> レビュー 2003年6月25日 11:59 PM 更新

もう1つの高画質と高圧縮の共存の形〜DivXに対応した「MTVシリーズ」

人気のビデオカノープス「MTVシリーズ」の付属ソフトウェア「FEATHER」が「FEATHER X」にバージョンアップしてDivXに対応する。単にDivXによる録画を可能にしたのではなく、ハードウェアエンコードのMPEG2録画と共存するという面白い機能拡張だ。今回はβ版と「MTV-1000」で試用してみた。

 ハードウェアエンコード機能付きテレビチューナーカードとして定番ともいえる存在になった「MTVシリーズ」。このMTVシリーズのコントロールソフト「FEATHER」が「FEATHER X」にバージョンアップし、新製品にバンドルされると同時に、既存ユーザーへも有償バージョンアップで提供される(パッケージ「MTV X Pack with DivX」は3800円、6月18日の記事を参照)。

 FEATHER Xのウリは、人気の高圧縮ビデオフォーマットである「DivX」に対応したことだ。とはいえ、MTVシリーズのハードウェアでDivXのエンコードが行われるわけではないし、もともとFEATHERでは動作保証外ながら外部コーデックを利用したソフトウェアエンコードによる録画も可能だった。もちろん「DivX」外部コーデックとして利用できたわけで、DivXで録画すること自体は目新しいことではない。

 では、FEATHER Xの何が新しいかといえば、定評のある高画質なMPEG1/2録画にほぼ並行する形でDivX録画が可能になったことだ。ユーザーは、録画された2つのファイルから、画質優先のMPEGを残すか、ファイルサイズ優先のDivXを残すかを決めることができる。もちろん、DivXで録画したコンパクトなファイルをノートPCに放り込んで持ち出すといった使い方もできるわけだ。


後述する「X-TransCoder」機能搭載にともないリモコン風の操作パネルのボタン数も増加したが、基本的な操作は「FEATHER」と変わっていない


コンテキストメニューにも、「X-TransCoder」パネル表示や、バックグランドでのエンコード開始といった機能が追加された

MPEG録画を犠牲にしない「X-TransCoder」

 「FEATHER X」のような2つのフォーマットでの並行録画は過去になかったわけではない。ソニー「VAIO」シリーズに搭載される「GigaPocket」では、ハードウェアエンコードMPEG2録画とソフトウェアエンコードのMPEG1録画を同時に実行できた。もっとも、「GigaPocket」でこれが実現できたのは、MPEG2とMPEG1の並行録画をこなせるスペックのPCで動作することが前提だからだ。メーカー製PCならでは、といえるだろう。

 一方、MTVシリーズように単体販売される製品では、並行録画がトラブルの元になる可能性も高い。並行録画が原因でMPEG1/2での録画に悪影響が出たり、PCがハングアップして録画自体が失敗してしまっては意味がないのだ。そもそもハードウェアMPEGエンコーダを搭載した製品のメリットは、高画質録画と、CPU負荷が小さくてすむが故の安定動作を両立できることだったはずだ。

 そこでカノープスがFEATHER Xに追加した機能が「X-TransCoder」。これは、PCのハードウェアスペックや、ユーザーが「何を優先するか」に応じて、DivXでの録画方法を最適にコントロールするものだ。


これが「X-TransCoder」の操作パネル。録画(エンコード)中は左側のウインドウに録画中の映像も表示される。録画済のMPEG1/2ファイルを指定してDivXのエンコードを行うことも可能だ


「MediaLibrary」も機能拡張され、録画済み番組の一覧から「X-TransCoder」にDivX変換したい番組を渡すことができるようになった

 X-TransCoderには2つの重要な設定がある。1つめは、DivXによる録画(エンコード)をMPEG1/2録画とほぼ同時に開始するか、MPEG1/2録画が終了してから開始するかの設定だ。DivX側のエンコード設定にもよるが、CPUパワーが十分なPC、もしくは素早くDivXでの録画も終えてほしい場合は前者を、CPUパワーが足りないPC、あるいはMPEG1/2録画を優先したい慎重派は後者を選べばいい。

 2つめは、MPEG1/2録画とDivXの録画を並行して行うかどうかの設定だ。並行しないようにすればDivX録画はPEG1/2録画時には一時停止し、MPEG1/2録画が終了すれば自動的に再開する。MPEG1/2での安定、高画質録画を重視しつつ、可能な限りDivXでの録画も早く終わらせることができるわけだ。


X-TransCoderのオプション設定。FEATHER XでのMPEG1/2録画とDivX録画の連携や、どのような形でDivXエンコードを行うかといった設定ができる


エンコード可能なコーデックはDivXだけではない。動作保証外ながら、Windowsにインストールされたほかのコーデックも利用できる。例えば、Windows Media9のVCMをインストールしておけば、MPEG1/2とWindows Mediaの並行録画も可能だ

 MPEG1/2とDivXでの並行録画もうまくコントロールしているようだ。筆者が「MTV-1000」を利用しているPCは、CPUがDuron/1GHzと今となっては非力。このPCでMPEG2録画を352×240ピクセル/2Mbps(長時間モード)、720×480/5Mbps(標準モード)の2つに設定し、MPEG1/2録画とDivX録画(初期設定、780Kbps)を並行して行ってみたが、CPU使用率はどちらも90%前後で安定し、100%に達することはなかった。ある程度使い込んでみないと判断はできないが、これならばCPUパワーはそれほど気にかけなくても並行録画が安心して行えそうだ。



上がMTV-1000の「長時間」(352×240ピクセル/2Mbps)、下が「標準」(720×480ピクセル/5Mbps)でMPEG2録画を行いつつ、途中からDivX録画も並行させた場合のCPU使用率。中央辺りから並行録画が始まっているが、決してCPU使用率が100%に達していないことがわかる

今後のバージョンアップに期待の持てる製品

 今回利用したのはβバージョンであり、製品版とは異なる部分もありそうだが、筆者が特に気になったのはMPEG1/2とDivXで録画する映像サイズが変更できなかった点。これが個別に設定できれば、MPEG1/2はPC用、DivXはPDA用といった使い分けが簡単に行えるはず。自宅で見る暇がなかった番組はPDAで外に持ち出す〜そんな使い方をしたいと思うモバイラーは実際多いのではないだろうか?(少なくともココに約1名いる)。

 MTVシリーズのようなハードウェアエンコーダ搭載TVチューナーカードを利用する層の多くは高画質録画を求めており、こういった層に本製品のDivX対応がどれだけ魅力的に映るかは筆者には判断できない。しかし、余分な手間なしで高画質録画と高圧縮録画を両立できることが生むメリットは多い。前述の“異なる映像サイズによる録画”対応、あるいはAVネットワークソフト「HomeEdge」との連携なども含め、今後のバージョンアップに大いに期待できる製品であることに間違いなさそうだ。


既存のMTVシリーズをアップグレードする「MTV X Pack with DivX」のパッケージ。価格は3800円で6月30日に出荷開始予定

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関連リンク
▼ カノープス
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[坪山博貴, ITmedia ]

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