リビング+:ニュース 2003/07/24 22:03:00 更新

ケーブルテレビ 2003
CATVのFTTH化〜帯広シティケーブルの例

他社に先駆け、今年4月から「Run Lanファイバー」(らんらんファイバー)の名称でFTTHサービスを開始した帯広シティケーブル。同社がFTTH化の検討を始めた理由は、それまでの設備が“古すぎた”ためだったという

 より高速なインターネットアクセスのために、FTTH化を検討するCATV局が増えている。24日に行われた「ケーブルテレビ 2003」の分科会でも、他社に先駆けてFTTH化を実現した北海道の帯広シティケーブルの事例を紹介。同社の伊東肇常務が壇上に立ち、FTTH化の経緯と効果、そして課題を語った。

 帯広シティケーブルは、1985年に事業を開始した都市型CATVだ。1999年には、北海道内でもっとも早くケーブルインターネットサービスの提供を始め、現在は帯広市にある約7万7000世帯のうち、2万5500世帯に放送サービスを、また5600世帯に通信サービスを提供している。通信サービスの内訳は、同軸ケーブルが5400件、FTTHが200件だ。

FTTH化のきっかけ

 同社がFTTH化の検討を始めたのは1999年5月。これはインターネット接続サービスの開始時期と一致するのだが、背景には設備上の問題があったという。「かねてから施設の老朽化が進み、多チャンネル放送も28チャンネルしかなかった」。

 チャンネル数が少ないのは、当時の帯広シティケーブルが上限300MHzの旧型設備を使用していたため。また、通信サービスを始めたのはいいが、市内32平方キロをカバーするための幹線が4本と少なく、また局側設備(CMTS)収容回線数も上限に近づいていた。収容回線の数はスループットの低下に直接つながるため、通信品質の向上も重要な課題になったという。

 通常なら、ここでHFC化を検討するのだが、同社の場合は「あまりにも設備が古すぎて、(ケーブルを)全面張替になる可能性が高かった。コストと他事業者との競争、そして地域の公共ネットワークとしての役割を担う必要性もあり、FTTH化を検討したほうが良いと判断した」。

リモートターミナルの必要性

 しかし、具体的な検討を始めた2000年〜2001年夏頃は「ノウハウもなく、手探りの状態」が続く。光ファイバーは一芯か、それとも二芯か。一芯にすれば単純計算で光ファイバーは半分の量で済むが、当時はまだ一芯のメディアコンバーターが高価だった。また、幹線の芯線数や施設のスペースも問題。

 「1つのラックにどれだけのメディアコンバーターが収容できるか。このため、設備面を担当する古河電工の担当者を交え、仕様の決定までに多くの時間をさいた」という。仕様が確定したのは2002年初頭だ。

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帯広市内のネットワーク図

 帯広シティケーブルのネットワークは、中心となるCATV局を中心として複数の光中継局(リモートターミナル)を設置、これらを結ぶループ状の幹線を設けた点が特徴だ。これは幹線コストの削減とともに、障害発生時に迂回路を確保するため。ただ、ここで中継局を置く場所が問題になった。

 「なら、土地を買おうということになり、30坪の土地を2カ所購入した」。北海道ならではの大胆なアプローチだ。

 ループ幹線の長さは約10キロ。分岐され、家庭にとどくアクセス系光ファイバーを含めると、総延長は40キロ(第1期工事)に上る。

PDSへの移行、そして放送の追加

 FTTHサービスは、「Run Lanファイバー」(らんらんファイバー)の名称で今年4月に提供を開始。料金は、初期費用が5万円、宅内装置のレンタル料金を含む月額料金が7480円となっている。ただし、光ファイバーは通信専用で、放送は既存の同軸ケーブルをそのまま使っている。

 「今後は、E-PON(イーサネットPON)のPDS(Passive Double Star)型に切り替えていく方針だ。同時に放送サービスの追加も検討している」。

 PDSは、Bフレッツの「ニューファミリータイプ」などでも採用されている技術で、光ファイバーを最大32分岐して複数の世帯が共有する。メディアコンバーターが1対1で通信を行う現在の方法よりも採算性の向上と収容設備の効率化が見込めるはずだ。伊東氏によると、年内もしくは2004年の初めには移行を開始する予定だという。

 一方の放送サービスは、1本の光ファイバーの上で通信(上り・下り)と放送の3波を同時に送信できる光波長多重技術を使う(記事参照。こちらのスケジュールは明確になっていないが、実現すればユーザー宅に引き込むのは光ファイバーだけで済む。宅内装置はONUだ。

 このほか、市内の学校施設や医療機関などにも光ファイバーを提供し、相互に情報を交換できる公共ネットワークの構築にも力を入れる。同社は昨年12月に光ファイバーを利用した「北海道広域医療情報ネットワーク」実証実験に参加した実績もある。さらに、北海道という場所柄、キオスク端末などを利用した観光情報ネットワークを構築する計画もあるという。

 “地域密着”をキーワードに光ファイバー網を活用する帯広シティケーブル。このあたりは、全国規模の通信キャリアとはひと味違う、CATVならでは活用法といえるだろう。

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関連リンク
▼帯広シティケーブル

[芹澤隆徳,ITmedia]



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