ITmedia NEWS >

Interview:Blu-rayに関するいくつかの疑問(前編)特集:次世代DVDへの助走(2/2 ページ)

» 2004年03月09日 03時17分 公開
[本田雅一,ITmedia]
前のページへ 1|2       

 「マスタリングは、従来のEB(電子ビーム)を用いてカッティングする方法ではなく、レーザー光線を当てるとピットが生成される、特殊な材料を用いて行う方式を使う。この方法の場合、CD-RやDVD-Rにレーザーで書込を行うのと同じように書き込めるため、マスタリングにかかる時間が圧倒的に短くなる。またマスタリング装置の価格も、数億円から数百万円のオーダーにまで一気に二桁下がる。

 この技術はフェイズ・トランジション・マスタリング(PTM)というもので、ソニーが開発しているが、技術が確立されれば他社にもライセンスする予定だ」。

 HD DVD側がもう一つ強調する指紋への耐性はどうか。ハードコート技術が進んだ現在、指紋は拭き取れば問題ないが、一方で拭き取りなどのメンテナンスが必要ならば、メディアとしての使いやすさに問題があると言わざるを得ない。

 「指紋には“条”があり、連続して長時間読めないわけではない。読めるところと、読めないところが交互に発生し、読めない部分の長さは短い。このため、あらかじめ指紋の条に対応できるエラー訂正技術を盛り込んである。指紋付きディスクの再生は問題なく行えており、CDやDVDよりも良好な結果が出ている」。

 実は、これらHD DVD陣営の主張に対する回答は、昨年秋のCEATECでも発表されていたものだ。西谷氏のコメントからすれば、こうした“BDの欠点と指摘される事項に対する技術的な回答”は、数カ月を経ても変わりなく、順調に開発が進んでいると見ていいだろう。

 事実、製造面に関しては、浜松にあるパイロットラインで、実際に5秒に1枚のスループットでBD-ROMが生産されているところをデモすることも可能だという。BD-ROMの生産デモに関しては取材が終了次第、この特集の中でレポートする予定だ。

“高品質”は普及をドライブする要因となり得る

 一方、DVDの次世代となるものはなく、ユーザーはDVDのままでも満足している、という意見を言うものも少なくない。DVDの後に「二匹目のドジョウなどいない」という意見だ。果たしてBDの市場性に可能性はあるのか?

 「次世代光ディスクが本格普及を開始するのは2006年以降だと考えている。普及のきっかけになる要素は、放送の録画か、映画などのパッケージメディア、この二つのうちいずれかしかない。日本の場合、HDのデジタル放送がBSと地上波で始まっているが、(録画して残したいと思う)コンテンツがもっと増えなければならないことは認識している。

 すべての録画デバイスが次世代に切り替わるとはもちろん考えていない。しかし“良い画”での放送があるなら、“良い画のまま”で残したいというユーザーもいる。たとえばDVDで保存できる製品と、BDで保存できる製品が同じ価格、同じランニングコストならば、“良い画のまま”残せるデバイスをユーザーは選ぶ」。

 もちろん、いきなり現在のDVDレコーダー/ハイブリッドレコーダーと同じ価格というわけにはいかないだろうが、低価格化、普及製品の計画は確実に存在するようだ。西谷氏は“次の製品”に関して、「ハイブリッドレコーダーと同様の使い勝手」「従来機のおよそ半分の価格」の2点に加え、もうひとつのヒントを出してくれた。

 これら製品計画を含むインタビューの続きに関しては、インタビュー後編として近日中にお届けしたい。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.