> レビュー 2003年7月17日 08:16 AM 更新

鳥肌が立つほどの解像力――絵づくりはプロバックに迫る勢い
コダック DCS Pro 14n(1/3)

製品写真
総合評価8
デザイン6
ユーザーインタフェース6
機能6
性能10
バッテリー4
ソフト10
レンズ8
レイティングポリシー

評価のポイント

デザイン

     どこまでも個性的。日本人では発想し得ないのでは? というアメリカンなデザイン。好みが分かれるところかもしれないが、アメリカ本国では好評だという。マッチョな見た目とは裏腹に、重量は比較的軽い部類に入る。

     35ミリフルサイズCMOSを搭載しながらも、ベースのボディはニコンF80となっている。ミドルクラスのボディをベースとしているため「高級感」という観点で比較すると、F5をベースに開発されたニコン「D1X」のほうに分があることは否めない。ニコンマウントユーザーがこのあたりをどう判断するかは興味深い。D1Xの後継機はフルサイズセンサーを投入してくるだろうが、「それを気長に待つことはできん!」というフルサイズ志向のニコンマウントユーザーには14nしかないだろう。

ユーザーインタフェース

     操作性もまた個性的で、MENU操作は他のDSLRとかなり異なる。再生画面の表示は、MENUボタンを2度押す方式(1度押すとMENU画面)。つまり再生モードのボタンは存在しないのだ。かなり独自色の強いインタフェースである。

     モードダイヤルや絞り値の変更ダイヤルは一般的なスタイルだが、ホワイトバランスの設定項目は変わっていて一瞬戸惑う。通常は太陽光源の項目は「晴天」「曇天」「日陰」といった区分けがなされるハズだが、14nではまずデイライトを選ぶ。次にその中から(色温度=)「通常」「高い」「低い」を状況に合わせて変更するのだ。このあたりには、「お湯」を「熱い水」と表現する言語文化の違いを感じさせられる。このほか「白熱電球」は「タングステン」となっている。ホワイトバランスのカスタム設定はあるが、色温度の数値による設定変更は、ファームウェアVer. 4.3.1ではまだ対応していない。

機能

     コダック「DCS760」の時代にはモータードライブを取り付けたようなタテに長いボディ設計をしていたが、14nではタテの長さをコンパクトに縮めた。その分、ぽっこりと下っ腹がせり出す形状となっている。バッグから取り出す機動力で考えれば、おそらくこの設計は正解といえるだろう。

     AFは快適に素早くキマる。5点測距のシンプルな印象のファインダーであるが、MFでのピントの山のつかみ方は難しいかもしれない。というか、筆者はこのファインダーはAFに頼るしかないと感じた。

     内蔵ストロボを見ると、耐水性やボディ剛性への信頼度が揺らいだが、短期間のレビューでは明確な結論は出せなかった。記録メディアはコンパクトフラッシュとSDメモリーカード/マルチメディアカードの双方に対応したダブルスロットとなるが、このフタが少々きゃしゃで、かなり開けにくい。

性能

     さすがはフルサイズ。さすがは1371万画素。信じがたい解像感のある結像を見せてくれる。階調の豊かさはDCSプロバックに手が届きそうな勢いなのではないか?

     パソコンに転送した画像を見れば驚くほかはない実力を有する。ただし、このカメラが持つ本来の実力を最大限に引き出すには条件が必要だ。それは、ユーザーが持つべきそれなりの撮影技術である。ホワイトバランスに対する経験則を持つことはもとより、露出の知識(適切な露光時間を選ぶ技術)、光のコントラストの見方、ISO感度の理解など、もろもろの習熟度が要求される。

     平たく言えば、どのDSLRにも向き不向きの用途があって、この14nに適した用途が何かをわかること。そうでないと、このカメラの実力を見誤って見当違いの評価を下すことになってしまう。

バッテリー

     バッテリーは、かなりスリムな軽量タイプである。いや、はっきり言えば、バッテリー容量は貧弱だ。Proの名を冠したように、14nは紛れもなくプロのための道具のはずだ。これではロケが心配になってしまう。ロケに出かけるならスペアは不可欠だが、果たしてスペアは1個で足りるだろうか。

     バッテリーのスリムさに対し、チャージャーのかさばり方は尋常ではない。軽いわりに、妙にデカい。デジタル一眼レフのチャージャーはもう少し携行性を考慮して設計されてもいいのではないか(これはコダックに限らない)。クルマでロケに出かけるとは限らないのだから。

