連載 2002年11月1日 08:03 PM 更新

Streaming Now!〜流れをつかめ!
「ストリーミングの常識」を覆せ!(2/2)


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「えー、アナログはコピーの時に劣化しますが、デジタルは劣化せず、簡単にコピーできてしまうのであります」

 と答えた方、おっしゃっていることは正しいと思う。だが、もうちょっと冷静に考えてみてほしい。元はアナログのテレビ放送なのだ。そして、「テレビ放送をデジタイズしてPCに取込む」というのは、今や、当たり前の技術である。

 そこで問題です。テレビからダイレクトにPCに取込んで表示させるのと、ストリーミングを受信してPC画面に表示させるのでは、どっちがきれいでしょうか?」。

 そもそも、テレビをハードディスクレコーディングできるのに、ストリーミングに対してはみんなうるさいのだ。「将来的に画質がよくなった時にどうする?」と言われれば「おっしゃる通り」という面もあるが、とにかくみんな、考え過ぎなのである。そこまで考えるんだったら、PCを「ビデオ取込み禁止」にすればよろしい。ハードディスク録画系は禁止すればよろしい。

 まあ、実際には、「劣化」云々の話のウェイトがそんなに高いワケでもなかろう。とにかく、新しいメディアが出てくると「シメるゾ!」と構える。それはいいのだが……構え過ぎです(笑)

 もし、ストリーミングを本当に発展させたいのであれば、業界全体で、「どうシメるか」ではなく、「どうオープンにするか。その上で、どうやって関係者がハッピーになれる仕組みを整えるか」を考える必要がある。そこをうまくやったメディアがカラオケである。当初は著作権侵害と考えられていたが、今では誰もそんなことを言わない。カラオケで歌われれば、そこで著作権使用料は発生するのだから。

 と、著作権の話をしていたら、ある方から、面白い提案があった。

「エンコード技術として、ワザと品質を劣化させて、それを配付する分にはタダというのがあるといいかもしれないですね」。

 あきらかに時代に逆行したコーデックで音や絵を劣化させる……。話としては面白い。が、今度はミュージシャンが怒るだろう。「俺の芸術をそんなクオリティで配信してくれるな」と。さて、どうしようか?

 私はここで、やはり時代に逆行するような話なのだが、ウォーターマークというヤツを提案したい。会社のロゴなどを埋め込むという、よくあるアレだ。ただ、あれでも気にならない人は気にならないから平気でコピーしてしまう人は多い。そこで、どうしても2次利用されたくないものには、「非常にウザったいウォーターマーク」をかぶせるのだ。例えば、画面の中央に会社のロゴが入っているとか、。音であれば、5秒おきに私のウナリ声が入っているようなもの。それでも全体のクオリティは落とさない。あくまでも邪魔が入っているものにする。

 もう、見ているのがイヤになるだろう。そこでイヤになった人はそのコンテンツを購入して、晴れてウォーターマーク無しのコンテンツを見ることができるというものである。

 まあ、そんなことしてても、今度は買ったヤツがばらまく可能性があるし、まあ、最終的にはイタチごっこかもしれない。そのあたりには国際的な法の整備が必要となるであろう。

 いずれにしても、人々に対して「コンテンツを買う」という習慣をうまく植え付けることができれば、コンテンツ制作者や放送局にとっても、デジタル放送時代に向けていい布石となるような気がするのだが、いかがだろうか。

定説4:「テレビはマス、インターネットはニッチ」の意味

 もう一つ、マスを狙うのがテレビで、ニッチを狙うのがインターネットという話がある。何を隠そう、私もそう主張している。だが、それは「どちらかというと向いている」というだけの話であって、別にインターネットで世界中のユーザーをターゲットして放送してもいいし、マスを狙ってもいいのだ。別にテレビの流用をしてもいい。「おれたちひょうきん族」を、インターネット放送で初めて知った人だっているに違いないのだ。

 テレビの場合、あまりニッチなところばかり攻めると、視聴率競争で勝てなくなる。そうすると評価されない。それが良い悪いではなく、そういうものになってしまっているのである。ストリーミングの場合は、それこそ送り手次第である。視聴者数がエラいと考えている人はマスを狙えばいいし、「少ないターゲットに確実に届けられればいい」という人は、ニッチなところを攻めればいい。要は、配信側が目指す方向に行けばよいというだけの話である。

定説5「データは客観的である」のインチキ

 「このアネハってヤツ、たいした統計もないクセに、よくいつも根拠のない話で持たせてるよなー」と思う方も多いのではないだろうか? その通り。私はそれほど統計を信じてはいない。統計というものは、多くの場合、作成側が思った通りの落としどころに持っていくことが可能なものである。質問の仕方などでうまく事実をねじ曲げることができる。それに、今回述べてきたように、様々な数値が表に出れば出るほど、その裏に埋もれていってしまう数字がたくさん出てくるというのも事実なのだ。

結論:要するに疑問を持ちましょう

 このほか、「ユーザーはコンテンツにお金を払わない」に関しては、前回書いたように予告編の導入(過去記事「有料コンテンツは無料で見せろ?」参照)などという工夫が足りないということもポイントだろう。あるいは、今回書いた「うざったいウォーターマーク挿入戦法」など、アイデアとしては幼稚だが、意外にイケるかもしれない。

 考えてみれば、「インタラクティブものはダメ」「インターネット専用端末はダメ」など、いつの間にか定説化してしまっているものもたくさんある。ちょっと全部を検証することはできないが、要するに、「うのみにしないで、自分なりに消化しながら、それらの定説には疑問を持って当たりましょう」ということを言いたいのだ。で、いろいろなデータを頼りに自分なりに調べてみましょうと。で、今度はその元になったデータを疑ってみて……なんか、疑い深いヤツになりそうだが、しょうがない。世の中、ウソが多いのだから……。

P.S.

 私が書いたQuickTimeの解説本「QuickTime Guide Book」とが10月24日に発売になりました。

 10月31日に発売となった映像情報インダストリアル増刊「ストリーミングバイブル」というムックにおいても、一部執筆しています。



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[姉歯康, ITmedia]

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