Big Pipe:新しいアプリから立ち上がるブロードバンドコンテンツ市場

【国内記事】 2001年11月9日更新

 今回のテーマはアプリケーション。まずは,ブロードバンドに関するアプリケーションの分類を見ていただきたい。

【ブロードバンドアプリケーションの分類】

コンテンツ 音楽配信,ビデオ・オン・デマンド,電子新聞,電子書籍,対戦ゲーム,インターネット放送
生活サービス ビデオ広告,3D/パノラマ広告,デジタルダウンロード販売,オンラインショッピング・予約
EC・広告 ビデオ広告,3D/パノラマ広告,デジタルダウンロード販売,オンラインショッピング・予約
コミュニケーション 音声/ビデオレター,インターネット電話/VoIP,ビデオ会議,インスタントメッセージ
コミュニティ 音声・ビデオチャット,オンライン写真アルバム,ビデオシェアリング(投稿ビデオなど)
ユーティリティ ASP,ファイルシェアリング=オンラインストレージ,音声・画像・ビデオ検索
企業向けコンテンツ 企業PR,イベント情報,IR,リクルート,社員教育,プレゼンテーション
公共機関サービス 電子政府,電子教育,電子医療,災害通知,地域情報掲示板

 ブロードバンド市場は未だ黎明期にあるため,インフラ先行でブロードバンドを活用したアプリケーションが多いとは言い難い状況だ。今後,一般家庭でPC以外のテレビや電話,ゲームコンソールなどがブロードバンドに接続され,ビジネス環境のブロードバンド化も進み,さらに学校や自治体のインターネット活用が促進されれば,上記のアプリケーションが拡大する可能性は高い。

 7つのアプリケーションとは,既存コンテンツの再利用,新規・独自コンテンツ配信ビジネス,ホームネットワークなどの生活サービス,ECや広告サービス,Peer to Peerのコミュニケーションやコミュニティサービス,ASP・ストレージサービスなどのユーテリィティサービス,企業向けコンテンツ,政府・学校・医療等の公共機関サービスなどだ。

<コンテンツ>
ブロードバンドによってビデオ,テレビ番組,音楽,ゲーム,出版等のオンデマンドサービスが実現する。これにより,今後はユーザーが編集権を持つようになり,番組編集権を持っていたテレビ局の地盤沈下,パッケージのディストリビューション構造が激変するだろう。コンテンツサービスにはストリーミング・ソフトウェアが活躍する。それを利用した配信ビジネスが拡大する。

<生活サービス>
IPv6によってあらゆる家電製品がインターネットに接続するようになり,ホームネットワークが実現する。それにより,エネルギー管理,セキュリティ,屋外からの電源オンオフといった利便性の向上が期待できる。また金融機関や公的機関とも結びつき,遠隔教育,遠隔医療サービスも実現する。

<EC・広告>
ECでは高速性を活かしたコンテンツやソフトウェアのダウンロード販売が盛んになるだろう。また,サイト内で消費者を音声や動画によってサポートするアプリケーションも登場し,ECのインタフェースがナローバンド時代に比べて格段に向上する。また3Dを駆使したショッピングなども行なわれる。コンサートやスポーツ観戦では,実際の席からみえる風景を仮想空間で表現するサービスも現れるだろう。さらにはビデオ広告というサービスも普及する。

<コミュニケーション>
ブロードバンドでは通信速度が現行のISDN回線よりも数倍〜数十倍になるため,情報量が大きいビデオ映像なども,手軽にコミュニケーションの手段として利用できるようになる。電子メールの代わりにビデオレターが利用できるようになるとともに,インターネット電話,VoIP等の音質も向上し,音声サービスは間違いなくデータサービスの上でのアプリケーションの1つとなる。またビデオカメラを利用したテレビ電話を利用することも当り前になる。特に企業でのテレビ会議は普及するだろう。また常時接続ということで携帯電話を利用したメールサービスのようにメッセージが相手に伝わり楽しめるICQやインスタントメッセンジャーなどが注目されるかもしれない。

<コミュニティ>
 音声やビデオを利用したチャット,写真をオンラインで編集してグループで共有するといったこと,またコミュニティサイトで投稿ビデオ等のコンテストなどを行なうこともあるだろう。コミュニティは今後有力なコンテンツの1つになる可能性を秘めており,注目される。

