパーティーのステータスが表示されるのだが、敵からダメージを受けるとスロットマシンのドラムのように、回転しながらHPが減っていく。実はこれが秀逸なシステムで、HPを一気に失うほどの大ダメージを受けたとしても、ドラムが回転して0になる前に敵を倒したり、HPを回復できれば、そのキャラが戦闘不能になってしまうことはないのだ。とはいえ、その場合はサウンドバトルをしている暇などないので、Aボタンを連打して戦闘を早く終わらせるか、あわてて回復させることになる。それでも、攻撃を受けると一発でやられてしまうという凶悪な攻撃や魔法が横行するRPGの中で、この発想は間違いなく諸手をあげて歓迎すべきものだろう。
さて、テリの森で村の子供を救出したフリントだが、すぐにヒナワとリュカ・クラウスが行方不明だと知らされる。村人総出で森を探す中、川に流されてきたという兄弟たちとの再開を果たす。一瞬、安堵の空気が流れるも、同時にヒナワがドラゴによって殺されたことを告げられる……。胸にはドラゴの牙が刺さっていたが、我が身を呈して子供たちを逃がしたという話を聞かされ、目の前が真っ暗になるフリント。家族にとってかけがえのない存在だった母が、この瞬間に思い出としてのみの存在になってしまったのだ。彼女の死を知ったフリントは怒り狂って暴れ、平和だったタツマイリ村では初めてとなる、留置所の住人になってしまう。
子供たちの協力を得て留置所を脱出するものの、今度は双子の兄クラウスが行方不明になる。どうやら、1人で母親のかたきを討ちに森の奥へと入っていったらしい。クラウスを追いかけるフリント。その途中で、「マジプシー」と呼ばれる奇妙な一行を目にする。すわ、新宿二丁目にあるオカマバーか!? と、こんな事態にもかかわらず、つい笑ってしまった。悲しさばかりが支配する物語では、途中で雰囲気が重くなりすぎてしまう。バランス取りの巧みさも、シナリオの良さに関わってくるもの。このくらいインパクトがあるほうが、プレーヤーも何らかの反応をするものだ。もちろん、彼(彼女?)らは笑わせるために出てきたのではなく、物語終盤にかけて非常に重要な役目を担っているのだ。
山奥まで分け入ったフリントたちは、途中でクラウスの靴と思われるものを見つける。それに導かれるように進んでいくと、ブタマスクに改造されたメカドラゴと遭遇する。信じられないほど醜くなってしまったドラゴだが、ヒナワを倒した相手……。残念だが、戦うしかないのだ。
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