液晶パネル天板には、新しく用意された「ハイブリッドCFRPカバー」(CFRP=炭素繊維強化プラスチック)が採用された。福島氏によると、無線LANのアンテナを天板部に収容するために考案されたもので、従来から使われていたCFRPカバーは導電性が高くてアンテナ性能に影響してしまうことから、アンテナ収容部分に非導電性のGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)で作られたパネルを組み合わせている。CFRPとGFRPのハイブリッドパネルによって、重さが従来のLCD Roll Cageから47%減となっただけでなく、耐衝撃性能も向上した。
キーボードの打鍵感も改善されている。キーボード開発を担当したレノボ・ジャパンのノートブック開発研究所 サブシステム技術 機構設計 テクニカルマスターの堀内光雄副部長によると、キーを押し始めてから最初に向かえる反発力のピークである「ピークフォース」と、さらにキーを押し続けて反発力の底になる「ボトムフォース」のそれぞれにおける力の違いが最もいい状態になるように、キーキャップを支えているラバードームの形状(だるまのような2段屋根ドームの形をしており、それぞれの屋根の形状と厚さで決まる反発力の組み合わせによって、ピークフォースとボトムフォースにおける反発力とそこにいたるまでの力の変位が定まる)を調整したと説明した。
キーボードユニットでは、このほかにも、キーキャップ表面にコーティングを施すことで従来と比較して3倍以上の磨耗耐久性を実現することでプリントされた文字が消えないようにしたり、キーボードユニットの防滴性能では、これまで円形だった排水口の形状を長方形に変更して、排水時に空気が抜けるようにすることで排水効率を従来の2倍に高めるなどの改善も行われた。
ThinkPad X300は、省電力性能でもThinkPad T61の35%減、ThinkPad X61の25%減を実現している。これは、サウンド再生がなければオーディオモジュールへの電力供給をオフにしたり、メディアが入っていないときは内蔵ドライブをオフに、ケーブルがつながっていないときはLANコントローラをオフにするなどの、電力供給の細かいオン/オフが可能になった電力管理機能のほかに、「低温状態にするとリーク電流は減る」というリーク電流とシステム温度の関係を応用して制御される冷却機構の採用などが関与している。
ThinkPad X300の熱設計では、これまでも紹介されてきた「ふくろうの羽」ブレードを採用したクーラーファンを継承しただけでなく、吸排気口の改善によるエアフローの最適化や、先に紹介したような新しいコントロール手法が採用された冷却機構が導入されている。クーラーユニットの軽量小型化も進み、ThinkPad T61で114グラムだった重さは35.6グラムまで減った。製品版に搭載されるクーラーユニットは黒く塗装が施されるが、この理由について開発スタッフは「1つは吸排気スリットから見えるクーラーユニットを目立たないようにするため。もう1つは、黒く塗っているとクーラーユニットから発生する熱量を抑えられるため」と説明している。
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