IT仕事塾

ファイルメーカーPro ユーザーの現場を探る
第11回 SOHOスタイルで外部スタッフを多用するデザイン事務所はファイルメーカーで稼働する(1/2)

本社を持たずSOHOの業態で外部スタッフを多用している、小規模のデザイン会社でのファイルメーカーPro利用例を紹介しましょう。

 今回は、小規模のデザイン会社におけるファイルメーカーProの利用について紹介しましょう。アットミクストは3人の女性が創業したデザイン会社で、主に雑誌・書籍向けに地図のデザインをしています。

 この会社は、会社の主要メンバー3人の自宅をオフィスにしている、いわゆるSOHOの形態で、多数の外部スタッフを抱えて仕事をしているのが特徴。そして、それを取りまとめるのがファイルメーカーProなのです。

 同社がスタートしたのは2000年。3人のコアメンバーは創業前は練馬区石神井の近所に住んでいましたが、その後は谷中、浅草、石神井とバラバラ状態に。また、外部スタッフも、東京都内だけではなく、ドイツ、ベラルーシなど、地理的条件に全くしばられない使い方をしています。


石川香織氏(右上:浅草オフィス)、戸叶勢子氏(左上:谷中オフィス)、松尾よしこ氏(下:石神井オフィス)3人のイコールパートナーから構成されるアットミクストを結びつけるのはファイルメーカーProによる情報共有

 それだけに、業務の受発注、進捗管理の負担は非常に大きいものがあります。地図の仕事は、編集プロダクション、もしくは編集部から受注し、編集者からネームが入り、それをもとにデザインをし、納品するという工程を経るのですが、その後も担当外注デザイナーの担当分を調査し、支払いを行うというところまで管理しなければなりません。

きっかけは、年賀状の印刷から

 アットミクストでは、この管理作業を軽減し、外注先への支払いに至るまで管理することを目的にファイルメーカーProが採用されました。ただし、そのきっかけとなったのは、「年賀状」の印刷だったのです。

 当時、取引先やスタッフや外注先の住所録は、3人がそれぞれのものを持っており、一括管理されていませんでした。一応、3人ともMicrosoft Excelを使って住所録を作っていたのですが、それをハガキに印刷するためにはラベル印刷をする必要があるうえ、「この人は送付リストに入れるが、この人には送らない」という区別をつけることができませんでした。そこで、ファイルメーカーProを使って住所録を作ることから始めたのです。

 作り方は、ほとんどここに書かれている方式で、データはCSV形式に書き出したExcelデータを3人の住所録からもってきて、マージしました。フィールドとして新たに追加したのは、「グリーティング送付」という項目。ここに「00賀」と書かれていれば、そのレコードのある人には2000年の年賀状を送る、「か02」とあれば、創業2周年の挨拶状を送るといった具合に、検索・ソートして、ラベルを印刷することができるのです。ラベルへの印刷だけでなく、細かく設定できるレイアウト機能を使えば、ハガキへの印刷も簡単に行えます。


ATMIXT取引先の画面


「ハガキ」に「縦書き」のボタンを押すと、縦書きに印刷するレイアウトに変わります。このままプリンタに官製はがきを差し込めば、ハガキ印刷ができる仕組み

 最初の年賀状印刷は無事にすみました。しかし、その後のデータの更新はどうするのでしょうか。1人のところで新しいクライアントや外注先を登録していくのでしょうか。それならば、ファイルメーカーServerを使って、各事務所で共有してしまおうということになりました。サーバは練馬区・石神井のオフィスに置き、谷中、浅草からファイルメーカーProを使ってアクセスするわけです。これで、データの更新は問題なくなりました。

 ファイルメーカーProで管理している住所録は、「ATMIXT取引先」と「ATMIXTパートナー」の2種類に分かれます。ATMIXT取引先のほうは、前述のクライアント住所録で、ATMIXTパートナーは、スタッフ・外注先の名簿です。この2つは性質が異なるので、フィールド属性も分け、別々のファイルにして両方をファイルメーカーServerでホストしています。


ATMIXTパートナーの画面

 スタッフ用の「ATMIXTパートナー」には、仕事の報告などを行うメーリングリスト(3種類に分かれている)のどれに属しているかを示す「ML種別」、どの作業が得意かを表す「職種」、そしてマシンやソフトウェア環境をメモした「作業環境」などが追加されています。どちらも、メールアドレスの左側のアイコンを押すと、メールソフトが立ち上がり、新規メッセージを開き、そのメールアドレスをTo:欄に書き込みます(これはファイルメーカーProが最初から持っている機能です)。

[松尾公也, ITmedia ]

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