ニュース 2002年11月13日 11:08 PM 更新

「Yahoo!BBは育ち盛り」──自信を深める孫社長

単月黒字化のめどがたったYahoo!BB。シェアトップ企業の余裕も見え始めた

 ソフトバンクグループが11月13日に開いた「Yahoo!BB」戦略発表会では、損益分岐点となる会員数が200万人と算出していることなど、事業の現況が明らかにされた(関連記事を参照)。ビー・ビー・テクノロジー(BBT)の孫正義社長は新サービスの効果による好調な会員数増加などを挙げ、「既に手探りの時代は終わった」と自信を見せた。

「春は苦戦、今は育ち盛り」


「VHSとベータ、WindowsとMacintoshのように、プラットフォーム事業はとにかくシェアがすべて。数が少なければ話にならない」と話す孫社長。後ろのグラフは、今年1月1日から11月12日までの1日当たりのユーザー獲得数の推移。曲線は平均値で、BBT(黄色)は右肩上がり

 「今年の春までは苦戦していた。ユーザーにも迷惑をかけた。しかし夏ごろから様子が変わり、今は育ち盛りだ」。孫社長はYahoo!BBの成長ぶりに自信を深めている。

 実際、Yahoo!BBの現況を示す数字は順調だ。10月末時点でのユーザー数は120万8000人でシェアはトップ。単月加入者数は他社が軒並み下落傾向にあるのに対し、Yahoo!BBは毎月右肩上がりの成長を続ける。10月末は19万4000人に達し、11月は20万人を突破するのは確実だ。「先週末は1日で1万6000人増えた。他社の1カ月分がわれわれの数日分だ」(孫社長)。10月末の単月加入者シェアは47%と他社を突き放している。


単月加入者増加数シェアの推移。黄色がBBT

 「究極の顧客満足度調査」(同)という解約率も10月時点で0.9%。NTT東日本の8.1%と比べ極めて低い水準に抑えている。

「BBフォンが決定的だった」

 「夏ごろ」から風向きが変わった要因は何か。それは孫社長によると「世界初の純粋IP電話」である「BBフォン」だ。BBフォンユーザーは10月末時点で77万人で、Yahoo!BB全ユーザーの6割強が加入。「他社ADSLがADSLのみを提供しているのに対し、われわれはBBフォンもセットで提供できるのが強み」(同)。一般家庭が音声通話にかける費用は平均で月額4000−5000円程度なのに対し、BBフォンは平均で同1100円。「Yahoo!BBに加入すれば、年間で5−6万円の通話コストを抑えられる。これは決定的だ」(同)。


「BBフォンで年間5−6万円浮く。今時ならPCが買える」

 BBフォンの一部の技術は孫社長自らが特許を取得したという“自信作”。障害時に自動的にNTT回線に迂回する機能、専用番号なしで利用できる技術など特許を出願済みとしている。大手ISPによるIP電話の提携について注目が集まっているが(関連記事を参照)、孫社長はBBフォンとの相互接続については「われわれのQoS(サービス品質)に近づける努力を向こうがするなら考える。接続でBBフォンの品質が落ちるようなことがあれば一瞬で掲示板に書かれてしまう(笑)」と余裕の表情だ。


「他社は既に確立されているATMを採用したためサービスインが容易だった。われわれは完全IPのネットワークを構築したため手間ひまがかかり、ユーザーにも迷惑をかけた。遠回りはしたが、そのおかげでBBフォンなど革命的なサービスを提供できる」

業界トップのARPU


ユーザーの課金モデル

 Yahoo!BBのARPUは現時点で約3700円。これも「他社が3000−2000円なのに比べると業界トップ」(同)だという。というのもADSLサービスやBBフォンなどを組み合わせていくと、「それぞれ世界一安いサービスを足していくと高くなる」(同)からだ。ARPUは上昇中で、近く4000円を超える見込みという。

 事業コストは、(1)継続インセンティブやヤフーへのロイヤルティーなどの変動費が売上高の50%、(2)施設やダークファイバー使用料など固定費が月間40億円、(3)新規ユーザー獲得費用が1人当たり約2万円。設備投資は9月末時点で累計1250億円(うちリース実行残高は420億円)に上り、DSLAMポート数は約330万を確保、モデムは約230万台を仕入れ済みとしている。

 事業の損益分岐点となる会員数は、サービス発表当初の100万人から倍増した。ただし200万人という数字は新規ユーザー獲得費用が除外されている。「新規がゼロなら利益が出ているということで、本質的な損益分岐点」(同)。新規獲得費用込みの数字は200万を上回ると見られるが、明らかにされなかった。

 現在のペースで会員が増えれば、早ければ2003年度内にも損益分岐点を突破する。その分キャッシュフローも改善し、来年度には単月黒字化を達成する見込みとしている。また「詳細は言えない」(同)としながら、追加設備投資や拡販費用などの資金を調達するめどもたったという。

「ADSL以上が欲しいですか?」

 Yahoo!BB事業の運営にめどが立ったとして、次は“FTTHまでのつなぎの技術”とも指摘されるADSLの将来性が問題になってくる。

 これに対し孫社長は「技術を中途半端に理解している人は『ADSLが一時的』などという。しかし「BBケーブルTV」のように、ADSLでもハイビジョン並みの動画配信は可能だ。光ファイバーでないと提供できないサービスとは?」と反論し、ADSLでも十分ユーザーが満足できるブロードバンドサービスを提供できると主張。「ハイビジョン以上のリッチコンテンツは現時点では存在しない。それ以上何が欲しいんですか?」と畳みかけた。



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[小林伸也, ITmedia]

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