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オプティキャストの躍進(2/2 ページ)

» 2005年02月04日 11時03分 公開
[西正,ITmedia]
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 通信サービスでは、高速インターネットはもちろんのこと、将来的にはIP 電話を加えた、いわゆるトリプルプレイサービスを提供する予定としている。サービスエリア内のユーザーは、一本のケーブルを引き込むだけで、これまで放送サービスごとに異なっていた複数のアンテナを設置することなく、鮮明な画像・音声や約280チャンネルの放送サービスを受信することが可能になる。

 そもそもINKは、1984年12月に地元資本を中心に発足した、郡山市や郡山商工会議所などが出資するCATV事業企画会社であり、長年にわたり、都市型CATV として多チャンネル放送サービスの事業化を目指してきた経緯がある。オプティキャストは、こうした最先端の情報インフラの整備を求める地域の期待に応えるために、CATV事業の経営にも関与することになる。

 企画会社は、2005 年度内でのサービス開始に向けた検討を行い、総務省に対する免許申請状況や設備設置スケジュール等を勘案しながら、具体的な日程を決めていくという。

 郡山市の事例で興味深いのは、オプティキャストが企画段階で止まっているCATV事業にも参加していくスタンスを表明した形になることだ。これによって、新たなエリア展開の方向性も切り開いたことになる。CATV事業との競合を避けながら、サービスエリアを拡大していくモデルケースとも言えるだろう。

サービスエリア拡大戦略の要諦

 有線役務利用放送事業者の中でも、地上波、BSの再送信をセットで提供できるオプティキャストの強みは明らかだか、ライバル事業者からすると、進出してくるエリアが読みにくい形になっている。福山市や郡山市のようなスタイルまで有り得ることになると、予め迎え撃つ体制を整えておくことは非常に難しくなってくる。

 既存のCATV事業との競合を、どの段階で打ち出してくるかが注目されるところである。CATV事業の激戦区とも言われる大阪へは、今年度内に進出すると発表されているが、どこのエリアに来るのかが読めない。当面は集合住宅による展開に限ると表明しているエリアにおいても、総務省へのエリア登録は、サービス開始直前に済ましておけば構わないわけだけに、事前には分かりにくい。

 ただし、そうした形が採られることは、従来のCATV事業でも同じであっただけに、決して非難される覚えがないことは確かだ。ディベロッパーが集合住宅を新築する場合には、テレビ、電話、インターネットについての契約を事前に済ませておかない限り、分譲にせよ賃貸にせよ、管理費も含めた価格設定が出来ないからだ。

 建築現場をチェックして回ったところで、どこのCATV事業と契約しているのかが明らかになる頃には、既に勝負は決しているのである。総務省の申請手続きを済ませる前に、サービスを開始するわけにはいかないが、サービスを提供する旨の契約を行う分には何の問題もない。既存の事業者も含めて、集合住宅を攻略していくことのポイントはそこにある。オプティキャストに限った話ではない。

 他の有線役務利用放送事業者が、IP方式による地上波、BSの再送信の可否を議論している間に、オプティキャストは着々と先行してエリア拡大を進めている。

 CATVのサービスを向上させていくために、広域展開を実現すべく、事業者間の提携が盛んになっているが、提携する相手は既存のCATV事業者同士には限らないことが、いよいよ本格的に明らかになってきたと言えよう。

西正氏は放送・通信関係のコンサルタント。銀行系シンクタンク・日本総研メディア研究センター所長を経て、(株)オフィスNを起業独立。独自の視点から放送・通信業界を鋭く斬りとり、さまざまな媒体で情報発信を行っている。近著に、「モバイル放送の挑戦」(インターフィールド)、「放送業界大再編」(日刊工業新聞社)、「どうなる業界再編!放送vs通信vs電力」(日経BP社)、「メディアの黙示録」(角川書店)。

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