> ニュース 2003年10月17日 08:20 PM 更新

Adobe Creative Suiteは単体では100%ではない――Adobeインタビュー(1/3)

Photoshop CSなどAdobe主要4製品の今回の発表は、単なるバージョンアップに止まらず、Adobe Creative Suiteという“集合体”そのもののリリースをも意味する。なぜスイートなのか、その意義を米Adobe幹部に聞いた。

 「Photoshop CS」、「Illustrator CS」、「InDesign CS」、「GoLive CS」という、Adobe主要4製品の発表は、単なるバージョンアップに止まらず、「Adobe Creative Suite」という「スイート」(集合体)そのもののリリースをも意味する。このAdobe Creative Suiteというスイート製品を登場させたのには、Adobe的に深い理由があるという。


Adobe Creative Suite Premiumのパッケージ

エンジンの共通化と、そのメリット

 Adobe Systemsでデジタルイメージングとビデオプロダクツを担当する上級副社長のブライアン・ラムキン氏はその理由を次のように語る。「製品間の相互連携機能を強化するためには、同時バージョンアップというのが最善の選択だ。今までは製品ごとにバージョンアップのロードマップが異なり、その都度、連携機能の部分についての面倒なメンテナンスを行っていた」


上級副社長のブライアン・ラムキン氏

 同社が認識しているように、現代のクリエイティブワークにおけるソフト間の連携は、“あってしかるべきもの”であり、それが存在しない製品など、あまり考えられない。ホビーユーザーならばそれほど重要視されないかもしれないが、それでも出力の工程などでプロレベルのクオリティを得ようとするならば、連携機能はあったほうが良い。

 今回のスイート製品における最大のポイントは、複数のエンジンを共通化して各ソフトで使用するまでに至った、という点にある。ただ単に各ソフトのプロダクトチームにおけるロードマップの足並みをそろえた、ということではないのだ。

 「タイプエンジン、グラフィックエンジン、PDFエンジンなど、主要なエンジンを共通化して各ソフトに実装した。これにより、例えばInDesign CSやGoLive CS上でPhotoshop CS系機能の呼び出しがより高速になり、連携能力の向上が図れた」(ラムキン氏)

 さらに驚くべきことには、各製品単体の開発チームとは別に、機能連携・ユーザーインタフェースの整合性などを専門に担当するチームを設置したという。まさに“スイートとして使ってほしい”がための施策であろう。


InDesignで評価の高かったプリントプレビュー機能が、Illustrator CSに移植された


プレビュー機能及びファイル編集機能が強化されたファイルブラウザ。サムネイルを図のように巨大化することもできる。今回は見送られたが、Photoshopファミリー以外へ実装される日も来るかもしれない

Adobe Version Cueこそがコンセプトのコア

 また機能面だけでなく、ユーザー間の連携機能が強化されているのも、Adobe Creative Suiteのスイートたるゆえんだ。

 「Adobe Version Cue」というソフトは単体で存在しているわけではなく、各ソフトの導入時に自動的にインストールされる。単体でCSシリーズを動かしている状態では起動せず、CSシリーズを複数起動した段階で動作を開始する。各CSシリーズが生成したファイルのバージョン情報などをXMLメタデータで保持し、それぞれのCSシリーズから参照できるようになる。また、改変ヒストリー情報も保持し、以前の段階に戻って作業を再開することも可能となっている。

 Adobe Version Cueの素晴らしさはこれだけではなく、ユーザーを越えたファイル情報の共有が可能な点にある。

 “同一ネットワーク内”という制限はあるものの、その中で他のユーザーがCSシリーズで作成したファイルの情報をやり取りすることができる。このため、自分以外が作成したファイルでも、以前の段階に戻って作業を再開することが可能だ。作業ファイルを1台のPC、あるいはサーバにまとめて置いておけば、自分が作業している間は他のユーザーがファイルを編集できなくなる。コラボレーション作業を念頭に置いた機能となっている。

 こういった機能は、以前「Adobe Workgroup Server」というソフトによって提供されていたが、Adobe Version Cueによってより洗練され、統合されたソリューションになったと言ってよいだろう。ただし、同一ネットワークということで、遠隔地とのやり取りを目的としてはいないようだ。VPNで機能するかどうかは今後検証する必要があるだろう。


Adobe Version Cueのadmin画面。ユーザー新規設定や変更ができる

各ソフトの新機能についての補足

 統合と連携について解説してきたが、ここで各ソフトの新機能についても若干補足をしておこう。

[大出裕之, ITmedia ]

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