ニュース 2002年12月24日 0:0 AM 更新

進化する“ブロードバンドアパート”

田中麗奈のCMですっかり“お馴染み”となった感のあるレオパレス21の「LEO-NET」。早いペースで導入を進めているが、2003年春をメドに、インターネット電話やオンラインゲームといった機能も追加する

 田中麗奈のCMですっかり“お馴染み”となったレオパレス21のブロードバンドサービス「LEO-NET」が順調に拡大している。9月のスタート以来、既に1万4000室に導入済み。2003年3月末までには4万室へと拡大するスピードは他にあまり例のないものだ。その背景には、既存ビジネスとのシナジー効果を生むための、綿密なマーケティング戦略があった。

 レオパレス21の中心事業は、月単位、週単位など入居者の都合に合わせた形でアパート/マンションを提供する「マンスリーレオパレス」。現在は全国に1万9000棟/21万室の物件があり、主に企業の社宅などに利用されている。入居率は常時90%程度を維持し、とくに都内の物件は140%……つまり、予約待ち状態が続くほどの人気だ。

 EC研究会で講演を行ったレオパレス21ブロードバンド事業部ディヴィジョンマネージャーの奥井宏太朗氏によると、利用者は「90%が20〜33歳の若者」という。したがって、同社のマーケティングは若者を中心に組み立てている。「若い世代が部屋を探す際の条件は、近くにコンビニ、弁当屋、そしてレンタルビデオ店があること」。


レオパレス21ブロードバンド事業部ディヴィジョンマネージャーの奥井宏太朗氏

 もちろん、すべての物件が3つの条件を揃えているわけではない。そこで、ブロードバンドとリモコン操作が可能な専用STB(セットトップボックス)を使い、「これらの要素を部屋に持ち込む」のがLEO-NETの基本コンセプトとなった。

まずはレンタルビデオ

 LEO-NETは、各物件にADSLもしくは光ファイバーを引き込み、イーサネットやVDSLといった手段で各戸をブロードバンド化する。ソフトバンクグループもYahoo! BBを使った同様のサービスを実験しているが、LEO-NETの場合はNTT東西地域会社やNTTコミュニケーションズなど、NTTグループと協力して進めている。各アパートを繋ぐのは、NTT地域会社の地域IP網。IP-VPNの専用ネットワークを構築し、クローズドな環境を作り上げた。

 STBはWindows CEベース。MPEG-1/2のハードウェアデコーダ(DSP)を搭載するほか、Windows Media Video 8/9のソフトウェアデコードもサポートする。「このほか、3Mbps程度のMPEG-2と同レベルの画質を700Kbps程度で実現できる独自コーデックも検討中だ」。STBはストレージは持たず、映像出力もS端子を含むアナログ出力のみ。これは著作権管理に配慮したものだ。


LEO-NETの画面。「CHANNEL」はCS放送だ

 その結果、レンタルビデオサービスでは、ギャガコミュニケーションズやワーナーブラザーズといった大手映画会社をはじめ、タツノコプロといったアニメ制作会社、そして数十社に上るアダルトビデオメーカーなどがコンテンツを提供。大規模レンタルショップに匹敵する3000タイトルものビデオコンテンツを当初から用意できた。

 「ビデオは、毎月1ユーザーあたり平均3.8本を視聴している。基本利用料は別途徴収しているため、これは純粋な利益となる」(同氏)。利用頻度の高いビデオは、やはり「ハリー・ポッターと賢者の石」など旬のメジャー映画だ(ただし、“アダルトは別格”らしい)。

 また、スカイパーフェクTVを再送信する形で、CS放送もネットワーク経由で視聴できるようにした。こちらは当初5チャンネルでスタートしたが、12月26日から7チャンネルに増える(下記)。インフラを担当するのはNTTサテライトコミュニケーションズだ。

 「CS放送は、アパートごとに直接受信することも可能だが、それではSTBが2台必要になってしまう。このため、一度センター側で受信した放送をJ-SAT2号機で再送信し、IPネットワークを通じてSTB向けに配信する方法を採用した」(奥井氏)。

チャンネル内容
TBS-CHドラマなど
ニュースバードニュースなど
MTV-JAPAN音楽専門チャンネル
ANIMAXアニメ専門チャンネル
AXNハリウッド映画など
カミングスーンTV映画情報
スーパーチャンネル映画など

STBでゲームも

 現在のサービスは、オンラインレンタルビデオ、CS放送、インターネット接続の3種類だが、2003年4月には、新たに3種類のサービスが追加される。

 1つはインターネット電話機能。セガグループの「DreamCall」を採用し、入居者は加入者電話へ3分10円、携帯電話(全キャリア)に対しては1分15円の通話が可能になる。

 電話機能は、利用者だけでなく、レオパレス21側にも大きなメリットをもたらす。「電話を持たない入居者に対して家賃滞納時の連絡などが可能になるほか、“安心ダイアル”(フリーダイヤルのコールセンター)の通話コストも発生しない」。

 さらに、Webカメラを使ってTV電話に拡張することも計画中だ。レオパレス21の場合、契約時に保証人が不要ということもあって外国人の利用率が高く、言葉の壁に苦しむ入居者も多い。そこで、TV電話を使って外国人専用のコールセンターや医療相談を実施するという。

 2つめはネットワークゲームのサポート。PCやコンシューマーゲーム機を端末とするオンラインゲームへの対応にくわえ、セガの「B-CLUB」を利用して、STB向けのゲーム配信も計画している。B-CLUBは、PCソフトや「メガドライブ」などのゲームをオンライン配信し、一定期間の利用を可能にするシステムだ。

 そして3つめは、アパートに設置した宅配ボックスと連携する物販サービス。一般的なマンションにも宅配ボックスはあるが、LEO-NETの場合は提携業者に対してオンラインで注文できるのがポイントとなる。業者が商品を届けにくると、レオパレス21の管理センターがボックスを遠隔操作してカギを開ける。もしくは発注時にID番号を発行しておき、業者がボックスに備え付けられたテンキーを操作して開閉するといった方法を検討中という。

 「衣料品や日用品を扱う業者のほか、近隣の飲食店と提携して出前のオンライン発注も可能にする予定だ。今までは生活の付加価値となるコンテンツが主だったが、今度は“衣・食・住・電話”といわれる生活必需品にまで拡大する」(奥井氏)。

成功するビジネスモデルとは?

 集合住宅向けのブロードバンドサービスは数多いが、LEO-NETの展開スピードは他に例のないものだ。その理由を奥井氏は、「サービス対象となる“場所”と“人”を既に確保しているため」と分析した。

 マンションにブロードバンドインフラを導入する際は、管理組合(分譲の場合)や大家(賃貸の場合)の同意が必要となり、これが導入を妨げる一因にもなっている。しかし、レオパレス21の場合は、大家に30年間の賃貸を保証する借り上げシステムだ。同社が一括管理するため、主導してLEO-NETの導入を進めることができる。

 さらに、入居者のサービス加入率もコントロール可能だという。つまり、現在は賃料と別契約になっているLEO-NETをアパートの標準的な設備として扱うなど、入居者の利用を促進する。それだけで利用率は向上し、インフラ投資は確実に回収できる。

「2003年4月までには全国で5〜6万室にLEO-NETを導入する。初期投資は30億円に上るが、初年度にかなりの部分を回収できる見込みだ」(奥井氏)。

 同社が積極的にLEO-NETの導入を進めるのは、こうした裏付けがあってこそ。「ブロードバンド」という言葉に飛びついて失敗する企業が多いなか、もともとのビジネスとブロードバンドをうまく融合した“お手本”といえそうだ。

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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