次に流行るのは牛ホルモンだと話すのは、六本木と赤坂で「和牛料理 さんだ」を経営し、通称「親方」の愛称で親しまれている石井正敏さん。「さんだ」は和牛の内臓料理専門店であり、石井さんは、モツやホルモンとまとめて呼ばれていた内臓を部位ごとに分解・調理し、格調高い料理として世に紹介した、草分け的な一人者である。 「鮮度のいいホルモンはビタミンやミネラルに富み、栄養価が高いことで知られています。消化が良くコラーゲンも多く含むため、性別や年代関係なく楽しめる優秀な食材です。もつ鍋やコラーゲン鍋の空前のヒットで、内臓に、これまでにない注目が集まっています。最近では『絶品ホルモン料理』や『人気店の最新もつ料理の調理技術』(ともに旭屋出版)といった調理本も発売されるほど、需要があり、期待されている分野なんです」 |
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「和牛料理 さんだ」では、アキレス腱や牛タン、レバー、ハラミといった内臓をシンプルに調理し、色鮮やかな器に少量ずつ盛りつけて「和懐石コース」として提供する、斬新なスタイルをとっている。コースを通して12種類ほどのホルモンを口にすることになるのだが、訪れた客は食感のバラエティーや部位ごとの味の奥行きに、心底驚くに違いない。 |
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アキレス腱のポン酢和え | ハツモト(大動脈)の中華風 | |
ミノの胡麻和え | フワ(肺)の辛子醤油 | 湯通しした子袋は、フランス産ゲランドの塩をつけて食べる |
牛タン団子のすまし汁にハラミの握り、新鮮なレバ刺しに牛スジ煮込みと、比較的なじみやすいものから、ハツモト(大動脈)・フワ(肺)・すい臓といった、内臓専門店だからこそ出会える希少部位も、贅沢に織り込まれている。 |
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牛タンのミンチと、砕いた軟骨を混ぜた牛タン団子は、和風ダシのおすましで |
「何より和の味に仕上げることに、徹底的にこだわりました。お客様は内臓料理ということで、多少なりとも警戒しています。お客様の心配を少しでも軽減させるために、日本人が口に含んだ際に親しみを覚える、醤油・ポン酢・わさび・辛子など、和の調味料を使いました。美味しさうんぬんよりまずは馴染みの味で、ホルモンという食材を迎え入れていただかないといけない。その上でホルモンそのままの味をダイレクトに味わってほしくて、濃い味つけは極力避けました」
ゴマ油と塩で甘さが引き立つレバ刺し | ハツ刺しの辛味噌和えは、わけぎ添え |
人生の大半を牛ホルモンと向き合い、その味を追求してきた石井さん。昨今スポットライトを浴び始めたホルモン料理は、どう発展していくのだろうか。
「ホルモン料理はまだまだ未知数で、これからいくらでも発展していきます。イタリアのトリッパ煮込みやイギリスのキドニーパイなど、ヨーロッパでは元々内臓食の習慣がありますし、健康に敏感な人たちが集まるNYでも、“ヘルシーミート”として内臓を売り出す動きが出てきています。僕は今年61歳で、40年近く内臓とお付き合いしてきているので、後は若い世代に頑張ってほしいかな。フグ屋で皮のポン酢和えを食べて、これをアキレス腱でやってもイケると思ったように、色々なお店を食べ歩いてヒントを集め、新メニューを開発していってほしいですね」
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オープンは6年前。料理は牛ホルモンを散りばめた「親方のオススメコース」(6600円)のみで、小料理屋の雰囲気で懐石仕立て料理を楽しむことができる。料理はその日の仕入れ内容により異なる。 |
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東京都港区赤坂3-19-3 電話番号 : 03-5570-1129 営業時間 : 月〜金 17:30〜23:30 日・祝日定休 |
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東京都港区六本木4-5-9 電話番号 : 03-3423-2020 営業時間 : 月〜土 17:30〜23:30 日・祝日定休 |
取材・文/華麗叫子
編集/似鳥陽子
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