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開発者に聞いた「ビクターのDVDレコーダーはどこが違う?」インタビュー(2/3 ページ)

» 2004年11月26日 14時30分 公開
[坪山博貴,ITmedia]

 これは重要な問題だ。現在のDVDレコーダーのほとんどは、VBRと呼ぶ可変ビットレートを採用している。しかし、テレビのリアルタイムな録画では理想的にビットレート配分をすることは難しく、各社が独自アルゴリズムで工夫をしている状況だ。ただ、製品によっては、単純にビットレートの上限と下限にリミッタを設けたり、ビットレートの変動そのものを小さくしすぎてVBRの意味が損なわれている製品も少なくないという。

 「そこで、HDD搭載モデルでは、記録容量に余裕があることを利用しました。録画時に映像解析を行ってその情報を保存し、再エンコードダビング時にこの情報を使って最適なビットレート配分を行う“インテリジェント2Passエンコード”を採用しました。地上波放送なら、十分満足のいく画質でダビングできると思います。たとえば2時間番組をDVDに収まるように最初から標準モードで録画するより、最高画質で録画しておいて、ダビング時に最適なビットレート配分で再エンコードした方が画質は良いんじゃないか、ということですね。インテリジェント2Passエンコードなら平均4MbpsのSPモードでも、最大で8Mbpsのビットレート割り振りが行えるんです」。

photo 同社の「DR-MH50」を使い、インテリジェント2passエンコード録画した映像のビットレート変化。Y軸がビットレートで最大スケールは8Mbps。ダイレクトにSPモードで録画した映像(下)と比べると、明らかにビットレートの割り振りがダイナミックで、最大ビットレートが8Mbps,最小ビットレートが2Mbpsに達している(クリックで拡大)
photo ダイレクトにSPモードで録画した映像のビットレート変化。上と比較してほしい
photo これは他社のHDD+DVDレコーダーのSPモードで録画したもの。MH50でダイレクトにSPモードで録画した場合より、さらにビットレートの割り振り幅が小さい。SPモードの平均ビットレートである4Mbpsをできるだけ超えないようにしたという印象だ

 確かに、アナログ地上波に限定すれば、8〜9Mbpsの録画となる最高画質モードで録画すると、放送と録画再生を比べてもほとんど見分けがつなかい。ビットレート配分が最適化されるなら、再エンコードのほうが高画質化できる可能性は高いだろう。

 しかし、再エンコード自体に「画質が落ちるんじゃないか?」と抵抗を持つ人も多いはず。この質問に対し、技術開発本部でタスクリーダーを務める菅原氏は、再エンコード後の画質を高いレベルで維持する方法を示してくれた。

 「MPEG2は、I/P/Bの3つのフレームで成立しています。Iフレームが完全な静止画、PフレームがIフレームからの差分情報、BフレームがI/Pフレームからの差分情報ですね。Iフレームを先頭に、複数のP/Bフレームで構成され、次のIフレームの手前までがGOPと呼ばれる1つの単位です。一般にI/P/Bの順に画質が良くて、IフレームとBフレームでは目に見えて画質が違う場合もあります。

 そして、単純に再エンコードを行ってしまうと、元の映像でBフレームがIフレームになってしまうこともあって、この場合画質が大きく劣化してしまう。PフレームやBフレームはIフレームの差分ですから、Iフレームより高画質になることはありませんからね。そこでビクターの場合は、再エンコード時にもI/P/Bのフレーム構成をそのまま維持し、画質の劣化を最小限にとどめています」。

 たとえばフレーム構成を無視して再エンコードを繰返すと画質は際限なく劣化するが、フレーム構成を維持すれば、再エンコードを繰り返してもある時点で劣化が収束するという。そのくらい、再エンコード時におけるフレーム構成の維持は重要になるわけだ。

GOPってなんだ?

 MPEG-2の編集や画質に関する記事では、よくGOPという単語を目にする。GOPは「Group of Picture」の略で、その名の通り複数の画像(ピクチャ)をグループ化したもの。MPEG-1やMPEG-2の場合、「Iピクチャ」「Pピクチャ」「Bピクチャ」と呼ばれるデータ容量の異なる3種類のピクチャがあり、GOPを構成している。全体としての容量を抑えつつ、トータルの画質を維持する仕組みだ。

 各ピクチャのデータ量は、Iピクチャ>Pピクチャ>Bピクチャ。基本となる画はIピクチャで、Pピクチャは過去のフレームから一方向のフレーム間予測を行い、差分を符号化したもの。現フレームとの差分(違い)のみを抽出して符号化している。そしてBピクチャは、過去と未来のフレームから2方向のフレーム間予測を行ったものだ。

 つまり、GOPを構成する3種類のピクチャの中で、フレーム間予測を行わない完全な画像はIピクチャのみ。ほかのピクチャなしで復号できるのもIピクチャだけだ(たとえば、DVDレコーダーで早送り/巻き戻しなど前後関係が分からなくなる操作を行った場合、画面に表示されるのはIピクチャ)。編集や再エンコードの際、各ピクチャ〜とくに「Iピクチャ」を維持することは画質を維持する上で重要な要素といえる。

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