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音から発想する映像制御――ローランドが提唱する「V-LINK」とは(2/2 ページ)

» 2004年02月16日 16時44分 公開
[小寺信良,ITmedia]
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 「P-1」というこれまたシンプルな名前だが、本体内に静止画をたくさん仕込んでおいて、カラーのタッチスクリーンで素早くで呼び出せる、フォト・プレゼンターだ。こういうタイプのものは、放送でもニュースなどで文字や写真の送出装置として存在するが、民生用としてはおそらく初めてだろう。

タッチスクリーンで静止画を切り替えるP-1

 だがさすがに元々音屋のローランドが作っただけあって、画像と一緒にナレーションや音楽などの音声も仕込んでおける。画像の切り替えと同時に、その画像に関係する音が鳴るわけである。画像もミックスやワイプ出しが使える。まさにプレゼンテーションツールとしては、パワーポイントのハードウェア版といった感じである。

 パワーポイントでプレゼンしたことがある方はお気づきだろうが、あれの問題点は、プレゼンする人間も次に出てくる絵が何だか確認できない、という点にある。また話の都合上、3枚前の画像を出す必要に迫られて、アセった経験はないだろうか。

 いったんフル画面から降りて選び直したりすると、その過程もすべてお客さんに丸見えだ。あれはイケてないですなぁ。だがP-1なら液晶画面で4×3枚の縮小画像が見られるので、次の画像が自分だけは確認できるし、数枚前の画像に戻るのもワンタッチだ。

 またP-1には、4コマの静止画を使った簡易アニメーション機能や、内部に仕込んだ音楽の音量に合わせてランダムに画像が切り替わるといった、妙な機能も沢山ある。さらにMP3再生時にテンポを変えたりピッチを変えたりといったこともできる。

映像を演奏するV-LINK

 さてこれだけなら、「ああそうですか」ってなもんだが、ここからがいよいよ音から発想する映像制御の話なのである。実は先ほどのV-1もこのP-1も、MIDI端子を装備している。これを何に使うかというと、V-1とP-1をMIDIで接続すると、お互いの動作をコントロールすることができるのだ。

 例えばP-1である画像を叩くと、V-1がその画像を自動的にスーパーインポーズして出す、といった動作が可能になる。事前に仕込んでおけば、それぞれを独立して操作する必要がないのだ。プロ用機器にも同じような制御を行なうインタフェースがあるが、具体的な動作を覚えさせるわけではなく、記憶させた設定を呼び出すといった使い方がメインだ。しかも同メーカー製機器同士でなければうまく動作しない。

 一方V-LINKは、汎用規格であるMIDIを利用するので、コントロールの受け手側がV-LINKをサポートしていれば動いてしまうというイージーさがある。極端な話、コントローラは楽器でもいいのである。楽器から発せられるノートナンバーのいくつが来たらこの画像を出す、といった割付をしておけばいいのだ。

 「サウンド・スパーク2004」のステージでは、ドラマーの山崎彰氏が同社のエレクトリックドラム「V・Drums」を使って、演奏と同時にV-1とP-1をコントロールするというデモンストレーションを行なった。ドラミングに合わせてカメラをスイッチングしたり、指定の画像を表示させたりと、V-LINKの可能性を感じさせる。

  • V-LINKのデモシーン。ドラムと連動して映像が切り替わる(デモ画像のMP4ファイル、ファイルサイズ約4MB 、Win、MacともQuicktimeで再生することができます。ファイル掲載にあたりローランド社より掲載許可を受けております)

 楽器の演奏とリアルタイムで同期させるという用途は、ライブでのスクリーン映像ぐらいしか思い当たらないが、それ以外にも楽器としてではなく、タイミングを計った映像の切り替えコントローラとして、キーボードやドラムパッドを使う、という使い方もできるだろう。

 MIDIを映像コントローラとして使うメリットは、可変パラメータを多数持っていることにある。ドラムでは使われていないが、キーボードではプレッシャー(キーを押す強さ)やピッチベンド(音程変化)といった可変するデータも送ることができる。

 例えば将来的にこれらのデータを使って、キーゲインを変更したり、映像の再生速度を変えたりといったビデオ特有のパラメータをリアルタイムで可変させることができるようになれば、まさにわれわれ映像クリエイターは、映像を「弾く」ことができるようになる。

 未来のライブ会場では、バックヤードにもステージさながらの楽器が置かれることになるのかもしれない。これからの映像クリエイターは楽器の一つも弾けないようではダメな時代が来るとしたら、楽器メーカーは新しい顧客を開拓することができるだろう。

小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。

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