リビング+:特集 2003/05/30 22:31:00 更新

特集:IP電話を徹底解剖する
モバイルIP電話の可能性を探る (2/2)


 便宜上、本稿でいう“モバイルIP電話”とは通信手段に無線LANを利用し、公衆無線LANサービスエリアでのみ通話可能なサービスだと定義しよう。

 現状、最大手の1つと考えられるNTTコミュニケーションズの公衆無線LANサービス、「ホットスポット」は3月末時点で、約500件の無線スポットを設置している。このうち、8割強が都心に点在している。

 1スポットのカバーするエリアは、50〜100メートルと言われているが、「実質30〜50メートル程度だろう」と話す関係者もいる。これが、仮にNTTコミュニケーションズがいますぐモバイルIP電話サービスを提供したときの、通話エリアと考えられる。

 もちろん、各事業者は相互接続を進めているため、サービス提携によってエリアを拡大できる可能性もある。しかし、携帯電話やPHSの通話エリアと比較すると、まだまだ相手にならないといわざるをえない。

 参考までに、NTTドコモの携帯電話で全国の基地局数を確認してみよう。NTTドコモ広報は「2003年の時点ではまだデータがないが、2002年3月の時点で1万8000」と話す。

 1基地局がカバーするエリアは、「小型から大型まで多数あるため、一概にいえない」とのこと。都市部はセルを細かく区分し、地方部では大きく区分するなどの変化をつけているほか、電波に指向性を持たせるなどしており比較が難しいという。

 PHSではどうか。DDIポケット広報は、基地局の数を「1913都市で、約16万。人口カバー率は93.5%」と話す。

 1基地局あたりのカバーエリアは、こちらもさまざまな種類があるため、一概にはいえないとのこと。PHSと携帯電話、無線LANではそもそもの通信規格の違いがあるため、一概に比較することは難しいが、規模の違いだけは実感できるのではないだろうか。

可能性は少ないのか?

 こうして見ると、モバイルIP電話サービスを実現させるためには、多くの課題が立ちはだかっているように思われる。実際、モバイルVoIPを実用化しようとすれば、当初は企業向けの業務支援システムなどに限定されるだろう。

 もっとも、モバイルIP電話サービスは将来、携帯電話とは異なった用途で提供されるのかもしれない。たとえば、NTT-BPが提供する「無線LAN倶楽部」は、駅のホームおよび駅周辺で提供されるサービス。このため、たとえば仕事帰りのサラリーマンの“帰るコール”に利用されるなど、場所の特性に応じた限定的な使われ方をする可能性もある。

 ほかに、アクセンチュアの程近智パートナーのように、「たとえば自動車メーカーがリスクテイクして、車載型の無線LAN基地局によって街中の車をアクセスポイント化する可能性もある」と指摘する声もある(記事参照)。可能性は、まだまだ考えられるだろう。

 エンドユーザーは、モバイルIP電話サービスへ大きな期待を抱いている。IP電話をとりまく環境が1年のあいだに大きく変わったように、今後状況が大きく変化することを期待しよう。

編集部からのお知らせ

 モバイルIP電話は、ひときわユーザーの関心が高い分野だ。編集部にも、「○○という企業がモバイルIP電話サービスを提供するようだが、一度取り上げてほしい」といったメールが、たびたび届く。

 しかしこうしたサービスの中には、技術上の詳細が全く明らかにされないまま、「月額定額・使い放題」などの売り文句ばかりを先行させて、ユーザーに投資を迫るものも、確かに存在する。記者個人としても、非常な興味を持って取材を続けているのだが、なにしろ担当者がなにかと理由をつけては取材を断り、事実関係を確認できないばかりか実現の可能性すら判然としないものは、さすがに記事にできない。こういった経緯があって、特定の事業者が開始予定をうたうサービスについて、報道を控えてきた。

 もちろん、真剣にモバイルIP電話の可能性を探っている企業もある。現状では技術を公開していないが、いずれ詳細を明かした上で本サービスを展開する事業者も、あるかもしれない。そのときこそ、当該サービスを吟味した上で、サービス内容を積極的に評価・紹介していきたい。(特集終)

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[杉浦正武,ITmedia]



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