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CESでなぞるホームシアターの基礎知識劇場がある暮らし――Theater Style(2/3 ページ)

» 2005年01月08日 05時35分 公開
[浅井研二,ITmedia]

CESの主役はDVDへ

 しかし、1996年のCESでは早くも、主役は誕生したばかりのDVDへと移る。もちろん、一般に普及するのは、数年後のことだが、DVDが生まれた時点で、広い意味でのホームシアターの大衆化を予感した人は少なくないだろう。といっても、ビデオテープやレーザーディスクと比較して、何が違うのか。デジタルだからアナログよりキレイ? そんなわけはない。符号化・圧縮によって、より多くの情報量を持たせられるのはたしかだが、DVDの長所はさまざまな意味での利便性にほかならない。

 周辺状況の変化により、レーザーディスクで懸案となりつつあった問題点も、もちろんDVDには反映された。「スクイーズ収録」もその1つだ。これは要するに、16:9のワイド画面を4:3へ変換して収録する方法。ビデオテープやレーザーディスクでは、ワイド画面の作品でも上下に黒帯をつけて4:3で収録していたため、本来の情報量をすべて使い切っていないことになる。ごく一部だけスクイーズ収録のソフトもあったが、その場合、ワイドテレビではない人向けの通常盤とスクイーズ盤の両方をリリースしなければならない。DVDなら、そうしたことが最初から想定されているので、スクイーズ盤を再生する際でも、DVDプレーヤーの接続テレビ設定がノーマルであれば、プレーヤー内で上下に黒帯をつけて4:3画面として出力するようになっている。

 映画作品はもともとワイド画面が多いため、DVDのスクイーズ収録はホームシアター体験の質を一挙に向上させた。それに加え、エンコード/デコード技術の向上で、時を経るごとに画質にも磨きがかかり、大画面に映し出した場合の粗もあまり気にならなくなった。

 前述のとおり、ごく一部の人だけが家庭で楽しんでいたサラウンド音響を、一般層へと広めたのもDVDといえるだろう(少なくとも、サラウンドとは何かを知っている人は爆発的に増えたはず)。しかも、その方式はドルビーデジタルだけではない。

 1998年のCESではDTSデコーダ搭載のDVDプレーヤーやアンプが展示(この時点では対応タイトルが3月にリリースされる予定だった)、さらに、1999年のCESでは開催に合わせて、5タイトルのDTS音声収録DVDがリリースされ、DTS-DVDも本格始動した。DTSとは要するに、デジタル・シアターシステムズが展開する「もう1つのデジタルサラウンド方式」である。5.1ch音声収録は同じだが、ドルビーデジタルと比較して圧縮率が低い(その分、ビットレートは高い)ので、より高音質を確保できる。

 DVDのサラウンド音声に関しては、以降もドルビーとDTSの両社が新技術を次々に投入しており、いささかややこしく感じる人もいるかもしれない。まず、6.1ch音声を収録可能にしたエンコード/デコード方式が、ドルビーデジタルEX、および、DTS-ES。ともに、サラウンドバックch(後方中央)を追加する。ただし、ドルビーデジタルEXが、ドルビーサラウンドと同様のマトリックス処理でサラウンドLRにサラウンドバックを含めるのに対し、DTS-ESでは同じ方式のMatrix6.1に加え、6.1chを完全に独立して記録できるDiscrete6.1も用意されている。また、DTSにはサンプリング周波数を96kHz(または88.2kHz)、分解能を24ビットに引き上げた5.1chサラウンド方式、DTS 96/24もある。

 また、デコード技術としては、5.1chや2ch信号から7.1ch(バックサラウンドもステレオ化)をつくりだすドルビープロロジックIIx、2ch信号から6.1chをデコードするDTS Neo:6も存在する。

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