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4th MEDIA に期待される「4番目の何か」(2/2 ページ)

» 2005年03月24日 18時15分 公開
[西正,ITmedia]
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 こちらは、説明を聞けば不思議と納得できるものがある。要は“4番目のメディア”ということなのだから、3番目までが何かということが分かればよいからだ。それは、地上波、CATV、衛星だと言ってしまえば、簡単に納得してもらえるだろう。この程度であれば、「110度」の説明に比べればはるかに容易であるし、説明された方も分かりやすい。

4番目の何かとは

 今や“ブロードバンド”は大抵の人にとって説明の要らない単語になっている。インターネット接続は、ダイヤルアップからADSL、さらには光へという流れが確立しつつあり、ブロードバンドはもはや単独でセールスするのではなく、IP電話と放送をセットにした“トリプルプレイ”が標準となっている。

 ところがブロードバンドを提供する通信事業者の代表的な存在であるNTTは、NTT法によって放送事業への出資は3%しか認められていない。3%ではせいぜい、お付き合いの範囲を超えることはない。NTTがBフレッツをセールスしようと思ったら、自社の回線を役務として提供することにより、それを使って放送サービスを展開する有線役務利用放送事業者と組まざるを得ないのだ。

 そのパートナーとなっているのが、オプティキャストであり、 4th MEDIA を提供するオンラインティーヴィということになる。この春からは伊藤忠系のオンデマンドTVも加わる。

 屋根の上のアンテナで地上波を受信できる世帯、すなわちCATVのサービスを必要としない世帯の場合、トリプルプレイとして提供される放送サービスはペイテレビがふさわしい。NTTと組む形で、IP方式による映像配信サービスを提供する事業者の草分けとなった4th MEDIA には、マーケットを開拓していく原動力となることが期待される。

 そのためには、まずは、4th MEDIA というネーミングの認知度を高めることが最優先である。もちろん、前提として、その存在意義が明確化されることが必要だが、幸か不幸か、わが国のペイテレビの普及率は非常に低い水準にある。スカパー!、WOWOWの直接受信、もしくはCATVを通じてしか視聴されていないからだ。

 一方、米国ではペイテレビの市場は広告放送市場を上回っている。こうした点から、わが国にはテレビ放送を有料で享受しようという文化がないとも言われる。しかし、10年前ならいざ知らず、現在では再び映画興行が上向きに転じ始めたように、良い作品があれば有料でも視聴したいと考える人は大勢いるはずだ。

 わが国の視聴者が米国のそれよりも貧しいわけではない。むしろ、携帯電話をはじめ、多様な娯楽があって、ペイテレビにお金が回りにくいというのが実情だろう。ただ、高速インターネットとIP電話への需要が高まっていることからすると、そこに放送がセットで提供されることに違和感はないはずだ。

 パラボラアンテナを付けるか、CATVに加入するかという選択肢しかなかったことが、ペイテレビのマーケットの拡大に限界があった要因であると考えれば、トリプルプレイが標準化しつつある今、ペイテレビのマーケットは確実に拡大していくことになるはずだ。

 4th MEDIA に求められることは、その先陣を切っていくことである。ネーミングは悪くないのだから、むしろネーミングの由来を知りたがるようなユーザーを増やすことに注力すべきだろう。

 トリプルプレイから連想される数字は、「3」である。4th MEDIA というネーミングからは、「3」よりも何か一つ多いような期待感を抱かせる効果がある。認知度さえ向上させれば、「4」という数字に色々な意味を持たせることも可能になる。それはユーザーが自ら見つけるものだという言い方も、立派なセールストークになる。

 4th MEDIA を通じて、難視聴地域でなかった地区に住むユーザーたちにも、多チャンネル放送の魅力をアピールすることができれば、これまで未開拓であった顧客層を取り込むことができるはずだ。

 認知度を向上させていくためには、あちこちで4th MEDIA という言葉を目にする機会を増やすということに尽きるだろう。“4th”とは何かを説明しやすくするためには、量販店などで、もっと大々的に「4th MEDIA」の看板を掲げた専用の売場コーナーを設置し、目立たせていくべきだ。

 もちろんユーザーを増やしていけば、必ずや苦情も多く寄せられることになるが、それに対処していくことは、新たなサービスを軌道に乗せていくためには必要不可欠なものだ。苦情を恐れていたら成長は期待できない。それを一つ一つ解決していく努力さえ怠らなければ、現時点では強いといわれるIP放送に対する権利者側の抵抗感も、徐々に薄まっていくはずだ。まさに一挙両得の構図である。

 「4」という数字に疑問と関心を持つ人を増やしていくことにより、いち早くその意味を知った人からの口コミが広がっていく。今はIP系の放送事業者が競争する段階にはない。競争はマーケットを拡大させてからで十分である。そういう意味で筆者は、ユーザーにとって“何となく気になるネーミング”をした4th MEDIA に、パイオニアとしてマーケットを開拓していく役割を期待したいのである。

西正氏は放送・通信関係のコンサルタント。銀行系シンクタンク・日本総研メディア研究センター所長を経て、(株)オフィスNを起業独立。独自の視点から放送・通信業界を鋭く斬りとり、さまざまな媒体で情報発信を行っている。近著に、「モバイル放送の挑戦」(インターフィールド)、「放送業界大再編」(日刊工業新聞社)、「どうなる業界再編!放送vs通信vs電力」(日経BP社)、「メディアの黙示録」(角川書店)。

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