<ユーテリティ>
ビジネス向けのアプリケーションサービスプロバイダー(ASP)が市場として拡大するとともに,家庭でもブロードバンド環境が整えば,税金申告ソフト,住宅シミュレーションソフトなど期間限定で利用できる個人向けASP事業の開花するかもしれない。ビデオなどのコンテンツをインターネット上のサーバに保管し,どこからでも引き出せるファイルシェアリングや,オンラインストレージも利用される機会が増加する。さらに映像・音声等のリッチコンテンツが増加するにともない,それらファイルを検索するエンジンも提供されよう。

<企業向けコンテンツ>
ストリーミングソフトウェアを活用することで,企業PR,イベント情報,IR,リクルート,社員教育,プレゼンテーションなど,あらゆるジャンルのコミュニケーションが映像・音声化され,分かりやすく伝えることができる。企業情報の映像化は最も遅れている潜在需要であり,今後の拡大が期待される市場である。

<公共機関サービス>
e-Japan構想をベースに,中央政府から地方自治体に至る電子政府サービスが始まる。電子教育,電子医療,災害通知,地域情報掲示板など応用範囲は広いだろう。予算枠があるため,確実に市場が形成されると期待される分野である。

 では,各アプリケーションでの利用者はどのくらいに達するのであろうか? DSE戦略マーケティング研究所では図2のように予測した。

図2を見る

 まずブロードバンド利用者数に関してだが,家庭向けブロードバンド回線加入世帯数から,家庭内での利用者数を予測した。また移動体環境は第3世代の携帯電話利用者数,企業向けはイーサネット接続型や企業向けADSL,FTTH,FWAなどのインターネット接続利用者数を合計したものである。その合計値は延べ人数になるため,複数利用を調整し,実際の利用者数を分析している。これに,本来ならば無線インターネットや衛星を利用した車のブロードバンド利用者が入るが,ここでは数値予測が難しいため,今回は省略させて頂いた。

 2005年時点でのコンテンツ市場は,音楽配信利用者数が1400万人,カラオケ配信サービスが550万人,オンラインゲーム配信が900万人,電子出版・電子出版利用者数は1100万人,コンテンツを利用したコミュニケーション利用者数は1550万人,家庭内教育コンテンツ市場は260万人である。実際1コンテンツの利用時間や利用金額が異なるため,金額ベースでは異なるものの思われる。

 生活サービス市場では,ホームネットワークとセキュリティ,オンラインバンキングが2005年時点でほぼ750〜900万人規模の利用者になると予測される。

 電子商取引は2005年時点でBtoBが1900万人,BtoCは2200万人である。

 ブロードバンド広告市場,つまり視聴数は,広告ベースの配信ビジネスするプロバイダーによって決まるが,このビジネスはYahoo!  BBを始めほかのISPも展開するため,視聴は2005年時点で3200万人と最も多くなるだろう。

コミュニケーション市場ではVoIPが当たり前の環境となり,ビジネス分野では2005年時点で3000万人,生活分野では1900万人が利用してくるものと思われる。ユーテリティ市場ではASP市場が中心となり,2005年で企業向けは1460万人,家庭向けは750万人にもなる。家庭向けオンラインストレージは音声ビデオレター市場の成長とともに増加し,ビデオレター利用者の約40%,550万人が利用するものと思われる。

 企業コンテンツ市場は,社員教育の利用が2005年で1200万人,企業情報の視聴数は3000万人,人材募集関連で2800万人が視聴するものと思われる。

 公共機関サービスは電子政府利用者が2005年で1850万人,電子医療サービスが450万人,電子教育が870万人の利用となる。

 このように見てみると利用が多いのはコミュニケーション市場と企業コンテンツ市場である。コンテンツ市場は既存コンテンツ利用者(DVDなどのパッケージ利用者やテレビ視聴者)からの代替であるため,利用者数が急激に拡大するものと思えない。

 むしろ,動画を利用したコミュニケーションや企業コンテンツなどの新規ビジネスが早く立ち上がり,それを視聴,利用するユーザーが増加するものと思われる。ブロードバンド市場のアプリケーション市場は,これらのコンテンツから立ち上がってくるのかもしれない。

[根本昌彦,ITmedia]

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