ソフト

     RAWデータで撮影した作例の現像には、「DCS Photo Desk 3.1.0」(英語版)を使用している。日本のメーカーよりも実績と歴史を積んでいるコダックのRAW現像ソフトである。現像作業では、露出やホワイトバランスの補正、シャープネスの調整などが可能である。使用するPCに用意されたカラースペースにはすべて対応する。「Adobe Photoshop」との連携を考慮した設計がなされており、現像処理をしたあとに自動的にPhotoshopに書き出すことができる点は非常に便利だ。なお、Photoshopに渡さなくても、Photo Desk上でプリントが可能だ。

     ファイルビューでの画像表示は高速で画像選びは快適。そのおかげで生産性も高まる。RAWで撮影するスタイルは後工程に多くの時間を費やす必要がある。プロであればなおのこと、この「作業時間を軽減してくれるソフト」は重要なのである。DCS Photo Deskは14nに同梱される。

レンズ

     14nの実力を自由に引き出す腕前があれば、レンズ選びは楽しい作業となるだろう。レンズの出来の良しあしが如実に現れてしまう「ナチュラルな高解像感」をカメラ側が持っているからだ。14nは優れたレンズテスターなのである。

     ただし1点、レンズ選びで注意事項がある。コマーシャルフォト系の人はマクロでアオりたい人が多いのだが、14nにはボディ形状の事情で使用できないレンズがある。例えばシフト機構を内蔵した「PC Micro-Nikkor 85mm F2.8D」は、シフトしたときに14nの下っ腹部分に当たってしまう。物理的に近接撮影が不可能なのだ。しかし、当たるポイントは3カ箇所あるのだが、それを削る“陰の職人”がいるそうだ。そうした職人に依頼してレンズボディを削り、14nでPC Microの85ミリを使用するプロは複数いるという!

     このほか同様の理由で、ニコンのデジタル一眼レフ専用交換レンズ「DX Nikkor」の大口径ズームも使用できないのでご注意を。

総合評価

 今回のレビューでは、ファームウェアVer. 4.2.3の実機を使用した。ファームウェアのバージョンは月に2〜3回アップする。コダック内部では、30分単位での改良・変更が重ねられているそうだ。本レビューを書き上げたあとの7月1日に、「DCS Pro 14n Firmware ver 4.3.1」がリリースされた(米国KodakのWebサイトに掲載中)。デジタル一眼レフにおいてファームウェアのバージョンアップは、「違うカメラ」に成り得るほどの革新をもたらす。スケジュール上の都合で最新バージョンのVer. 4.3.1を試せなかったのは残念だが、非常に解像感ある描写力とナチュラルな色みで絵をつくることができる高性能メカであることだけは確信できた。

 あとはこの高性能メカを操る技能である。素人が手を出せばやけどをするが、デジタル写真を知り抜いたハイアマチュア〜プロにとっては使い倒す甲斐のある良き友となるだろう。

ベンダー製品担当者からの一言

 ホワイトバランスやシャープネス等、デジタル特有の設定項目を撮影時に気にする必要のないRAWモード撮影時に最高のカメラ性能を発揮しますので、より良い絵作りのために撮影に集中しやすいカメラシステムです。付属のRAW現像ソフト「DCS Photo Desk」は、プレビュー画像の表示が高速なので手際よく写真選びができ、また、難しい画像処理のテクニックを勉強しなくても簡単にRAW画像の現像やプリントができるので、どなたでも1350万画素の超高画質で人とは違った自分なりの写真表現を楽しんでいただけます。(コダック プロフェッショナル事業部 菊池 克行)

主要スペック

撮像素子35mmフルサイズCMOSセンサー
有効画素数1371万画素
対応レンズニコンFマウント
ISO感度80〜800相当
焦点調節オート/マニュアル
最高品質時の最大画像解像度4500×3000ピクセル
シャッター速度1/4000〜30秒(2秒以上の長時間露光は推奨しない)、バルブ
フォーカスエリア5カ所
露出補正あり
ストロボ内蔵
液晶モニタ2インチ低温ポリシリコンTFT
ファインダーアイレベル式ペンタプリズム使用、視度調節機構内蔵
記憶メディアコンパクトフラッシュType I/II、SDメモリーカード/マルチメディアカード
画像ファイル形式DCR、ERI-JPEG、JPEG
バッテリー専用リチウムイオン充電池、ACアダプタ
PC用インタフェースIEEE1394
サイズ(W×D×H)158×89×131mm
重量約907g(本体のみ)

[島津篤志(電塾会友), ITmedia ]

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