リビング+:ニュース 2003/02/28 21:17:00 更新


メルコの開発中止は、このIEEE802.11gがあればこそ

メルコが2月27日にプレス向けの説明会を開催。製品ラインアップを紹介した以外には、802.11gの優位性についてのアピールに多くの時間が割かれていた

 メルコが2月27日、東京の航空会館で「IEEE802.11g(draft)準拠無線LAN製品展開」に関するプレス向け説明会を開催した。2月25日のWi-Fi Allanceによる製品互換性テストが7月に終了するアナウンスや、米国のネットワーク機器トップベンダーであるリンクシス・ジャパンの新製品発表など、IEEE802.11g市場シェアを巡る競争は、にわかにあわただしくなってきた。

今までの製品投入中止は「IEEE802.11g」があればこそ

 今回の説明会は、メルコが展開している製品ラインナップの紹介よりも、IEEE802.11gの優位性のアピールに多くの時間を割り当てていたのが印象的だった。

 この中で、かつて投入を予定しながら、相次いで中断してしまった高速無線LAN製品について、その理由を説明した。

 IEEE802.11b互換ながら転送速度22Mbpsをサポートする予定だった「AirStation 2x」は、搭載したTexas Instruments製コントローラチップが予定していたパフォーマンスが出せなかったため(6〜7MbpsとIEEE802.11b並みしか出せなかった)に、販売を断念(説明会では言及されなかったが、このとき転送方式として採用したPBCCがIEEE802.11gのドラフトで正式採用されなかったのも、製品化断念の大きな理由である)。ついでIEEE802.11a準拠の製品もいち早く発表したものの、結局、高価格に対してパフォーマンス、ユーザビリティが期待できないという理由で、こちらも製品化を断念したと説明した(2002年12月14日の記事参照)。

策定途上のIEEE802.11gだが、もはや不安はない。

 製品展開が進むものの、いまもなお、策定作業中のIEEE802.11g関連製品。購入に不安を抱くユーザーは依然として多い。

 策定作業はドラフトVer.0.61まで進んでおり、この最新ドラフトを反映したファームウェアは3/7にメルコとWebサイトからダウンロードできる予定。ほとんど完成直前で、あとはファームウェアのバージョンアップで対応可能とメルコは説明している。

 IEEE802.11gに対するユーザーの不安、もしくは不満としてよく耳にするのが、IEEE 802.11bとの混在環境における転送レートの悪化だ。

 これについてはIEEE802.11g策定チームも重大な問題として捉えており、ドラフトVer.0.61準拠ドライバでは大幅に改善されている。今回の説明会でも従来のVer.0.50準拠ドライバとVer.0.61準拠ドライバで転送レートの比較デモが行われ、Ver.0.50準拠ドライバ時で約14Mbps程度だった転送レートがVer.0.61準拠ドライバでは17‐18Mbpsと改善されていた(IEEE802.11gのみの環境で19‐20Mbps)。メルコでは、ドラフトVer.0.7、正式バージョンではさらに改善される可能性もあるとしている。

 メルコは自社のネットワーク製品に、転送レートを向上させるために独自仕様の「Turbo」モードを実装しているが、これは転送パケットのサイズを小さくしたり転送SlotTimeの間隔を狭くして転送レートを改善するテクニックだ。しかし、策定途中の規格に実装させているので、当然正式策定時に変更を余儀なくされる可能性がある。これについてはメルコも認めているが、その場合でもファームアップの変更で対応できるので心配ないと説明した。


IEEE 802.11bとの混在環境で、どれだけ転送レートが出せるかをドラフトVer.0.61準拠ドライバでテストした。グラフは転送レートを示しているが、一定の転送レートを維持している

メルコは日本市場のIEEE802.11g市場で独走できるか

 現在、IEEE802.11gコントローラを安定供給できる数少ないベンダーのBroadCom(Intersilは生産的な問題で大量供給については未知数という情報がある)から、チップの供給を受けられる周辺機器ベンダーはメルコと競合製品をリリースしたリンクシス・ジャパンなど、ごく限られている。米国トップベンダーの競合製品をメルコはどのように見ているのか。

 「確かに米国ではトップシェアを取っているベンダーなので、それなりに意識はしている。しかし、メルコが米国に進出した当初、マニュアルの『ジャパニーズ英語』でユーザーから叩かれたように、米国企業が日本で受け入れられるには、日本の作法がきちんとこなせないといけない。リンクシス・ジャパンにそれが出来るかどうか」(メルコ マーケティンググループリーダー 石丸正也氏)。


メルコ マーケティンググループリーダー 石丸正也氏

 IEEE802.11gの正式策定にはもう少し時間がかかるが、商戦という意味では、レースはすでに序盤戦を過ぎている。ここ2、3カ月でレースの勝者が決まる可能性もある。そんなあたりにさしかかっているのだ。

 にもかかわらず、ライバルになるリンクシスは、日本国内では当面、体制固めを優先せざる得ない。IEEE802.11gでメルコが独走態勢を築く可能性は十分ある。ここで抜け出してそのままぶっちぎりでゴールイン――というのが、メルコの描く勝利の方程式に違いない。

関連リンク
▼メルコ
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[長浜和也,ITmedia]



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