図2 賭け組の儲け方

  現在 将来
基軸事業 基軸事業でキチンと収益を確保し,顧客を開拓して行く方法。スキミングプライシングと呼ばれる。NTTは当初競合のいないFTTHをこのような形態で考えていた。だが,競合が現れたため戦略を変更した。賭け組としては採用しない戦略である。 現在は無料・低価格化で普及しているが,将来的に有料化・高料金化して事業の収益を確保する。ユーザーが当然のように利用しているため,多少の出費は許容するだろうという考えに基づいている。

例:オンラインゲーム事業
補完事業 低料金で基軸事業を普及させ,顧客基盤を確立した上で,補完事業で儲ける。顧客への販売,広告収入や供給者からの利用料,販売手数料等複合的な収益方法が考えられる。

例:ADSL事業,FTTH事業者のコンテンツ配信事業
現在は基軸事業に集中し,顧客基盤の確立に努め,将来的に補完事業を確立して収益拡大を図る。基軸事業においてもクリティカルマスを超え,収益を確保できることが前提にある。

例:Microsoft,「Windows Media Player」普及後のWindowsサーバ群提供

 賭け組の儲け方としては,基軸事業で儲ける方法,補完事業で儲ける方法,そして現在儲けるか,将来儲けるのかということで4つのマトリックスができる(図2)。賭け組は現在基軸事業で儲けることは考えないため,現在―基軸事業で儲けるという儲け方は考えられない。NTTは,FTTH事業でこのような収益方法を考えていたが,有線ブロードネットワークスがFTTH事業に参入,競争的低価格化戦略を展開したために,NTTも基軸事業のFTTH事業のビジネスモデルの変更を余儀なくされた。

 一方,「Yahoo!BB」,「DION」(KDDI),「ODN」(日本テレコム)などのADSL事業者や,有線ブロードネットワークスのFTTH事業者も基軸のアクセス回線を低価格で普及させた上で,補完事業で収益を確保しようとしている。この場合はコンテンツ配信事業であり,コンテンツ利用料やコンテンツ販売手数料,広告収入等の複合的な収益方法を検討している。リクスヘッジが可能だが,事業が複雑化する問題もある。

 3つめは,現在の基軸事業を低価格化で普及させ,利用させた上で将来的に有料化して収益を確保する方法である。だが,多くの場合顧客は離反する。特に無料からの有料化は大変困難であり,ナローバンド時代でも成功例は全くないといえよう。

 また4つ目に,将来的に補完事業で儲けるいうパターンもありうる。現在は普及に専念し,無料で利用させているが,今後その普及させたサービスを利用している顧客をターゲットに事業を展開したい事業者から収益を確保するというものである。または利用している顧客に対してほかの商品・サービスを提供する方法もある。米Microsoftはストリーミングソフトの「Windows Media Player」を無償提供しているが,それをベースに今後Windowsサーバ群を売り込み,ブロードバンドでの収益の拡大を図ろうとしている。

焦点は広帯域を活用した新しいサービス

 このように見てみると,賭け組の儲け方は,補完事業の確立に掛かっていると言ってよい。だが,インターネット事業でも,広告収入や視聴料,ECとしてのコンテンツ有料化,コンテンツ企業からのコンテンツ掲載料を確保することは困難であった。これがブロードバンド化したとき,コンテンツ配信がスムーズになったとは言え,収益上,どのくらいインパクトがあるものであろうか。ナローバンドからブロードバンドへシフトしたからといって,事業収益が拡大するというわけではない。ブロードバンド(広帯域)通信網を活用した新しいサービスを確立しなければならない。

 アクセス回線事業者やポータル企業,ハードウェア企業にとってのブロードバンド補完事業は,コンテンツ配信事業である。ストリーミングにしろ,ダウンロードにしろ,コンテンツ配信事業は今年から来年にかけて本格化する。そのコンテンツ配信事業で,一体どのように儲けるのか。果たして儲かるものなのか。NTT-BB,Yahoo!BB,ePFnet,SCE(Playstation 2)などの各種ブロードバンドプレイヤーがコンテンツ配信事業を成功させ,勝ち組になれるのか否か。ブロードバンドの前哨線とでも言うべき現段階では,勝ち組はまだ決まっていない。基軸事業と補完事業を融合させたビジネスモデルを如何に確立し,キラーアプリをそろえ,生きたモノにしていくのか。勝負はこれからだ。

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[根本昌彦,ITmedia]

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