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2005年の液晶フロントプロジェクター動向劇場がある暮らし――Theater Style(2/3 ページ)

» 2005年01月28日 14時27分 公開
[本田雅一,ITmedia]

液プロ20万円台クラスのスケジュールは“従来どおり”

 AV製品の場合、PCなどのIT機器に比べモデルサイクルが長く、製品自体のライフタイムサイクルも長い。このため新技術を採用した製品情報の公開は、コンピュータ関連商品に比べるとずっと慎重である。新技術の先行発表が中途半端に行われると、必要のない買い控えまで引き起こす可能性もある。

 実は昨年夏のD5パネル試作機情報も“次世代パネル待ち”の状況を作ったのではないか、と何度か指摘を受けたことがあった。今年3月に720P対応D5が出荷されるとなれば、同サイズ同解像度の現行D4パネル採用機のパネル置き換えで高コントラスト化を果たした製品が出てくるかもしれない。

 だが、どうやらD5を採用した製品の開発は、リアプロTVが先行しているようだ。エプソン、プロジェクタメーカーともに詳しい計画は明らかにしていないが、フロントプロジェクタ向けのD5パネル提供は、リファレンスのセットと共に今年9月頃にエプソンからメーカーに出てくる見込みという。これは例年とほぼ同じスケジュールだ。

 加えて現行のD4パネルを採用した20万円クラスのフロントプロジェクタは、昨年末のモデルチェンジでかなり完成度が高まっている。プロジェクタは光学機器のため、光学回路の最適化を図らなければベストのコントラストが出ない。デバイスレベルでのコントラストも重要ではあるが、最終製品の絵は絵作りやスケーリングといった要素はもちろん、コントラスト比も時間をかけた作り込みを行わなければ追い込めない。

 たとえばコントラスト向上のため、各フロントプロジェクタにはワイドビューパネルという光の入射角を補正するパネルが装着されているが、ワイドビューの特性や映像パネルとの隙間を最適化するため試行錯誤する必要がある。映像パネルが持つ特性のバラツキや原理的に発生しやすい微妙な左右の色違い(色むら)に対する電子的な補正なども含めると、量産品をベストな状態に追い込むのはなかなか難しい。もちろん、基本特性が追い込めなければ絵作りに本腰を入れることも難しい。

 2003年末/2004年末と、同じD4パネルを採用しながらも最終製品の完成度が大きく向上したのも、そうした理由からだろう。デバイスが登場すれば、最初からその能力が引き出せるのではなく、新デバイスが登場することで進化した製品を作る土台ができ、スタート地点に立てると考えればいい。これは何もフロントプロジェクタに限った話ではなく、製造ベンダーに技術力、作り込みを要求するすべての製品ジャンルに言えることだ。

 もちろん、年末に登場するであろうD5を採用した商品は、昨年末の製品よりも性能は改善されているだろう。しかし絵作りとして同程度まで追い込まれているかどうかはわからない。またこの春に大きな変化がある事もなさそうだ。今後もデバイスレベルの進化が続くだろう事を考えれば、D5の登場時期を意識しすぎると、せっかくの買い時を逃してしまうかもしれない。

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